yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

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数学ネタばかりになると思いますが,お楽しみください.

 

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応援,よろしくお願いいたします.

100歳の誕生日まで続けるというつもりで,投稿日を設定しました(笑)

 

「-1≦x≦1⇔x=sinθ(0≦θ<2π)」なのか?

こんな質問がありました.
合わせて,色んな問題で「解」というものを考えるけれど,それって正確にはどういう意味?と.

何となくで数学をやっていると気にも留めないですが,ちゃんと知ろうとしたら躓くところです.
だって,高校数学のブラックボックスに近い部分ですから.


※文字ばかりで読みにくいですが,お許しを.
 テキトーにAmazonのリンクを貼っておくので,お買い物したくなったらそちらからどうぞw


さて,いつも書くことですが・・・

「条件」は,変数を含む数学的な文や式で,変数に具体的なものを代入するごとに命題になるものです.
その際,前提として,代入できるもの全体の集合を決めないといけません.
その集合の要素の中で,条件に代入して真になるもの全体の集合を考えて,その包含関係により,必要条件・十分条件という風に言われます.

実数θに関する条件として,
 -1≦sinθ≦1 ……☆
 ⇔θは実数
 ⇔sinθ<2
 ⇔-5≦sinθ
です.どんなθでも成り立つ条件だからです.
また,全体集合が0≦θ<2πであるとき,
 sinθ≧1/2
 ⇔π/6≦θ≦5π/6
 ⇔1/2≦sinθ≦1 ……☆
 ⇔1/2≦sinθ≦10
 ⇔1/2≦sinθまたはsinθ=-5
です.
sinθの値の範囲を表す条件としては☆ですが,他のものも条件としては同値です.

とりうる値の範囲や,方程式・不等式の解,軌跡の方程式などを答えるときは,条件の中でも☆にあたるものを答えよ,という意味になっているのだと思います.



(例)
正の実数xについての方程式(xの4乗)=1を解け.

※解くとは,解をすべて求めること.
※解とは,方程式に代入したら真の命題になるもののこと.
※解全体の集合を解と言うこともある.解け,と言われたら,こっちの意味.

(補足)
2x-1=0の解は1/2であって,正確にはx=1/2ではない.
x=1/2は,解が明示された形の方程式であって,解の表現としてこれも認める,となっているから,x=1/2と答えてもよい.
x=1/2は,xに1/2を代入したときのみ真になる条件.
xに1などを代入することもできるが,そのときは1=1/2という偽の命題になる.


(例の解答の一例)
正の実数xについての条件として,
 (xの4乗)=1
 ⇔(xの2乗)=1または(xの2乗)=-1
 ⇔x=1またはx=-1またはx=iまたはx=-i
 ⇔x=1,-1 ←「または」を省略して,こう書いても良いことになっている
 ⇔x=1
である.よって,解は1(x=1と答えても良い).


  ☝
勉強法の本としてむっちゃオススメ!
私が買い占めたので,高い古本しか残っていないw



では,本題.

 -1≦x≦1⇔x=sinθ(0≦θ<2π)

なのか?
そもそも,何についての条件なのか?

 「-1≦x≦1」はxについての条件
 「x=sinθ(0≦θ<2π)」はxとθについての条件

です.
xについての条件のだろうと思います.
なぜなら・・・
xとθの条件として考えるなら,xとθに数値を代入した命題を考えることになります.
例えば,x=0,θ=π/2として
 
 -1≦0≦1 ならば 0=sinπ/2(0≦π/2<2π)
 0=sinπ/2(0≦π/2<2π) ならば -1≦0≦1
 
を考えるのは,何とも奇妙だからです.

xの条件として考えるには,θが変数であってはならないので,

「x=sinθ(0≦θ<2π)となるθが存在する」

に変えないといけません.

xについての条件として,
 -1≦x≦1
 ⇔x=sinθ(0≦θ<2π)となるθが存在する
です.

ついでながら,「解」について確認しておくと・・・

θに0以上2π未満の実数を代入して得られるxを“すべて”集めて得られる区間が-1≦x≦1.
この区間内にある各実数について,その数を表すθが“存在”する.

 

 

  ☝       ☝
友人の書いた本.来年の総合型などの対策に.

