yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

【吉田信夫のブログへ,ようこそ!】(執筆書籍一覧)

吉田信夫のブログへようこそ.

 

数学ネタばかりになると思いますが,お楽しみください.

 

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応援,よろしくお願いいたします.

100歳の誕生日まで続けるというつもりで,投稿日を設定しました(笑)

 

2024東大数学(理科) in Yoshida's Math World

ちょっといきった名前のYouTubeライブをやりました.

 

2024東大数学(理科) in Yoshida's Math World

 

6問すべてについて,普通じゃない(?)解説をしました.


考えている時点から,個人的にはむっちゃ面白い内容でした.
考えているとネタが溢れ出してきて止まらず,眠れないくらい.
 やっぱり数学は楽しい!!!こういう感覚は久しぶりでした.

注)教育的な観点は無です!ただ私が楽しい.


実際のライブでは,ちょっと予習不足でミスったところはありましたが,まあまあかなと思います.
久々に本気で数学を話しました.

アーカイブがアップロードされております.
1時間45分くらいあるのでなかなか見てもらいにくいですが,ちびちびとご覧になってください.

https://youtube.com/watch?v=0wjUEeX_FiA&t=77s

12,024

How to Solve 東大数学 2/25

2/25(日)


東大の数学の試験本番が始まる14時から

渋谷で東大数学イベントを行います(高1,2).

 

 How to

 Solve

 東大数学

 

私,吉田が主催

 

【言語としての数学】とは何かをお伝えし,

東大数学の過去問を一緒に解きながら,

東大数学の土俵への立ち方をレクチャーしたいと思っています.

 

参加無料!
ぜひお越しください.

 

X

Xのロゴっぽいものを表す方程式.

(もう少し縦長の方がそれっぽいか・・・)

 

 |7𝑦+8𝑥|+|9𝑦+8𝑥|-16=0 …①

 (𝑦-𝑥)²+(|2|𝑥|-1|+|2|𝑥|-16|-15)²=0 …②
の和集合.
①が平行四辺形部分.
②は線分のところで,2乗の和が0という式だから,
 𝑦-𝑥=0 …③

 |2|𝑥|-1|+|2|𝑥|-16|-15=0 …④
の共通部分.

④は,
 1/2≦|𝑥|≦8
を表す.なぜなら,|2|𝑥|-1|+|2|𝑥|-16|が
・|𝑥|<1/2のとき -(2|𝑥|-1)-(2|𝑥|-16)=17-4|𝑥|>15
・1/2≦|𝑥|≦8のとき (2|𝑥|-1)-(2|𝑥|-16)=15
・|𝑥|>8のとき (2|𝑥|-1)+(2|𝑥|-16)=4|𝑥|-17>15
となるから.
③と④の共通部分である②は,
 𝑦=𝑥(1/2≦|𝑥|≦8)
で,2つの線分の和集合.

①は?
 |7𝑦+8𝑥|+|9𝑦+8𝑥|-16=0 …①
7𝑦+8𝑥と9𝑦+8𝑥の符号により,次の4つのいずれかになる.
1)(7𝑦+8𝑥)+(9𝑦+8𝑥)-16=0 ∴𝑥+𝑦=1
2)(7𝑦+8𝑥)-(9𝑦+8𝑥)-16=0 ∴𝑦=-8
3)-(7𝑦+8𝑥)+(9𝑦+8𝑥)-16=0 ∴𝑦=8
4)-(7𝑦+8𝑥)-(9𝑦+8𝑥)-16=0 ∴𝑥+𝑦=-1
これらが平行四辺形の4辺に対応している!
4頂点が(-9,8),(-7,8),(7,-8),(9,-8)

①は正方形の方程式|𝑥|+|𝑦|=1の応用です.

②の1/2≦|𝑥|≦8は,𝑦=𝑥と𝑥+𝑦=1,𝑥+𝑦=-1の交点(1/2,1/2),(-1/2,-1/2)が範囲の端になるように設定しています.

不等式の解の話の「最終回」

数学における認知の個人差・多様性というものについて考えました.
真実は1つですが,それにみんなが到達しているのではなく,その途中にあるのだと思います.

