yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

y=sin x を2方向に回してみた

波の形 y=sin x を回転させてみましょう!

f:id:phi_math:20200828103258j:plain

「x 軸」のまわりに回転させたら,「お団子が無限に連なる」ような形に.


「y 軸」のまわりに回転させたら,「同心のドーナツが大きくなりながら無限に連なる」ような形に.


どっちも美味しそうですね(笑)
「せっかくなので式で表そう」というのが,今回の企画です.

f:id:phi_math:20200827101518p:plain

前記事で,この理論を,軌跡でガチガチに説明しました.

改めて,少しゆるく説明してみます.

 

グラフ上の点(k,f(k),0)を x 軸のまわりに1回転すると,次の円が得られます.

  y^2 + z^2 = { f(k) }^2 かつ x = k

このような円をあらゆる k について集めたものが回転体.

  {(x,y,z)| y^2 + z^2 = { f(k) }^2 かつ x = k }

つまり

  {(x,y,z)| y^2 + z^2 = { f(x) }^2 }

よって,回転体の方程式は 

  y^2 + z^2 = { f(x) }^2

です.

だから,機械的にやると,

  | y | を f:id:phi_math:20200828103611p:plain に書き換える


ということになるのでした.
絶対値だから0以上の値でないといけないのでした.
だから,y = f(x) ではなく,半回転して得られる曲線と合わせた曲線

  y^2={ f(x) }^2

を利用して,置き換えるのでした.

結局,x軸のまわりの回転で得られる「無限お団子」の方程式は


  y^2+z^2=(sin x)^2


となります.

 

では,y軸のまわりだったら?

  | x | を f:id:phi_math:20200828103625p:plain に書き換える

だけでOKです.

けれど,実際にやってみると,絶対値を作り出すのがメンドクサイことに気付きます.

sin x は sin(-x) = -sinx という特殊な性質があるので,比較的楽に処理できて,

  y^2=(sin { f:id:phi_math:20200828103625p:plain })^2 ‥‥①


という形にまとめることができます.

詳細は,ぜひ,考えてみてください.

 

①の式が,無限に連なるドーナツを表しているなんて,なかなかイメージできないですね.
「式の意味的にそうなっているのだから,そうなんだろう」という達観した視点も,数学においては必要になりますね.

回転体の方程式を求めたい!

f:id:phi_math:20200827101518p:plain

 

y=f(x)のグラフを,x 軸の周りに1回転して得られる曲面Sの方程式は?

 

半回転すると,曲線 y=-f(x) で,2つを合わせたら
 曲線C:y^2={f(x)}^2
になる.

ここから「軌跡」の考え方です.

  曲面S上に点 (x,y,z) がある
 ⇔
  C上の点 (x,p,0) で,p^2=y^2+z^2となるものが存在する

という言い換えができるのがポイントです.

  (x,0,0) の周りに (x,p,0) を(適当に)回転させて,
  点 (x,y,z) が得られる

と考えています.

  x 軸の周りに回転させて (x,y,z) になるような
  C上の点 (x,p,0) が存在する

と言っても同じです.


  |p|={y^2+z^2}^(1/2)

という形で,パラメータ p を y,z で表すことができる.


「このときの点 (x,p,0) がC上にあること」が,「曲面S上に点 (x,y,z) がある」条件になる.

 

よって,Sの方程式は

  y^2+z^2={f(x)}^2   ■


【例】
f(x)={1-x^2}^(1/2),つまり,半円のとき,半回転と合わせた曲線は

  y^2=1-x^2

で,円.
これを x 軸の周りに1回転して得られる曲面は,|y| を {y^2+z^2}^(1/2) に書き換えて

  y^2+z^2=1-x^2

つまり,球面:x^2+y^2+z^2=1


【例】
f(x)=x/2,つまり,直線のとき,半回転と合わせた曲線は

  y^2=x^2/4

で,2直線.
これを x 軸の周りに1回転して得られる曲面は,|y| を {y^2+z^2}^(1/2) に書き換えて

  y^2+z^2=x^2/4

これは,円錐の方程式になっている!

(注)
この方程式は,「母線(x軸)方向のベクトル (1,0,0) とベクトルOPのなす角θが|cosθ|=2/√5となる点Pの軌跡」と見ても作ることができます(厳密にはOの扱いが少し厄介).
つまり,内積を用いて立式できます.

n進法と組立除法

f:id:phi_math:20200825234033p:plain

不勉強のため,メジャーな方法なのかどうか分かりません・・・
たまたま見かけた解法の紹介です.