 

(例)
平面上に異なる2点A,Bがある.
同じ平面内の点Pについての条件として
 A,B,Pが同一直線上にある
 ⇔(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB) となる実数tが“存在する”
です.間違っても
 A,B,Pが同一直線上にある
 ⇔(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB)
と書いてはダメです.
(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB)のtに実数を代入して得られるPを“すべて”集めたら,Pの描く図形(軌跡).
その軌跡上の各点に対して,その点を表す実数tが“存在”する.

(例)
整数m,nについての不定方程式3m+2n=1

3(m-1)+2(n+1)=0と変形できて,
 3(m-1)=-2(n+1)
3,2は互いに素だから,
 3(m-1)=-2(n+1)=6k
となる整数kが“存在”して,
 m=2k+1,n=-3k-1
と表すことができる.
(それぞれの解に対して,整数kが“存在”する)
よって,解は,
 m=2k+1,n=-3k-1
のkに整数を代入したものの“すべて”である.

条件の比較においては,変数が何であるかを見極めることが大事です.
何となくで「⇔」を使うことのないように.


最近,兵馬俑を見に行ってきた.
上野の森美術館
このフィギュア,高い!!

三段論法  (A→B かつ A) ならば B

三段論法
 (A→B かつ A) ならば B
のことを考えてみます.

***

「2=1ならば3は偶数である」は真.

「2=1のとき,1ずつ加えて3=2であり,2が偶数だから,3も偶数である」という論理展開に問題がないから.

一方で、「2=1ならば3は奇数である」は真.

「2=1であろうが,そもそも3は奇数である」という論理展開に問題がないから.

「2=1」が真であると仮定すると,相反する2つの命題が真になってしまう(この状態を矛盾という)から,「2=1」は偽である.
偽であるものが真であることにすると,何でも真になる.恐ろしい・・・

これを踏まえて,
 三段論法

 (A→B かつ A) ならば B

は数学の論証における肝です.

A→Bあっても,A が偽であればこの三段論法は使えないので,Bが真であるとは言えません.もちろん,偽であるとも言えません.

ここまでのことから分かることは,

帰納法が、三段論法の繰り返し、ということ
・A→Bでも、Aでないと、Bは言えないこと
・A→Bをいうときに、Aの真偽は問題としていないこと

で,これはとても大事なことだと思います.

三段論法の手前をたどっていくと,最終的には「定義」「公理」に行きつきます.
つまり,真であると確定するものへ.
そのことを掴んでおかないと,定義をおろそかにした,おかしな数学になってしまうのだと思います.

そんなことをダラダラと書きたくなりました.

大学への数学・11月号に記事が載ります

 

10/20発売の「大学への数学・11月号」に私の書いた記事が載ります.

 

いまやっている「超越数学ラボ@お茶ゼミ√+渋谷校」の講座内容を紹介するものです.

 

yoshidanobuo.hateblo.jp

 

本試の記事では宣伝色はNGなので,画期的なことかなと思っています.

カオス力学系有理数無理数の話,集合の濃度,カントール対角線論法,すべての有理数が現れる数列の話,などを書きました.

 

無理数無理数の間には必ず有理数無理数も存在します.
そんなことを証明したりしています.
高校範囲?
適度に誘導をすれば,高校生でも考えられます.
そういうところを突いていく講座としてやっていて,京大の特色入試に近い雰囲気かも知れません.

詳しくは記事をご覧ください.
同誌にお茶ゼミ√+の広告も載っていて,受講希望の受験生はそちらもご覧ください.

超越ラボとは別の「東大解答力養成講座」の案内もあります.
「東大解答力養成講座」は,かなり良い講座なので,いまからでも受講する価値はあると思います.

良かったらお手に取ってください.上記のリンクからご購入可能です.

(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)=(6の3乗)

もしも,

「(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)が3乗数であることを示せ」

のような問題だった場合,(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)の概算によって,何を3乗した数と一致するのかを考えることになります.
そこで,(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)を評価してみよう,となるわけです.
(1の位の数を見たら分かる,というのは言わない!)

相加相乗平均の不等式(AM-GM)は,個数が増えても使えるのでした.ここでは3個バージョン.

 

コーシーシュワルツの不等式(C-H)は,ベクトルの内積

  (大きさ)×(大きさ)×(なす角の余弦)

であることを利用しているのでした.これも,何次元でも使えます.ここでは3次元バージョンを2通りで使ってみましたが,後でもう少し高次元でやってみます.