『2次不等式x^2-3x+2<0を解くと1<x<2』の

  1<x<2…①

にどんな意味を与えていますか?

1.そう答えるもの
2.元の式の数xは①を満たす
3.xに代入して元の式を成り立たせる数は,①を満たす数
4.{x|1<x<2}の略記,開区間(1,2)
5.適宜選択
 

「数学の認知は,けっこう個人差・多様性があるのではないか?」と思いました.

この中で一番真実に近いのは,4です.
それは間違いありませんが,学習段階などにより,この認知であるからアホだ,とか言うものではありません.


初学時には,鵜呑みにすることもあるでしょう.
意味を考えるようになって,正しいと自分で判断するようにもなるでしょう.
認知が揺らぐときにも出会うし,何かを通じて「確信」を持つこともある.
その確信を主張し過ぎたら,人に悪影響を与えるかも知れない.
真実は一つかも知れないが,人がそれを知ることができるかどうかは分からない.
数学についてのすべての認知が一致している他人はおそらく居ない.
最終的には,認知の違いを超えてすべてを許容するようになれたら良いな.
数学愛って,こういうことかもな,と思いました.
日々の学びに感謝します.


さらに感謝なことに,論理の専門家から,ご意見をいただきました.


これまでの私の主張は,認知4にもとづき,集合ありきですべてを議論したものです.
 集合と条件を明確に分断すべきである,
 だから,「かつ」でなく「共通部分」とすべきだ,
 だから,「かつ」表記は誤りだ,
という主張.

しかし,6の認知により,集合と条件を同一視することにしたから,私の主張は覆りました.
条件としてより根元的な「1<xかつx<2」の方が正確な表現ということになります.

条件と集合の分断が大事なのではなく,意味の区別が明確にできることが一番大事なことでした.
式だけでなく,しっかり言葉を添えて書こう,と思いました.


[まとめ]

 集合{x | 1<x ⋀ x<2 }を条件表示した,

 集合1<x ⋀ x<2を略記した,

 集合1<x<2

というのが,6の見方.


4に執着した見方(昨日までの私)が,
 区間としての(1,2)が解としてあって,

 それを条件で略記したのが,解としての区間1<x<2であって,

 それを「かつ」で分けるなら(1,∞)∩(-∞,2)であって,

 区間「1<x ⋀ x<2」ではない.

 「区間1<xと区間x<2」の共通部分である.


大人がもがく姿は,子どもの真の学びの助けになるだろうと思い,恥を忍んで書いてみました.

不等式の解の話の続き・・・

これの続きです
  ⇓

yoshidanobuo.hateblo.jp

 

「条件と範囲」

𝑙𝑜𝑔(𝑥-1)+𝑙𝑜𝑔(3-𝑥)の真数条件について,まず考えてみます.


『𝑙𝑜𝑔(𝑥-1)+𝑙𝑜𝑔(3-𝑥)が定義されるような実数𝑥の条件(𝑙𝑜𝑔を用いずに)』であれば,「𝑥>1かつ𝑥<3」でも「1<𝑥<3」でも良いように思います.
「𝑥>1かつ𝑥<3」⇔「1<𝑥<3」で,前者が後者の定義に当たるとも言えます.


では,『…𝑥の範囲』だったら,どうでしょう?
私だったら「1<𝑥<3」と答えます.


範囲としての「1<𝑥<3」は{𝑥|1<𝑥<3}を表すもの.開区間(1,3)のことです.

・上記の定義により,(1,∞)∩(-∞,3)は(1,3)と一致しています.
・「𝑥>1かつ𝑥<3」によって{𝑥|𝑥>1かつ𝑥<3}つまり(1,∞)∩(-∞,3)を表すことになっているのでしょうか?


このことを考えるヒントが,和集合にあります.

不等式の解で用いる表記「𝑥<1,3<𝑥」について,詳しく考えます.
何となく受け入れている人が多いのではないかと思いますが,いかがでしょうか?


教科書の記述によると,「𝑥<1,3<𝑥」は「𝑥<1の範囲と3<𝑥の範囲を合わせた範囲」です.
(絶対値の不等式のところに書いてありました)
つまり,(-∞,1)∪(3,∞)であり,{𝑥|𝑥<1または3<𝑥}です.
条件「𝑥<1または3<𝑥」が表わす範囲を,別の記号を用いて「𝑥<1,3<𝑥」と表しています.


