yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

負の数だって,相加相乗平均の大小関係(完結編)

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上の四角には何が入るでしょう?

(a,b,cは実数)

 

3文字での相加相乗平均の大小関係:
  ( a + b + c )/3 ≧ (abc)^(1/3) ‥‥‥(*)
について,負の数を代入しても,不等式が成り立つことがあることを前記事で確認した.
どんなときに成り立つのか?
少し深堀してみよう.

そのためには,証明に戻るのが近道となろう.
ふつうは「a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のとき(*)が成り立つ」と書いてある.
その他のときにはどうなるか,触れていないはずである.

a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のときに成り立つことを示してみよう.

  x^3 + y^3 + z^3 - 3xyz
   = ( x + y + z )( x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx )

という因数分解の公式において,
  a^(1/3) = x,b^(1/3) = y,c^(1/3) = z
とおくと,
  a + b + c - 3(abc)^(1/3)
   =( a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) )( x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx )
となる.右辺の後半は
  x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx
   = (2x^2 + 2y^2 + 2z^2 - 2xy - 2yz - 2zx )/2
   = { ( x - y )^2 + ( y - z )^2 + ( z - x )^2 }/2
   ≧0
を満たす.x=y=zのときに等号が成り立ち,
  x^2 + y^2 + z^2 - xy - yz - zx = 0

よって,a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) ≧ 0 のとき
  a + b + c - 3(abc)^(1/3) ≧ 0
  ( a + b + c )/3 ≧ (abc)^(1/3) ‥‥‥(*)
が成り立つ.
特に,a > 0 ,b > 0 ,c > 0 のときは(*)が成り立つ.

ということで,a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) ≧ 0のときは,(*)が成り立つことが分かった.

a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) < 0 であっても,a = b = c のとき,(*)は成り立つ(等号が成立).
a^(1/3) + b^(1/3) + c^(1/3) < 0 で,「 a = b = c 」以外のとき,(*)は不成立.

これで完璧に整理できた!


数Ⅱと言えば,コレ(しつこい)

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