 

5進法の 4321 は,10進法で

  4×(5の3乗)+3×(5の2乗)+2×5+1

これを計算するのに,4次式

  f(x)=4x^3+3x^2+2x+1

を考えると,求める値は f(5) になっている!
f(x) を x-5 で割ると

  f(x)=(x-5)×(商)+(余り)

で, f(5) は f(x) を x-5 で割った「余り」になる.

余りは,組立除法で求めることができる!
これが上の方法です.

それなら,5進小数も,組み立て除法で10進法表示に変換できるのではないか?

ちょっと注意点がありますが,何とかできますね!

5進法の 0.1234 は,10進法で

  1×1/5+2×(1/5)^2+3×(1/5)^3+4×(1/5)^4

何をg(x)を置きましょう?
x=1/5を代入して

  1×1/5+2×(1/5)^2+3×(1/5)^3+4×(1/5)^4

になるように,

  g(x)=x+2x^2+3x^3+4x^4

ですね.組立除法をするために,降べきの順にしておくと

  g(x)=4x^4+3x^3+2x^2+x

です.定数項が 0 であることも注意しておきましょう!

  g(x)=4x^4+3x^3+2x^2+x+0

g(1/5) を求めたいので,g(x) を x-1/5 で割った余りを求めたらOKですね.

 

整数の本,書いてました.
灘中入試の整数の問題から始めて,大学初級内容の整数まで扱っています.

  ☟

極値の定義,ご存じですか? =大学・高校の違い&高校教科書間の違い=

図の2つは「x=0で極小値-1」と言ってよいのでしょうか?

f:id:phi_math:20200824113322p:plain

判断に困ったら定義を参照します!


 あるx=aでの値f(a)が極小値であるとは・・・

①aを内部に含むある区間において「f(a)<f(x)」が成り立つことをいう.

②f(x)がx=aの前後で,「減少から増加に転じる」ことをいう.

③aを内部に含むある区間において「f(a)が最小値」であることをいう.


色んな定義があるじゃないか!? と突っ込みたくなるというのが,今回のテーマです.


①が狭義の極値
広義になると,③のように「最小値」で定義します.
大学では,②のように増減で定義することはないようです.

高校数学では・・・何と!
「連続関数」という仮定がつくようです.
つまり,不連続なときは,極値が定義されないのです!
図の2つの関数はx=0で連続ではないから,極小値とは言えないようです.

大学の定義と高校の定義が違うのですね!!

③で定義すると,y=1のような定数関数は,すべての点で極値をとることになります.
これは避けたいですね.

だから,高校数学では

①’
連続関数f(x)であるx=aでの値f(a)が極小値であるとは,aを内部に含むある区間において「f(a)<f(x)が成り立つ」となることをいう.

を採用することが多いようですが,教科書によっては②’(つまり,②かつ連続)を定義に用いていることもあるようです.

図の1つ目:
大学の定義
 ①☞極小値!
 ②☞極小値!
 ③☞極小値!
高校での各定義☞極小値でない

図の2つ目:
大学の定義
 ①☞極小値!
 ②☞極小値でない
 ③☞極小値!
高校での各定義☞極小値でない

他に,例えば,y=|x+1|+|x-1|なども,「x=0でのy=2」が極小値かどうか,定義によって変わります.
グラフは次のような感じです.

 \_/

-1≦x≦1で平らになります.
最小値で定義する③の場合は極小値ですが,②増減や①f(a)<f(x)による定義では極小値になりません.

たかが極値と侮るなかれ.

 高校と大学で定義が違う
 高校でも教科書によって定義が違う

という,とっても変わった現象が起きているのです.
出題する大学の先生にとっての極値が,高校生にとっては極値ではなかったりするのです.
そういう危険領域に入る問題は見たことがないので,たぶん大丈夫だと思いますけどね.

では,連続を仮定する高校数学では,
 ②増減による定義
 ①f(a)<f(x)による定義
は,同じなのでしょうか?
教科書によって,書き方が違うだけで,同じことを言っているのか?
それとも,定義そのものが違っているのか?

またこの辺も探っていきましょいう.

 

漸化式でやれることは微分方程式でもやれる?

微分方程式は,好きですか?

導関数と元の関数が満たす関係式を見て,どんな関数なのかを考えるのですね.

導関数

  lim(f(x+h)-f(x))/h

ですから,差をとっているのですね.

階差数列みたいなものなのですよね.

関数での微分が,数列での階差

数列での和は,関数では・・・そう,積分ですね!

 

昨日,漸化式のちょっと変わった解法を紹介しました.