「または」と書くのが面倒だからでしょうか?


そうではない,と私は思います.
「𝑥<1」と「3<𝑥」がそれぞれ範囲を表すものと見ることもできるので,「𝑥<1または3<𝑥」によって,『「𝑥<1」と「3<𝑥」のどっちかが答です』と書いている文章と見ることもできます.
誤解を避けるためには『「𝑥<1または3<𝑥」が表わす範囲』と書けば良いですが,長いです.


範囲として書くときは,(-∞,1)または(3,∞)ではなく(-∞,1)∪(3,∞).
条件なら「𝑥∈(-∞,1)または𝑥∈(3,∞)」ですが,範囲としては「(-∞,1)と(3,∞)の和集合」です.


この辺りの様々な事情を考慮して編み出した記述法が「𝑥<1,3<𝑥」なのではないか,と私は思っています.


翻って,共通部分.


条件としては,「𝑥>1かつ𝑥<3」⇔「1<𝑥<3」です.
範囲としては,(1,∞)∩(-∞,3)=(1,3)です.


・「かつ」「または」は,条件をつなぐもの.
・条件によって範囲を表すことにしている.
・範囲を表すときにも「かつ」「または」を用いるか?
 ➤「または」には,別記号「,」を導入している


「,」を導入しているからといって,「または」が良くないとは言い切れない.
だから,「かつ」が良くないとも言い切れない.
言い切れないからOKにする?
すべて腹落ちした状態にして,確実にOKな書き方をしてもらうのが,ベストだろうと思います.
でも,すべてにおいてそれを生徒に求めることは現実的ではなく,匙加減が難しいと思います.

****

教科書に記述だけに従う必要はない,というのは私も同感で,私もよく不従順になります.
でも,万が一,生徒が細かい記号の使い分けに疑問をもったときに,一貫して説明する方法は,上記の教科書流に倣うのが良いと思っています.
屁理屈好きな私にとっては,楽しいからやっているというのもありますけれど.

※言うまでもないと思いますが,問題を解いたり,答案を作るときに,無条件でこれに従え,という指導は,好ましくないです.

「1<x<2」が正解のときに「1<xかつx<2」と答えたら3点満点の何点?

最近,Twitterをやるようになりました.

【2次不等式の基本的な計算問題】「1<x<2」が正解のときに「1<xかつx<2」と答えたら3点満点の何点?

というお題でアンケートされている方がいました.

難しい質問だなぁ,と思いました.

1  ≦𝑥⁴<16の解を「1≦|x|<2」と書いてしまう私ですが,Twitterに自分が書いたことによると「-2<x≦-1, 1≦x<2」じゃないと解とは言えないことになります.
範囲を明示した条件のみが,「その条件を満たすxの集まり」と書くことの代用品と認められているからです.
ちなみに,いまの書き方での「,」は,「条件-2<x≦-1または1≦x<2を満たすxの集まり」を表し,「または」に対応する.
集合(区間,範囲)としては「(-2,-1]と[1,2)を合わせた区間(和集合)」を表し,「と」に対応する.
(「区間-2<x≦-1と区間1≦x<2の和集合」と日本語では書けても,-2<x≦-1∪1≦x<2はダメでしょうね)
1つの式x>3が,
条件だったり,
解を表すものだったり,
範囲を表すものだったり,
数として実在するが3より大きいという事実を述べているものだったり,
してしまいます.
論理を重んじて主観を排するはずの数学が,実は,決めつけと忖度・曖昧さに満ちているのですね.
理系的な空気の読み方を強要されると,意味を重んじる文系派の人が困ってしまう.
(逆もしかり?)
式は便利だけど,日本語を添えずに式だけ書かれたら解釈が分かれる可能性がある.

 

 

「標本平均」と「その標本での平均」の違いが分かりにくい

「確率変数」は「確率分布」を考える対象であるが,「確率変数」を構成するには,「確率」が必要で,そのためには「事象」が必要で,そもそも「試行」を定めないと,始まらない.
その感覚がないと,この違いは分かりにくいようだ.