なお,C-Hを利用して,-1≦(相関係数)≦1が示せるのでした.
標準偏差が大きさ,共分散が内積に相当するからです.
ちなみに,XとYの共分散は,それぞれの平均m,nを使って

   E( (X-m)(Y-n))

  =E(XY-nX-mY+mn)

  =E(XY)-nE(X)-mE(Y)+mn

  =E(XY)-mn

  =E(XY)-E(X)E(Y)

  =(積の平均)-(平均の積)

となる.
これを利用したのが,次のチェビシェフの不等式(Chebyと略してみた).

 

(X,Y)=(3,9),(4,16),(5,12)というデータは,XとYに正の相関があり,共分散は正.
つまり,

  (積の平均)-(平均の積)>0

  (3×9+4×16+5×25)/3>(3+4+5)/3×(9+16+25)/3

  3×9+4×16+5×25>(3+4+5)×(9+16+25)/3

これがチェビシェフの不等式と呼ばれるそうです.

最後は,y=3^3のグラフが下に凸であることを利用.
イェンセンの不等式とも呼ばれるもの.

グラフ上の3点(3,3^3),(4,4^3),(5,5^3)を頂点とする三角形の重心

  ((3+4+5)/3,(3^3+4^3+5^3)/3)

はグラフよりも上にある.つまり,

  (3^3+4^3+5^3)/3>((3+4+5)/3)^3
  3^3+4^3+5^3>3×(4^3)

さて,そこそこの精度の評価が得られて,6^3しかあり得ないことは分かるのですが,評価の精度をもっと高めたいというのが人情です.
そこで,
  3^3+4^3+5^3

  =3×3^2+4×4^2+5×5^2

  =3^2+3^2+3^2+4^2+4^2+4^2+4^2+5^2+5^2+5^2+5^2+5^2

と見ます.すると,12次元ベクトル(3,3,3,4,4,4,4,5,5,5,5,5)の大きさです!
もう1つ,(1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1)をとって,大きさと内積の不等式(C-H)を作ると

  (3^3+4^3+5^3)×(1+1+……+1)

  ≧(3×1+3×1+3×1+4×1+4×1+4×1+4×1+5×1+5×1+5×1+5×1+5×1)^2

よって,

  3^3+4^3+5^3≧50^2/12=625/3

  =208. 333……

となって,ものすごく良い評価!!

自己満足でしたw

「解」という,高校数学においてあいまいな言葉について

手書きですみません.

常にここまで考えて話したり書いたりはしていませんが,いざとなったらここまでやりたい,というものです.
丁寧にやると,中高生の納得度は高いと思います.
(計算が苦手な生徒でも,哲学的な話だから,意外と食いつきが良かったり)

 

東大京大 超越数学ラボ

こんなのやっています.

www.ochazemi.co.jp

 

大学数学ではなくて,大学入試範囲で思考できる楽しいテーマをやっています.
入試数学で使う手法でけっこうすごいことができてしまうのですよね.
視野を広げつつ,道具を精密に使えるようにする感じです.

・カオス力学系

テーラー展開

三角関数のn倍角

などをやってきました.
こうやってテーマだけ書くと陳腐な感じに見えますね笑
実際はかなり面白いと思うのですけど・・・
・eとπの話

素数の話

などが続きます.

前記事を認めると,「√4=±2」なのか?

f:id:phi_math:20220416013216p:plain

前の記事の続きです.

±は罪深い表記だと,改めて思いました.


 「実数xについての方程式x^2=1」

とは,

 「実数xを変数とする条件x^2=1」

のことで,その解とは,

 「変数xに代入して得られる命題が“真”になるもの」

のこと.
ただし,「解をすべて求めること」つまり,「条件x^2=1の真理集合を決定すること」を「方程式を解く」と言い,解全体の集合のことも「解」と呼びます.

※「方程式x^2=を解け」は,

 「xにどんな実数を代入したら真になるかを考えよ」

という意味で,

 「xが1であるか―1である」

と言っているわけではありません!
そう見るのは,未知数としてのxであり,いまは,変数としてのxです.
詳しくは後ほど.