 ①漸化式で,
 ②特性解を求めず,
 ③階差をとり,
 ④階差数列が分かっても
 ⑤Σを計算せず,
 ⑥連立で
 ⑦一般項を求める.

これを関数化すると,どう翻訳されるでしょう?

 ①微分方程式で,
 ②特殊解を求めず,
 ③微分し,
 ④導関数が分かっても
 ⑤積分をせず,
 ⑥連立で
 ⑦関数を求める.

なるほど,こういうことですね!
やってみましょう!

f:id:phi_math:20200823001721p:plain 

この微分方程式,ふつうは,どうやって解くのでしょう?

漸化式での,

 ①特性解を見つけ,
 ②差を取って,
 ③等比型の漸化式を作り,
 ④初項の条件から一般項を求める

という流れを意識しながら見てください.

①1次式に特殊解があることを見抜き,
  (ax+b)'=2(ax+b)+x
からa,bを求めます.
  0=2a+1 かつ a=2b
 ∴ a=-1/2,b=-1/4
と分かります.
② f'(x)=2f(x)+x  
  (ax+b)'=2(ax+b)+x
の差をとって,
③ {f(x)-(ax+b)}'=2{f(x)-(ax+b)}
となるから,
  f(x)-(ax+b)=Aexp(2x)
④f(0)=2からAを求めたらOK

例の漸化式の解法とそっくりですね(分かる人限定でスミマセン)

微分方程式を解くときには,同値性も意識しておく必要があります.
ちょっと確認しておきますね.

一般に,
  f(x)=g(x)(恒等式
 ⇔ f'(x)=g'(x)(恒等式
  かつ f(a)=g(a)(あるaで成り立つ関係式)
です.
だから,微分を繰り返すときは,初期条件を添えながら同値変形します.

一方,今回の方法は,
  f(x)=g(x)
 ⇔ f(x)=g(x) かつ f'(x)=g'(x)
 ⇔ f(x)=g(x) かつ f'(x)=g'(x) かつ f"(x)=g"(x)
という同値変形になっていますね.

連立,サイコーーー!!

 

 ちょうど10年前の処女作(売り切れ中)!

  ↓

微分方程式でも色んな本があるのですね.

漸化式から一般項を求めることに関して

f:id:phi_math:20200822123147p:plain

          ☝

    【 レ ア 解 法 ? 】

 

階差数列の一般項を求めたのに,Σしないとか,カッコよくないですか?

1つの数列を決める漸化式は1つではなく,漸化式2つがあれば,連立して一般項を求めることができる.

この視点は,けっこう優れていますよね.

 

さて,漸化式の指導について.

 

「こうやったら上手くいくねん」とか
「こういう背景があってな・・・」とか
教える先生によって,内容がなかり違うのではないかと思います.

私は拘りがないので,算数的なことを多くやっている気がします.

しかし,いくつか並べた状態で法則を見抜いて一般項を求めても
「君が見つけたという法則は,本当にずっと続くの?」と聞かれたら
「・・・」と言葉に詰まってしまいます.

いやいや,我々には数学的帰納法が付いています!
だから,算数的だって良いじゃない,というのが私の考えです.


上の解答を見ていると,

「階差数列」が「等比数列」になる数列は,「等比数列に何か足したり引いたりしたものになりそうだ」

と感じることができます.
そういう感覚も大事な気がします.

“式変形”で漸化式から一般項を求めることが美徳とされがちですが,大人になって役に立つのは,法則から感覚的にとらえ,その正当性を証明する姿勢の方なのかな,と思うわけです.

数学“を”教えるのか,数学“で”教えるのか,の違いかも知れません.


と言いつつ,次のような流れは楽しいですね.

 

 1,3,7,15,31,‥‥‥

のそれぞれに1を足してごらんよ.

何か気づくでしょ?

 2,4,8,16,32,‥‥‥

次はいくつ?

この法則はずっと続く?

それを式変形で言うと?

  

「解答を書くときは,絶対に式変形でやらないといけないのか?」と常に思っています.

だって毎回,特性解を求めて,わざわざ等比型を作って,・・・とか,メンドクサイですもん.

並べりゃ分かるやん!?

極値は,「yの値である」のか,「点に付随するもの」なのか

f:id:phi_math:20200821100304p:plain

私の答えは,①のみ△,②③は×です.

②③のような文を見かけることがあって,それがダメな理由を如何に説明できるか,と考えました.

 

<①②③の主張の根拠>

1)この関数は,x=0,-1,1でy=0という値を“とる”ことが分かります.

2)x=-1で極大値0,x=1で極小値0であるから,0という“yの値”は,「極大値」であり,しかも,「極小値」でもあります.