「標本平均」は1つのまとまった言葉で,それは,「標本を作る試行において,各事象(標本)に,その平均を対応させるルール」の略である,と思えばよい.
数ある標本の作り方の中で,具体的に一つの標本を作ると,「標本平均」の実現値としての「その標本の平均値」が定まる.サイコロを実際に振ったら,出る目(確率変数「出目」の実現値)が定まるのと同様である.
***
実践編として,確率論とデータの分析の違い,および,信頼区間の正しい解釈も少し.
標本平均(と呼ばれる確率変数)の期待値と分散を考えるのは,確率論の話.
  ⇓
標本平均の期待値は,母平均(未知であっても,あくまで定数)と一致する.
  ⇓
標本平均の理論をもとに,信頼区間を作ることができる.
  ⇓
95%信頼区間の両端にあるものも,確率変数!
(その区間に母平均が入るかどうかは,命題ではなく,条件に相当する.成り立つか,成り立たないか,が論点ではなく,成り立つのがどういうときか,を考えるもの)

具体的な標本において,平均値を求めるのは,標本平均の実現値を求めること(データの分析における平均,「その標本での平均値」).
  ⇓
「その標本での平均値」を母平均の推定値として,信頼区間というものを考えるのだが・・・
それは,上記の「両端が確率変数である状態の信頼区間」に「その標本での平均値」を代入することをいい,「その標本での信頼区間」とでもいうべきものが得られる.
➤「その信頼区間に母平均が含まれる確率が95%」という意味ではない!!
 だって,母平均は定数なのだから.
 「その標本での信頼区間」に母平均が含まれるかどうかは,確定する(命題!)
  ⇓
標本をたくさん(例えば100個)作ったら,「その標本での信頼区間」もたくさん(100個)できる.
それらの中で,母平均を含むものが,総数の95%である(95個)ということである.

つまり・・・
・「両端が確率変数である状態の信頼区間に,母平均が含まれる」は,「条件」
・具体的な標本を代入すると,「両端が定数になった区間になって,そこに母平均が含まれる」は,「命題」
・たくさんある具体的な標本たちのうち,代入して「真」になるものは,全体の95%である.


 推定量(確率変数)

 推定値(実現した値)
の違いが分かりにくさの原因なのですよね.

 両端を確率変数とする信頼区間

 実現値を代入した信頼区間
にも,(あまり述べられないけれど)大きな違いがあるのだと思います.

二項定理によらない 𝑙𝑖𝑚(𝑛→∞)𝑛/2ⁿ

「二項定理」と言ってくれない人と一緒に・・・

やっていたら導けた😆


何が面白いかと言うと,この方法と置き換えを経由して

 lim(x→∞)logx/x=0

も導けるということです!
つまり,xより発散速度が本質的に遅いもの(√xなど)によるlogxの評価が絶対に必要,というわけではない!

この素晴らしさ,共感いただけますかね??

方程式を如何にとらえるか

先日の中1の授業での板書.

xが1と等しい,のではない!
xに1を代入したときのみ,正しい式になる,ということ.
変な式になるだけで,1以外も代入できるのである.

 
しかし,ある方程式の解である数は,ちゃんと値が確定し,存在している.
「方程式(条件)」と「解が満たす関係式(命題)」は,明確に区別する.

移項という操作しかやらないことが,マニュアル数学の始まりだろうと思います.
 「等しいものに同じものを加えても,等しい」
 「等しいものに等しいものを加えても,等しい」
などを公理としてきちんと構成していくことは,中1でも可能なのですね.

「等しい」と「同じ」が同じではないことも,大事なところです.


【問.3倍して1を加えた値と,5から引いた値が等しくなるような数は?】

それをaと表すと,aは
 3a+1=-a+5 ☜成り立つ式
を満たす数である.
つまり,xについての方程式
 3x+1=-x+5 ☜成り立たせる数は?という問い
の解である.
これは,
 x=1
と同じ方程式.
(☝ xに何を代入したら正しい式になるか?という問いかけ)
これの解は1である.
(☝ 「x=1が解」ではない!ただし,「1が解である」ことを「解はx=1」と表現することが認められている)
よって,aは1であることが分かる.
つまり,a=1である.
(☝ これは,数としてaは1と等しい,という意味である!)
    *     *

【問.aは定数.方程式 2x+3a=1の解と方程式 3x+a=-2の解が一致するようなaは?】
 
解をbと表すことにすると,
 2b+3a=1 と  3b+a=-2
の両方が成り立つ.(b,a)は,連立方程式
 2x+3y=1 ,  3x+y=-2
の解である.解は
 (x,y)=(-1,1)
だから,a=1である.
    *     *

この意識が無いと,次のようになるとお手上げになる.