「実数xについての方程式x^2=1」の解は

  {1,-1}

です.
「実数xを変数とする条件」として「x^2=1」と同値な条件が

  「x∈{1,-1}」

です.集合を用いずに書くと,

  「x=1 または x=-1」

です.
毎回こう書くのがメンドクサイから,この条件のことを

  「x=1,-1」

と略記することが認められています.あくまで,条件として.
さらに,こう書くのもメンドクサイということで,

  「x=±1」

と書くことも認められています.あくまで,条件として.


だから,変数xに数値を代入して得られるもの(命題)を考えるとき,このままの形で考えるとおかしなことになってしまいます.

  「x∈{1,-1}」
  「x=1 または x=-1」
  「x=1,-1」
  「x=±1」
  
は,どれも同じ条件を表します.変数xに1を代入すると,命題は真になるのですが,その命題としては

  「1∈{1,-1}」
  「1=1 または 1=-1」
  「1=1,-1」
  「1=±1」

となります.
上で「あくまで,条件として」と書いたのは,「1=1,-1」と「1=±1」は命題として認めてはならないだろう,ということです.


ここの認識が誤っていると,

【すべての実数xで

  √(x^2)=±x

が成り立つ.だから,x=2を代入した命題

  √4=±2

は真である】

という主張をしてしまう可能性があるわけですね.


さて,では,未知数変数について.

「2乗すると1になる実数を求めよ」

という問いに出くわしたとします.

【そんな数をxとおく.すると,xはx^2=1を満たす実数である.】

【x^2=1を解くとx=1,-1である.】

【よって,当てはまる数は1,-1である.】


赤字部分のxは,求めようとしている「値」を表す文字で,「未知数」.
求まっていない段階でも.xは1か-1を表しています.

しかし,青字部分は,「方程式の理論」を使って,「条件の言い換え」をしており,xは「変数」.
例えば,xに2を代入することもでき,「2^2=1」という偽の命題が得られます.
変数ですから,何でも代入できます.

未知数の値を求めるのに,いったん変数に切り替えて方程式の解法を利用し,最終的に数値としての1,-1を求めています.
ここに記号のトリックがあって,バレないように“,”の使い分けがされています.
よく考えると,

【x=1,-1】【x=1 または x=-1】

【当てはまる数は1,-1】【当てはまる数は1と-1】

です.
前者は条件の略記ルールに対応する“”で「または」であり,
後者は数値の列挙の区切りを表す“”で「」です.

教科書では,この辺りを悟られないような巧みな書き方がされています.
こんな風に説明されたら混乱しかしないですからね.


私は,「このように教えるべきだ」などとは思っておらず,「いつかここで引っかかる生徒が居ないかなぁ,そのときには完璧に納得させられるのになぁ」と思っているだけです.
来たるべき時に備えて,自信を持てました!
早くそんな生徒に出会いたいな.
なかなか出会えないと,求められていないのに話したくなってしまかも笑

「|x|=±x」は常に成り立つ!?

f:id:phi_math:20220415115630p:plain


    👇
この主張以外の受け付けない,という趣旨ではなく,±を雑に扱うと危険である,というのが趣旨です.
言い切る口調で書きますが,広い心で読んでください.

****

「|x|って何?」と聞いたら「±x」と返ってくることがあります.
関数としての|x|を扱っていてグラフを考えていたら,y=|x|とy=±xは別の曲線を描きます.

でも,ちょっと考えると・・・

①方程式|x|=2を解くのに
 ±x=2
 ∴x=±2

②不等式|x|>2を解くのに
 ±x>2
 ∴x>2,-x>2
 つまり x<-2,2<x

③不等式|x|<2を解くのに
 ±x<2
 ∴x<2,-x<2
 つまり -2<x<-2

となるわけです.
何にも問題ないのでは???


いえいえ,よく見ると,①,②では,条件として,±を“または”で扱っていますが,③では“かつ”になっています!
①,②と同じように③を解くと,

 x<2 または -x<2
 ∴ xは実数

となってしまい,|x|<2の解は「すべての実数」になってしまいます.


±は,条件としては,“または”であると思います.