3)y=0という“yの値”は,この関数にとって,「極大値」であり,しかも,「極小値」でもあります.

4)1)で「y=0」を「極大値」と書き換えると・・・

5)x=0で「極大値」という値を“とる”

6)x=1で「極大値」という値を“とる”

 

極値を「山や谷の“yの値”」という風に,値としてだけ見ていると,①②③のどれも正しいことになります.

 

でも,違和感がありませんか?

 

極値の定義は実は色々とあって,それらの比較はまた後日やることにします.

今回は,一番素朴な定義を採用しておきます(高校数学での定義).

 

*****

連続関数f(x)がx=aの前後で,減少から増加に転じるとき,f(x)はx=aで“極小である”と言い,f(a)を極小値という.“このとき”,x=aで極小値f(a)をとる,とも言う.

*****

 

“このとき”に,「x=aで極小値をとる」というのです.

“このとき”以外には,「x=〇で極小値をとる」とは,言わないのです.

極値というのは,結果的に「yの値」ですが,実際は,極値になる点,つまり極値点(a,f(a))を求め,そのy座標を考えていることになります.

だから,「極値をとる」というのは,「そのyの値をとる」という意味ではないのです.

 

①x=1で極小値0,x=-1で極小値0をとる.極値点のyの値として,0は極大値でも極小値でもある.しかし,こう書くと誤解を生みかねない.「極大値0となるx=-1があり,極小値0となるx=1がある」という捉え方をすべきでしょう.正しくないとは言いにくいですが,

 

②『「極値をとる」「y=0は極値だ」だから,「極値をとる」は「y=0をとる」と同じ意味で,「x=0でも極値をとる」』と言える,という主張です.もちろん,ダメですね.

 

③も②とほぼ同じ理由で,ダメです.

『「極大値をとる」「y=0は極大値だ」だから,「極大値をとる」は「y=0をとる」と同じ意味で,「x=1でも極値をとる」』と言える,という主張です.もちろん,ダメですね

負の数だって,相加相乗平均の大小関係(完結編)

f:id:phi_math:20200819002904p:plain



上の四角には何が入るでしょう?

(a,b,cは実数)

 

3文字での相加相乗平均の大小関係:
  ( a + b + c )/3 ≧ (abc)^(1/3) ‥‥‥(*)
について,負の数を代入しても,不等式が成り立つことがあることを前記事で確認した.
どんなときに成り立つのか?
少し深堀してみよう.

そのためには,証明に戻るのが近道となろう.
ふつうは「a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のとき(*)が成り立つ」と書いてある.
その他のときにはどうなるか,触れていないはずである.

a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のときに成り立つことを示してみよう.

  x^3 + y^3 + z^3 - 3xyz
   = ( x + y + z )( x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx )

という因数分解の公式において,
  a^(1/3) = x,b^(1/3) = y,c^(1/3) = z
とおくと,
  a + b + c - 3(abc)^(1/3)
   =( a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) )( x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx )
となる.右辺の後半は
  x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx
   = (2x^2 + 2y^2 + 2z^2 - 2xy - 2yz - 2zx )/2
   = { ( x - y )^2 + ( y - z )^2 + ( z - x )^2 }/2
   ≧0
を満たす.x=y=zのときに等号が成り立ち,
  x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx = 0

よって,a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) ≧ 0 のとき
  a + b + c - 3(abc)^(1/3) ≧ 0
  ( a + b + c )/3 ≧ (abc)^(1/3) ‥‥‥(*)
が成り立つ.
特に,a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のときは(*)が成り立つ.

ということで,a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) ≧ 0のときは,(*)が成り立つことが分かった.

a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) < 0 であっても,a = b = c のとき,(*)は成り立つ(等号が成立).
a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) < 0 で,「 a = b = c 」以外のとき,(*)は不成立.

これで完璧に整理できた!


数Ⅱと言えば,コレ(しつこい)

  ☟ 

関数・方程式,グラフ・曲線・・・ 用語の使い分けがヤヤコシイ

f:id:phi_math:20200818095949j:plain

  ☝

この文は,とっても深い深いものですが,伝わるでしょうか??

指導者が雑な用語の使い方をするから,生徒は混乱しているのかも知れませんよ.

そういう文章を見ることって多いですもんね.


関数・方程式,グラフ・曲線・・・

教科書を読んでいると,色んな表現が出てきます.
とってもヤヤコシイ・・・

関数y=x^2
関数y=f(x)
関数f(x)=x^2

関数y=x^2のグラフ
関数y=f(x)のグラフ

曲線の方程式y=x^2
曲線の方程式y-x^2=0

放物線y=x^2
放物線y-x^2=0


ザっと整理してみますが,おかしなところもあるかも知れません.

