yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

極値の定義,ご存じですか? =大学・高校の違い&高校教科書間の違い=

図の2つは「x=0で極小値-1」と言ってよいのでしょうか?

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判断に困ったら定義を参照します!


 あるx=aでの値f(a)が極小値であるとは・・・

①aを内部に含むある区間において「f(a)<f(x)」が成り立つことをいう.

②f(x)がx=aの前後で,「減少から増加に転じる」ことをいう.

③aを内部に含むある区間において「f(a)が最小値」であることをいう.


色んな定義があるじゃないか!? と突っ込みたくなるというのが,今回のテーマです.


①が狭義の極値
広義になると,③のように「最小値」で定義します.
大学では,②のように増減で定義することはないようです.

高校数学では・・・何と!
「連続関数」という仮定がつくようです.
つまり,不連続なときは,極値が定義されないのです!
図の2つの関数はx=0で連続ではないから,極小値とは言えないようです.

大学の定義と高校の定義が違うのですね!!

③で定義すると,y=1のような定数関数は,すべての点で極値をとることになります.
これは避けたいですね.

だから,高校数学では

①’
連続関数f(x)であるx=aでの値f(a)が極小値であるとは,aを内部に含むある区間において「f(a)<f(x)が成り立つ」となることをいう.

を採用することが多いようですが,教科書によっては②’(つまり,②かつ連続)を定義に用いていることもあるようです.

図の1つ目:
大学の定義
 ①☞極小値!
 ②☞極小値!
 ③☞極小値!
高校での各定義☞極小値でない

図の2つ目:
大学の定義
 ①☞極小値!
 ②☞極小値でない
 ③☞極小値!
高校での各定義☞極小値でない

他に,例えば,y=|x+1|+|x-1|なども,「x=0でのy=2」が極小値かどうか,定義によって変わります.
グラフは次のような感じです.

 \_/

-1≦x≦1で平らになります.
最小値で定義する③の場合は極小値ですが,②増減や①f(a)<f(x)による定義では極小値になりません.

たかが極値と侮るなかれ.

 高校と大学で定義が違う
 高校でも教科書によって定義が違う

という,とっても変わった現象が起きているのです.
出題する大学の先生にとっての極値が,高校生にとっては極値ではなかったりするのです.
そういう危険領域に入る問題は見たことがないので,たぶん大丈夫だと思いますけどね.

では,連続を仮定する高校数学では,
 ②増減による定義
 ①f(a)<f(x)による定義
は,同じなのでしょうか?
教科書によって,書き方が違うだけで,同じことを言っているのか?
それとも,定義そのものが違っているのか?

またこの辺も探っていきましょいう.