“実数についての条件”として,

 |x|=±x

は,

 |x|=x または |x|=-x

と同値であると考えられます(「|x|=x または -x」ではない!).
  👆
※ここがウヤムヤになっているのが高校数学なのではないかと思います

この条件(=変数xに実数を代入すると命題になるもの)は,

・x=1のとき,

 |1|=1 または |1|=-1 …真の命題

・x=-1のとき,

 |-1|=-1 または |-1|=1 …真の命題

から分かるように,

 「すべての実数xで成立」

となります!
2つの命題(=真偽の定まる数学的な式や文)p,qについて,「p または qが真」であるのは,「pが真,qが真」または「pが真,qが偽」または「pが偽,qが真」のときであるからです.


もし生徒が,実数についての条件として「|x|=±x」と言っていたら,「そうだね」と私は答えるべきなのです.


条件におけるイコールは,「左辺と右辺が同じものを表す」という意味ではなくて,xに代入するごとに「左辺と右辺が同じものを表すかをチェックせよ」という意味なのですよね.

だから,“数学的な対象”として,|x|と±xはまったくの別物ですが,条件としては「|x|=±x」が常に成り立ってしまうと思います.

だから,すべてのxについて「|x|=±x」が成り立つけれども,2つの曲線y=|x|とy=±xはまったくの別物になってしまいます.

前者は

 半直線 y=x (x≧0)

 半直線 y=-x (x≦0)

の和集合.

後者は

 直線 y=x (x≧0)

 直線 y=-x (x≦0)

の和集合.


xについての条件として「|x|=±x」の真理集合は,実数全体の集合.

x,yについての条件として「y=|x|」と「y=±x」は真理集合が異なっているけれど,それらの共通部分をx方向に正射影するとx軸全体になってしまう,というのが上記のイメージになります.


蛇足ながら・・・
実数についての条件として「|x|=±x」は常に成り立ち,「-|x|=±x」も常に成り立ちますが,「|x|=-|x|」の真理集合は{0}になってしまいます.

条件におけるイコールは「代入するごとに成り立つかどうかをチェックするもの」であって,「等しい」という主張ではない!
命題におけるイコールは,「等しい」という主張である!

この違いを知っておくことが大事なのだろうと思います.

大学への数学 2022年3月号

もうすぐ発売になる「大学への数学 2022年3月号」に私の記事が載っています.

 

昨年度入試の,灘中,灘高,神戸女学院中の問題を紹介しています.
高校生向けの「大学への数学」に中学,高校入試問題のことを書くというのは違和感があると思います.
しかし,道具の少ない状況で問題解決することが求められるので,年を重ねるごとに解くのが難しくなってきます.
●●算のような問題は,上位校では皆無ですからね.
共通テストでは公立高校の生徒が圧倒的に不利で,こういう問題を通じて思考する(手段を選ばず問題解決する)経験をしている生徒が圧倒的に有利です.
それなしで共通テスト高得点を狙うなら,予備校講師が授業で扱いそうなすべてのネタを暗記すると良いと思います.大人にとっては「知識・技能」であるが,生徒にとっては「初見問題」であるようなところから出題されているからです.

そんなことを思いながら読んでもらえると嬉しいです.

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2022共通テスト・追試 数学ⅠA,数学ⅡBについての雑感

【共通テスト・追試の数学】

問題がなかなか見れないという人も居ますが,こちらにありました.
ありがとうございます.
  ⇓

www.minyu-net.com

【ⅡB】
ⅡBはすごく良いと思う!
細かいツッコミどころはあるけれど,かなり定性的になっていると思います.
ポアソン分布!?」と思った統計も,知識を問うものではなく,意味理解が」問われている.
お花のような空間図形のベクトルは,図形が見えていなくても解ける.最後の結果はちょっと意外だし,意味理解が問われているし,悪くないのかな.
本試と同じくらいの感じかなと思いました.
やはり,IIBの平均点が低いのは,良くないと思う!
あれができないのは,意味が分かっていないということになる(僕の本をやってくれ!と心底思う).

「1」
〔1〕5,12,13が隠れていて,「領域を利用した最大最小」の応用問題として考えさせるもの.
〔2〕三角関数で,ちょっと変わった関数をうまく流れを付けて作られている.変域の考察も適当な難度で良い.
部分的には,基本を確認するだけの出題もあって,平均点の底上げにもなっている.

「2」
平行移動をテーマに展開していく微積
極値点の移動
・3次関数の平行移動で囲まれる面積は2次関数の積分
・平行移動で一致する条件
・一致する組の選択
定性的な要素が強く,良い問題.ただし,問題文は改善の余地あり.