★関数★
入力値に対して出力値を1つ決める対応fのこと.
入力値をxとするとき,出力値をf(x)と書く.
それが式で書けるとき,f(x)と書く.
出力値を別の文字で置くと,y=f(x)やy=x^2と表す.

★グラフ★
関数f(x)に対して定義される曲線,
つまり,点集合{(x,y)|y=f(x)}

★曲線★
高校数学でどう定義しているか,不明・・・
とりあえず,1次元の図形になるような点集合
{(x,y)|何らかのx,yの関係式}

★曲線の方程式★
曲線{(x,y)|何らかのx,yの関係式}の「何らかのx,yの関係式」のこと.
これが関数の形y=f(x)で表される必要はない(表されても良い).

× y-x^2=0のグラフ
〇 曲線y-x^2=0
〇 曲線y=x^2
〇 円x^2+y^2=1
× x^2+y^2=1のグラフ
〇 y=(1-x^2)^(1/2)のグラフ
〇 円の方程式はx^2+y^2=1
〇 放物線の方程式はy=x^2

<参考>
y=f(x)のように,yがxの式として明示されているとき,陽関数として表示されている,と言えます.
一方,x^2-y=0は陽関数表示ではないですが,y=x^2と同じ意味です.こういうのは,「表立っては関数の形になっていないが,実際は関数になる」という意味で,陰関数として表示されている,と言えます.
さらに,円x^2+y^2=1は,2つの関数y=(1-x^2)^(1/2),y=-(1-x^2)^(1/2)のグラフの和集合になっています.そういう意味で,円上の各点(x,y)については,yはxと関係があって,関数が隠れている,と考えられます.
こういうのも陰関数表示と言えます.
陰関数でグラとは言わないのかな,と思います(曲線と言う方がよい?).

負の数だって,相加相乗平均の大小関係

  (a+b)/2≧√(ab) ‥‥‥①

という有名な不等式があります.左辺・右辺がそれぞれa,bの,相加平均・相乗平均と呼ばれるので,「相加相乗平均の大小関係」などと呼ばれます.

左辺はどんな実数でも定義されますが,右辺はabが0以上のときしか定義できません.

不等式が意味を成さないのは,「a,bが異符号のとき」です.

では,不等式が成立するのは,どんなときでしょう?

教科書には,「a,bが正のとき①が成り立つ」と書かれています.

a,bがともに負のときは,左辺が負で,右辺が0以上だから,①は不成立.

一方が0のときは?右辺は0になるから,他方が0以上のときに成り立ち,負のときは不成立.

これらをまとめると,①が(定義され,しかも不等式が)成り立つのは「a≧0かつb≧0のとき」となるのです.

教科書に書かれている範囲を含んでいますね.

 

では,3数についての相加相乗平均の大小関係は,どんなときに成り立つのでしょう?

  (a+b+c)/3≧(3)√(abc) ‥‥‥②

  ※右辺は3乗根

a,b,cが0以上のときは,②が成り立ちます.

②の右辺は,3乗根なので,どんなabcであっても定義されます.

先ほどの①よりも検討すべきものがかなり多そうです・・・

負の数が入っても,②が成り立つことがあります.

 

例えば,a=-1,b=2,c=5のときはどうでしょう?

右辺は負の数で,左辺は正の数だから,②は成り立ちます.

 

他には,a=-1,b=-1,c=8のときは,どうでしょう?

左辺は2で,右辺は,何と?こっちも6で,等号が成り立ちますね!

だから,②は成り立っています.  

 

では,a=-1,b=-2,c=4のときは,どうでしょう?

左辺は1/3で,右辺は2だから,②は成り立たないようです.

 

どんなときに②は成り立つんでしょうね.

分かった方,コメントにでもどうぞ.

 

数学Ⅱの,思考・判断・表現力を磨く本といったら,これしかないですね(笑)

自信作です!!

