yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

変なグラフ 小数部分 x-[x] によって

なかなか素敵なグラフが描けました.

 

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1つの式なのに2つに分岐して,それぞれが反比例のグラフ上にあります.

詳細は後ほど.

その前に簡単に基本の確認から.

 

 

まず,ガウス記号[ ]

実数xに対して,

 [x]=(x以下の最大の整数)

と定め,xの整数部分と呼びます.

 [3]=3 整数の整数部分は,その整数そのもの

 [π]=3 3.14……の整数部分は3

 [-1.3]=?

[-1.3]を-1と思ってしまうかも知れませんが,x以下の最大の整数なので

 [-1.3]=-2

です.

 -1.3=-2+0.7

と考えるのです.

y=[x]のグラフが,青い階段. 

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では,赤いグラフは?

これが小数部分を表しています.

 3の小数部分=0

 πの小数部分=0.1415.……

 -1.3の小数部分=0.7

です.

-1.3の小数部分は0.3ではなくて,0.7です!

小数部分は0~1の数値です.

式で書くと,

 x=(xの整数部分)+(xの小数部分)

 ∴ xの小数部分=x-[x]

です.

小数部分は0~1の値が周期的に繰り返されて,赤いグラフのようになります.

 

小数部分を使って,変なグラフを作ったので,それを紹介します.

 

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xの小数部分から0.99を引いた値と,0のうち,大きい方(同じのときは0)という値(maxの部分)を,xに加えています.

小数部分が0.99未満のときは,maxの部分が0で,y=xと同じ値.

小数部分が0.99以上のときは,maxの部分が小数部分そのもので,y=xよりもちょっと上に.

小数部分が0.99以上というのは,整数よりもちょっと小さい数ということです.

実数全体の99%は小数部分が0.99未満なので,グラフ全体の99%がy=xと一致しています.

ですが,定期的にy=xから離れるので,y=xは,このグラフの漸近線ではありません.

 

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これは,なかなか面白いと思っています.

xが整数ではないときにはy=xと一致し,xが整数のときだけそれより1だけ上に点があります.

だから,上の例と同じく,y=xに漸近はしません!

さて,どんな構成か,分かるでしょうか?

小数部分x-[x]ではなく,その-1倍である[x]-xになっています.

xが整数のとき,

 [x]-x=0 ∴[[x]-x]=0

xが整数でないとき,

 [x]-xは-1より大,0より小 ∴[[x]-x]=-1

これによって,整数のところだけ上に1上がるグラフになるのです!

 

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これは,小数部分x-[x]をxで割って,反比例っぽい雰囲気を出しつつ,xが整数のときにはy=xと一致するようにしています.

xの絶対値が大きくなると(x-[x])/xは0に限りなく近づくので,y=xに漸近します!

また,x<0の部分がy軸にも漸近しています.

 

では,これは??

 

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1/xの小数部分の-1倍が[1/x]-1/xです.

 1/xが整数,つまり,xが(整数分の1)のとき,0.

 そうでないときは,-1より大,0より小の値.

 

これに[ ]を付けた[[1/x]-1/x]は,

 xが(整数分の1)のとき,0.

 そうでないときは,-1.

 

それを2倍して1を加える(2[[1/x]-1/x]+1)と

 xが(整数分の1)のとき,1.

 そうでないときは,-1.

 

以上から,y=(2[[1/x]-1/x]+1)/xは

 xが(整数分の1)のとき,y=1/x.

 そうでないときは,y=-1/x.

 

2つの反比例のグラフ上に点が現れるグラフですが,xが(整数分の1)になるのはごく稀なので,実質100%がy=-1/x上.

y=1/x上には点々が現れるだけです!!

(ディリクレの関数というものを使おうかと思っていましたが,こっちの方がシンプルで面白いかな)

 

さて,|x|>1では常にy=-1/xだから,x軸はこのグラフの漸近線です.

では,y軸は漸近線でしょうか?

 lim(x→+0)y = ∞ または lim(x→+0)y = -∞ または

  lim(x→-0)y = ∞ または lim(x→-0)y = -∞ 

を定義にすると,「漸近線ではない」となってしまいます・・・

 

先日も

 

「漸近線」の限界に漸近してみる - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

 

に書きましたが,高校数学の教科書(数研)での定義は次のようになっています.

 

定義

グラフが一定の直線に限りなく近づくとき,その直線を,そのグラフの漸近線という.

 

また,

 

関数f(x)において

 lim(x→b+0) f(x)=∞,lim(x→b+0) f(x)=-∞

 lim(x→b-0) f(x)=∞,lim(x→b-0) f(x)=-∞

 のいずれかが成り立つとき,直線y=bは曲線y=f(x)の漸近線である.

 

 と書かれています.

 

 「いずれかが成り立つとき,漸近線」

 

であって,

 

 「漸近線であれば,いずれかが成り立つ」

 

とは書かれておりません!

「定義」に従うと,「y軸は,y=(2[[1/x]-1/x]+1)/xのグラフの漸近線だ」と主張できるということですね.

 

以上,漸近線と関連して,小数部分を用いた変な関数を考えるシリーズでした.

お付き合いいただき,ありがとうございました.