ここで宣伝.私の本と同じ方向性になってます!
数Ⅱだけですが,これをやっておくと,かなり強いと思いますよ(自画自賛)!
   ⇓


「3」
統計は,これまでとは大きく変化!
本試験も連続型が出て,積分と融合!
統計の問題も変化が出てきて,ワクワクする!
・二項分布
・標本調査の結果を全事象にした確率変数
ポアソン分布を使ってみる(知識問題ではない!)
・独立なものの標本平均の平均と標準偏差
ポアソンでも中心極限定理により,正規分布で近似可能
・標準化
・信頼区間は出題されていない!
・「確率が小さいから,E(X)とE(Xバー)は等しいとはみなせない」という検定っぽい雰囲気を出している

「4」
漸化式の作成はないが,一般項は1つしか求めずに,差の数列について考察して,別の数列と値の大小だけを比較!和の大小も比較.
暗記で漸化式から一般項を求める方法を練習しているだけでは太刀打ちできないが,分かっているととても易しい問題で,とても良い!

「5」
可愛い図形だが,全体像はイメージしにくい.
問われているものだけを求めると,最後まで求まるようになっている.
無駄なく求まるが,何となく求まってしまった感じが残る.
最後のツ,テはパラメータの意味を問うていて,良い出題だと思います.
 
【ⅠA】
IAは本試験よりも平均点が下がるかも・・・
問題の質はこっちの方が良いような気もするけれど,処理量は同程度か.
しかし,易しい問題は少ないから,平均点は低いと思う.
「1」
〔1〕いきなりメンドクサイ
〔2〕はしご車の問題は,かなり酷だと思った.どの段階でどの程度の手間がかかるかを読めないのが辛い😢最初,三角比の連立でやるのかと思って飛ばす.2つに分けるのですよね.表があるから,加法定理ではないところがポイントで・・・
〔3〕は予想通りのテーマ(ラーンズの問題集にも掲載!)
「2」
〔1〕メンドクサイ.最初のハードルが高く,2次関数に至るまでが大変・・・2次関数の力は問われていない.
〔2〕概算で合わせられるし,図の選択も悪くはないかな.ネノ,ハ,ヒも悪くない.(3)で逆数の分布を考えるのは,データ分析的ではないけれど,数学的な感覚を問うもので,良いと思いました.
「3」
確率,メンドクサイ.ルール把握できたら何とかなる?
ゲーム理論的で悪くないテーマだけど,ここでもこの処理量か・・・と萎える.
「4」
誘導に乗っていくと勝手に解ける.
処理はそんなに大変ではないかな.探求せずに解けるのはもったいない.
私は素直に誘導に乗れるタイプ(要するに,知識技能の不足)なので,苦労はなかった(笑)
「5」
接弦定理の逆.ちょっと前に中1にやったぞ,と思いながら,「後半と関係ないやんけ!?」と感じる.もちろん,どこかで使うだろうな,と想定しておく.
辺の長さの設定が変.BHで少し止まる.直角(内角と外角の二等分線だから)を使うのかな?と見たら,斜辺の中点に気付く!
比を使えば何とかなった.そして外接円の半径は,余弦定理&正弦定理?他の方法もある??
最後は,やはり接弦定理の逆でした.三平方.
IA,どの問題も時間の制約が無ければ,良い問題なんだけどなぁ・・・という感想でした.あぁ,もったいない.

ついでに宣伝.
IAは処理量が多くて,私の本からは少し離れているところもありますが,見たことない設定への対応という意味では,大いに役立つと思います.
ご活用ください.
   ⇓

2022年・灘中・1日目・算数[9]

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なかなか面白い問題です.
√3を使うと簡単に分かりますが・・・

【解1】

f:id:phi_math:20220129102316p:plain

ABとCDを延長して,交点Eをとると,角DAE=30°だから,二等辺三角形DAEができる.
三角定規形だから,BE=10,CE=5√3
AE=9で,AM=9/2
三角定規形だから,AD=3√3
よって,DE=3√3で,
 CD=5√3-3√3=2√3

よって,CDはDAの 2/3倍 ■

√3を使わずにやりたい!
比だけでいけるか?
ADとBCも延長して“相似”をたくさん作ることもできます(ぜひ,やってみてください)が,ここでは違う方法.
でっかい正三角形を作ると,Dが重心になっている!