   ☟

オンライン授業記録2

(長文注意,しかも乱文・・・)

数Ⅱ図形と方程式がテーマ.
 文字が入った円らしき方程式
 (1)円になる条件
 (2)円のときの,中心の軌跡
という問題を扱うことに(詳細掲載は自粛).
1日目実施後の勉強会で,「対話」について考えていた.
「沈黙」で「縦の対話」を促し,そこで生まれるであろうモヤモヤを解消してあげるという,美味しいところは自分がいただくプラン.
単元的に「解法主義」に陥りやすいところなので,「1つ1つの定義をしっかり確認」していく流れに.
問題に入る前に30分くらい,事前説明(授業時間60分).
・y=(xの2乗)のグラフって,何?
 ↓
放物線,とか答えられるので,「y=(xの2乗)のグラフは,何?」ではなく,「(y=(xの2乗)の)グラフって,何?」が問いの意味だと,念を押す.
 ☟
もちろん,ちゃんと答えられないだろう,という想定.
・点集合がグラフであること,「点が動く」と考えたら「グラフ=軌跡」であることを確認.
・方程式は,対象となる点の座標が満たす関係式を,座標軸の文字(通常はx,y)で表したもの
 
・円の“方程式”を書いて,「これが何であるか?知識としてでなく,集合で説明できるか?」
 ☟
①の念押し
 
・円っぽいが,右辺が負になる例を見せ,何であるかを書かせる
 ↓
色々な答えが返ってくる
 ☟
認知がおかしなことになる子は居るな,と感じつつ・・・できるだけ誤答はフォロー
 ☟
「集合で言うと,こういうの何て言うか,分かるかな?」
空集合って言うんだよ」
空集合なんて,考えても意味ないと思ってなかった?そんなことはなかったね」
などと話し,「先生,カッコイイ」感を出す(笑)
・円っぽいが,右辺が0になる例を見せ,何であるかを書かせる
 ↓
これも色んな回答・・・
 ☟
誤答はできるだけフォロー
「中心が(-2,1)で,半径が0の円っぽいね.」
「でも,半径0のものは円とは言わないんだ」
「1点だけからなる集合=図形,だね」
 
実際の問題へ・・・(ここからは自粛)
・(2)で中心の座標は分かるかな?書いてみて
 ↓
「(-a,3a)」「(-a.3a)」「-a,3a」「-a」「x=-a,y=3a」・・・
 ☟
えっ・・・,こんな認識なの!?
「細かなダメだししたら,嫌がられるかな・・・」
「いや,今日のテーマは,「1つ1つの定義をしっかり確認」だ,スルーしてはならない!」
「座標は,“カッコの中に,数字を2つ書き,その間にカンマを書いたもの”であって,それ以外を座標とは決して言わないよ」
「x座標だけ→ダメ」
「カッコを書いてない→ダメ」
・・・・
「いくら問題が解けても,こういうのが分かってないと,会話が通じない人になってしまって,模試や大学入試での採点者には伝わらないよ.そもそも,答えろと言ったものを答えてないんだから」
「こういうのは,やっぱり,書いてみないと,ちゃんと分かっているかどうか見えないね」
「間違うことはぜんぜん恥ずかしくないから,どんどん書いてみて,先生に見てもらうと良いよ」
「ちゃんと定義が分かって,意味が分かって,問題を解けるようになりたいね」
なんていう感じでやってみました.
考える時間は,けっこう取ったつもりです.
 
扱う問題が少なく,細かい話ばかりしていたから,
「もっと問題をたくさんやって」
「解法を教えて」
とかいう感想があるかな,と思っていましたが,そうでもなかったです.
「グラフが集合とか,考えたことなかった」
「いざ,何?って聞かれると困る」
「座標の書き方,ちゃんとやらないといけないな」
という風な感想も(原文ではありません!).
高校生も
「本当のことを知りたい」
「ちゃんと分かって解けるようになりたい」
と思っているんだな,と感じることができました.
希望を感じた二日間でした.
今回のオンライン講義で「縦の対話」がどれくらい生まれたかは分からないけれど,「対立」を通じて少しは「変化」してくれたのではないかな,と思ったりしています.
それにしても,「思いもよらない躓き」が文字で見えたのは,とても有難かったです(具体的には書かないですが,驚くような思い込みをもっていた子もいました!).
オンラインの良い点ですね.
 

オンライン授業記録1

初の大人数オンライン講義でした.

 

多くの高校生が受講してくれていました(残念ながら,生徒の顔はまったく見えない仕様です).

 

Zoomのような「チャット」と「なるほど!・う~ん」ボタンがあるので,ある程度の双方向授業ができました.

〇良かったこと:

・開始前に,「準備OKなら「なるほど」を押して」という感じで「なるほど」ボタンを押させて,参加のハードルを下げた

・開始直後にとても易しい質問をして,「チャット」に答えを書かせた(2と答えるだけ)

パワポ画面の切り替わるところで「ここで変わるから,スクショを撮るなら,いまだよ」と指示した

・「ネタバレしても構わない」と割り切って,「誤答紹介」のときには,「いまから先生は嘘をつくよ」と宣言し,「誤答」と明記して説明した.