【解2】

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AEが1辺の正三角形を図のように作る.
Dは中線FM,ENの交点だから,重心で
 ED:DN=2:1
また,三角形EAN,EBCが相似で相似比が9:10
よって,

 ED:DN:NC=6:3:1
ED=DAだから,
 AD:CD=6:4=3:2

よって,CDはDAの 2/3倍 ■

かっこいい!!
さて,最後.
灘中と言えば,“正三角形格子”が定番なんですよね・・・
下図のように小さな正三角形を配置していくと,Dはどこにあるでしょう?

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【解3】
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150°は図の方向に延びていることを意味する.
同じひし形の対角線の3個分と2個分だから,CDはDAの 2/3倍 ■

こんなことをされたら,せっかく考えてきた解法が台無しです(笑)
定番解法の威力,恐るべし!!

「条件付き確率」を直感で説明される気持ち悪さを解消したい!

1組のトランプから一枚抜き出して袋に入れます。
その後に残りから三枚抜き出してマークを見ると、すべて❤️でした。
この状況下で、一枚目のマークが❤️である確率はいくらでしょう?

最初に取り出す段階では、1/4の確率で
❤️
あとの三枚がすべて❤️は、なかなか起きないことですが、一枚目が❤️だったらさらに起こりにくくなりますね。
レアなことが起こったという事実があるなら、一枚目が❤️である可能性は低い気がしませんか?

そういうのを考えるのが条件付き確率。

「時間を逆転させて、先に三枚ですべて❤️のときに、次に一枚抜き出したのが❤️の確率」を考えても同じこと(ほんと?)で、残数の比率から10/49。

納得できますか?
それを詳しく分析しました(写真)。

後で三枚を抜き出すときに、トランプが表向きになっていて、三枚とも❤️を取り出すことが確率1で可能であれば、この理論は破綻します。
有名なモンティーホール問題(クイズ番組の演出をネタにした問題)と同じ構造ですね。

※モンティーホール問題については、この本に書きました。
   👇

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分数関数の最大値と言えば・・・

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授業しているとき,生徒の言うがままに解き進めていくと,写真の問題に行き着いた.

 3x/(2+x^2)の最大値は?

高2,文理両方の生徒が居る.理系は数Ⅲ既習で,数Ⅲで何でもやれるという万能感に浸る時期.

「文系がいるけども・・・」

と数Ⅲでやるかどうか.このクラスは

微分だね」

だけで笑いをとれるのが楽.
そう言うだけ言って,計算は止めた.

[数Ⅲ微分
 y=3x/(2+x^2)
商の微分を避けて敢えて分母を払って
 y(2+x^2)=3x
両辺をxで微分すると
 y'(2+x^2)+y(2x)=3
∴y'=(3-2xy)/(2+x^2)
   =(6-3x^2)/(2+x^2)^2
だから,x=√2,-√2で極値をもつ.
x→±∞でy→0だから,最大値はx=√2でとる.
最大値は3√2/4

☞数Ⅲで計算押しするときも,工夫はしたい!
 関係式からの「陰関数の微分」はけっこう使える!

さて,この状況,いわゆる逆手流の解法が受験業界では定石なのではないかと思います.
実は,私はあんまり好きじゃないです.
だって,明示的でないから.
その解法は,「yがある値になるかどうか?」を逐一チェックする方法.
でも現実にそれをやるのは無理だから,「どういう値は取りうるか?」と見ていく.
「y=kとなるか?」と問われたら,「xに何か代入したらkになるか?」と考えたら良く,「3x/(2+x^2)=kとなるxが求まるかどうか」を調べたら良い.
本問なら,2次方程式になるから,判別式で処理できる.

[定石?]
y=kとなる実数xが存在するkの条件(それは,y=kが取りうる値であるということ)を考える.
 3x/(2+x^2)=k
 kx^2-3x+2k=0 ‥‥①
xの方程式①が実数解をもつようなkの条件を考える.
①は,k≠0のときは2次方程式だが,k=0のときは1次方程式である.単純に判別式で処理することはできない.

・k=0のとき,
 0x^2-3x+0=0 ‥‥①
を解くとx=0で,実数xが存在するから,y=0は取りうる.

・k≠0のとき,①は2次方程式で,実数解をもつ条件は,判別式Dが0以上になること.
 D=9-8k^2
だから,条件は
 9-8k^2≧0 (k≠0)
∴-3/2√2≦k<0,0<k≦3/2√2

以上から,yの取りうる値の範囲は
 -3/2√2≦y≦3/2√2
で,最大値は3/2√2

☞最大値だけで良いのに,取りうる値の範囲まで求まる!
その辺が無駄な気がしませんか?

ということで考えたのが,写真の2つの解法でした.
後は写真の方で見ておいてください.

マニア向け!立方体の方程式

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 |x|≦1かつ|y|≦1かつ|z|≦1

と書けば立方体を表すわけですが,ぜんぜん楽しくないですね.
例えば,

 |x-1|+|x+1|=2 ……①

は,-1≦x≦1を表す(後述)のですから,これを利用してしまえばよいのです.

 {|x-1|+|x+1|-2}^2+{|y-1|+|y+1|-2}^2+{|z-1|+|z+1|-2}^2=0

は立方体です.なぜなら,0以上の3数の和が0なのだから,すべて0となり,

 |x-1|+|x+1|=2 かつ |y-1|+|y+1|=2 かつ |z-1|+|z+1|=2

∴ -1≦x≦1 かつ -1≦y≦1 かつ -1≦z≦1

を表しているからです.


<①の補足>

①は,x<-1においては

 -x+1-x-1=2 つまり x=-1

で不成立.同様にしてx>1でも不成立.-1≦x≦1においては

 -x+1+x+1=2 つまり 2=2

で,すべてのxで成立.それゆえ,①は-1≦x≦1と同じ意味です.

これで満足していては,私ではありません(笑)

 

ガウス記号

 [x]=(x以下の最大の整数)

を用いても表せるのではないか,と考えたのです.いわゆる整数部分です.
実数xについて

 [x]=0 ⇔ 0≦x<1

を利用します.

 

写真1つ目の式.

[|x|]これは,|x|の整数部分だから値は0以上.0以上の3数の和が0なので,

 [|x|]=0 かつ [|y|]=0 かつ [|z|]=0

∴ 0≦|x|<1 かつ 0≦|y|<1 かつ 0≦|z|<1

つまり,

 -1<x<1 かつ -1<y<1 かつ -1<z<1

立方体になりましたね.

ただし・・・

 【皮ナシ】

です.表面の点は入っていません.

 

ガウス記号は整数部分を表しますが,y=[x]という関数はfloor関数と言います.床のfloorです.整数ごとに値を区切り,下の値にしてしまうからです.

一方で,天井関数というものもあります.ceiling関数で,それは上の値にしてしまうものです.mを任意の整数とするとき,実数xについて
 ceilimg(x)=m ⇔ m-1<x≦m

 ⇔ -m≦-x<-m+1

 ⇔ floor(-x)=-m

となります.だから,

 ceilimg(x)=-[-x]

です.

 ceilimg(2.5)=3

 -[-2.5]=-(-3)=3

 

これを使ってみたらどうでしょう?そうして考えたのが写真の2つ目です.

今回は2乗の和が0だから,ぜんぶ0.

実数xについて

 [1-|x|]=0 ⇔ 0≦1-|x|<1

 ⇔ 0<|x|≦1

となります.だから,写真の式は

 0<|x|≦1 かつ 0<|y|≦1 かつ 0<|z|≦1

です.立方体から,3平面x=0とy=0とz=0が除かれています.

これを例えるなら

 【サイの目切り】

です!

 

でも・・・どうせなら完全な立方体と作りたくありませんか?
そうして考えたのが3つ目です.
けっこう面白いですよ.生徒からは絶賛してもらいました(笑)

 

 [2(1-|x|)/3]=0

を解いてみてください!実数xについて

 [2(1-|x|)/3]=0 ⇔ 0≦2(1-|x|)/3<1

 ⇔ 0≦2(1-|x|)<3 ⇔ 0≦1-|x| かつ 1-|x|<3/2

 ⇔ -1/2<|x|≦1

で,これは,0≦|x|≦1と同じ意味です!

左側を負の数にして0以上を作る.

これ,けっこう面白くないですか?

マニア向けですけど(笑)

 

ということで,最後が【完全なる立方体】でした.