→失敗の理由を,公式の成り立ちを確認しながら丁寧に説明したら,なかなか受けが良かった!

・公式確認時に,式だけを先に書いて,条件を聞いてみる,など本質理解の重要性を伝えてみたら,反応が良かった. 

〇良くなかったこと:

・一部,未習の生徒がいたよう・・・

・最初以外の「チャットに書いて」が答えにくかった(文章で書かせるもの)

→途中で「どの公式を使うと思う?」と問いを変えたらレスポンスがあった.参加率を上げるには,数字か単語で答えさせる(共通テストの記述レベルで)

→思考を言語化させてチャットに書かせる,というのは200人規模では無理がありそう

・前半の解説での伏線を後半の問題演習で回収,後半の問題解説はスカッと進める,という感じの構成だったが,前半の理解度が低い生徒も少し居たよう.

→顔が見えないし,学校もバラバラで,知らない生徒であるため,全員をスカッとさせるのは難しい・・・

 

2日目は,ギャップを設けた鮮やかな授業よりも,どれかの説明がフィットすることを願いながら重層的な説明をして,取りこぼしを出さないようにしてみよう!

(つづく・・・)

 

 

1次元ベクトルを考えると,正射影ベクトルが分かりやすいと思う件

内積は正射影だ」なんて言われることがあります.

正射影ベクトルの公式:

  (ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)

を丸暗記させること,ありませんか? 

私がどういう解釈をしているか,まとめてみようと思います.

 

 

平面内に,同一直線上にない3点A,B,Cがあるとする.

「点Cから直線ABに引いた垂線の足」をC'とおく.

すると,

  AB⊥CC' ∴ ベクトルABとCC'の内積が0 ‥‥‥①

以後,内積を使った式は,例えば①なら,

  (AB,CC')=0  ‥‥‥①

のように書くことにする.

 

  (AB,CC')=(AB,AC'-AC)=(AB,AC')-(AB,AC)

であるから,① より

  (AB,AC')=(AB,AC)  ‥‥‥②

が成り立つ!

この式は重要な式である.

 

ベクトルAC'が,「ベクトルACの,ベクトルAB方向への正射影ベクトル」である.

「正射影ベクトルとの内積は,元のベクトルとの内積と等しい」というのが②の意味である.

 

C'は直線AB上にあるから,ベクトルAC'は「ベクトルABの実数倍」で,

  内積が正のときは,ベクトルABと同じ向き

  内積が0のときは,零ベクトル

  内積が負のときは,ベクトルABと逆向き

である.

  (ベクトルAC')=k×(ベクトルAB) (kは実数)

と置けて,②より

  k×|ベクトルAB|^2=(AB,AC) ☜両辺とも数値です(ベクトルではない!)

  ∴ k=(AB,AC)/|ベクトルAB|^2

である.よって,

  (ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)

である.

 

ここで,

  {1/|ベクトルAB|}×(ベクトルAB)=ベクトルe

とおくと,ベクトルeは,「ベクトルABと同じ向き」の単位ベクトルである.

 

直線ABを数直線と見る.

その際,Aが原点で,Bが正の方向にあるようにとる.

すると,この数直線の正の向きを表す単位ベクトルがeである.

  (ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|}×(ベクトルe)

となっているから, 

  (AB,AC)/|ベクトルAB|

が数直線上でのC'の座標である.

「ベクトルAC'の成分」と思っても良い.

 

2ベクトルAB,ACのなす角をθ(0≦θ≦π)とすると,

  |AC|cos θ

がC'の座標である.

  θが鋭角のとき,座標が正

  θが直角のとき,座標が0

  θが鈍角のとき,座標が負

である.

 

数直線を考えて,その中だけで「1次元ベクトル」を考えていることになっているのに気づいただろうか?

正射影ベクトルの公式

  (ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)

を覚える必要はないが,「正射影ベクトルは,垂線の足を下した直線の中だけで1次元ベクトルを考えていることになる」という観点は重要である.

内積

  (AB,AC)=|AB||AC|cos θ=|AB|×|AC|cos θ

 と分けて考えると,後半(|AC|cos θ)が,ベクトルAB方向(前半のベクトル)への正射影ベクトルの「座標」を表している.

「長さ」ではない!

負になることもあるからだ.

 

だから,垂線の足が線分AB内に,あっても,なくても,  

  (ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)

と1つの式で書けるのである.

 

鈍角のときに,うっかりマイナスを付けてしまったり,しませんか?

丸暗記しても,あまり意味はない‥‥‥

 

しかし,読みにくいですね.スミマセン.

1次元のベクトルを考えたら良いのではないか?

高校数学のベクトルでは,

 「平面上のベクトル」と「空間上のベクトル」

は考えるが,

 「直線上のベクトル」つまり「1次元のベクトル」

は考えないようだ.

 

1次元のベクトルとは?

 

直線上に2点A,Bをとって,有向線分ABを考える.

2,3次元と同じく,有向線分は,「位置」と「向き」と「大きさ」で決まる.

 

「有向線分」と「ベクトル」を混同している人も多いが,別物である.

「ベクトル」は,(「位置」を問題にせず)「向き」と「大きさ」で決まる量である.

 

少しややこしくなるが,ベクトルを,集合を利用して考えてみよう.

 

何次元でも構わない.

有向線分全体の集合において,有向線分ABと「向き」「大きさ」が同じであるものを1つにまとめると,同じ向きと大きさの有向線分を集めた部分集合ができる.

この部分集合が「ベクトルAB」と考えると良い.

部分集合の要素の1つ(これを“代表”と呼ぶことにする)として「有向線分AB」が取れるから,この部分集合を「ベクトルAB」と表すのである.

ベクトルABという部分集合には無数の有向線分が含まれるが,ベクトルABの代表となる有向線分として,いまは有向線分ABを取っているのである.

もちろん,別の有向線分,例えば有向線分OC(が含まれているなら,これ)を取ることもできる.

有向線分として有向線分ABと有向線分OCは(「位置」が違うなら)別のものである.しかし,同じ部分集合の代表になるから,ベクトルとしてベクトルABとベクトルOCは同じである.

ある学級を「A君の居るクラス」ということも「Bさんの居るクラス」ということもあると思うが,これと同じである.

 

この辺りをふわっとしか理解していないことは,ベクトルを学んでいないことと同じかも知れない.

ベクトルを使って問題を解くことができても,概念としてのベクトルはまったく分かっていない.

そういう人はけっこう多いのではないかと思う.

 

話がそれた.

 

直線上に2点A,Bをとって,有向線分ABを考える.

有向線分の集合を,

 “「向き」と「大きさ」が同じである有向線分を集めた部分集合”

に分割する.

各部分集合がベクトルである.

各部分集合について,代表となる有向線分を何にしても良い.

始点が原点Oである有向線分を代表にすると,ベクトルは終点の座標で決まる.

1次元の場合は,どのベクトルも,1つのベクトル(単位ベクトルを取ると便利)の実数倍で表される.

その実数が,「始点がOのときの終点の座標」である.

もちろん,負になることもある.

 

この感覚を身に付けていると,「内積」との関連がある「正射影ベクトル」のイメージが付きやすくなるはずである.

 

正射影ベクトルについては,また別の機会で.

今書いている数Bの本には,これらを載せる予定である.

「思考・判断・表現シリーズ(東京出版)」の数B,数IIIの執筆を始めます!

これまでに,思考力・判断力・表現力をテーマに,数学IA,数学IIの問題集を書いてきました.

いまから数学B,数学IIIの執筆をやっていこうと思っています.

 

 

 数IAは「ほぼ計算不要の」

 数IIは「ちょっと計算も必要な」

というワードをタイトルに入れてきました.

数B,数IIIはどうするのが良いでしょう?

 

・見た瞬間に判断せよ

・文章のおかしなところを指摘し,直せ

・定義を大事にしよう

・誤答の修正をせよ

 

といったテーマをたくさん盛り込もうと思っています.

解法至上主義の受験指導へのアンチテーゼ(笑)

 

・受験当日には6割くらいの問題が解けたら良いわけで,解法をたくさん覚えるのは割りに合わないのではないか?

・できるだけ覚える解法を少なくして,その場での思考・判断・表現で対応すればよいのではないか?

・「こうやって解くんだ」と教え続けられる苦痛より,「どう考えたら良いのだろう?」とゲーム感覚で学べる方が楽しいのでは?

・「こうやったら良い」と正しいことを一方的に教わるだけではなく,「こうやったらダメ?定義に従って,自分で判断できるようになろう!」と正誤を判断できるようになっておかないと,いざと言うときに「当てずっぽう」になってしまうのではないか?

 

上に書いたようなことが勝手にできるようになる人はこれまでもたくさん居て,そのような人には私の「思考・判断・表現シリーズ」は不要だろうと思います.

できるようにならない(できるようになる指導を受けられない)人が圧倒的に多いので,そういう人に届けばよいな,と思います.