【問.aは定数.方程式 2x+3a=1の解に1を加えたら方程式 3x+a=8の解になる.そのようなaは?】
 
1つ目の方程式の解をbと表すことにすると,
 2b+3a=1 と  3(b+1)+a=8
の両方が成り立つ.(b,a)は,連立方程式
 2x+3y=1 ,  3x+y=5
の解である.解は
 (x,y)=(2,-1)
だから,a=-1である.
    *     *

「aが満たす方程式」という言い方も大事だが,「定数aが解になるような,変数xについての方程式」という方が正確であろう.
常にこれを意識していると混乱しそうになるけれど,いざというときには,ここに立ち返れるようになって欲しいな,と思う.

「すべて」「任意」「ある」による混乱について ➤お茶ゼミ√+のTwitter連動企画

➤こたえはこちらへ

https://twitter.com/ochazemi/status/1634522193261625344?cxt=HHwWgIDQrcrR_q4tAAAA

➤こたえはこちらへ

https://twitter.com/ochazemi/status/1635904530016763906?cxt=HHwWhIDQ4ZWg87MtAAAA

 

「すべて」「任意」「ある」は問題をややこしくする定番ですが,作る側が混乱していることもあります.
入試問題でも模試の問題でも,けっこう雑な問題文が多いのですよね.
第1弾は分かりにくさの実感,第2弾は問題文を変えてみよう,です.


弊社・お茶ゼミ√+は現在Twitter強化中です.
私の数学ネタも載せていくので,アカウントお持ちの方,気に入っていただけたら,ぜひフォロー,いいね,リツイートなど,お願いいたします.

ちょっとした問題

これだけ見ても,何をやりたいのかは分かりにくいですが・・・

あることを考えていて現れました.
授業中にここまでやれたら良かったのですけれど,晩御飯を食べているときに思いつきましたw

2023共通テスト・数学・追試についての考察

 

「共通テスト数学の平均点を予想する公式」を編み出しております.
それによると,
 IA=41.2~44.2
 ⅡB=53.5~56.8
となりました.
大きく外れることはないと思います.

※詳細はインスタを見てください.

https://www.instagram.com/p/CoSPd44pJdl/


本試験よりも少し低くなるのは毎年のことです.
では,追試の中身はどうだったのでしょう?

結論から言うと,問題の質は,本試験とは大きく違っています!!
私のイメージする共通テストを具現化したようなもので,共通テストが,どんどん私の本に近づいてきています(笑)

  

 

「意味」がキーワードとなりそうです.

  =ⅠA=

第1問
〔1〕
普通の問題ですが,「範囲の幅」というここだけの用語を定義して,それの考察をさせるところが,共通テストらしいところ.
意味が分かっていないと,後半は解けない.

〔2〕
正弦の値が2倍のとき,対辺の比も分かる.
意味が分かっていないと,セソやヒフは考えにくい.
また,後半では分数が現れるが,うまく消えて2次関数になる.単元融合は,共通テストで今後も増えてくると思われる.

第2問
〔1〕
共通テストを象徴する問題.
数学の実用がテーマで,知っている範囲内でモデルを作り,検討する場を想定.
問題に入る前のリード文が長く,問題を解くのに使う要素がほぼ無い.また,与えられた数値などは鵜呑みにして進める.数値の意味だけ把握する.
煩雑な連立方程式から始まり,諦めそうになるが,これが出来ていなくても,後に影響なし.
エオは判断,カ~スは意味理解+計算,セソタは定性的(計算でやると無理,意味が分かれば易しい).
本文のほぼすべてを読み流すことが大事.
☞y=(-ax+b)(x-80)-5000の形での考察に発展するかと思ったが,そこまでは行かず.


〔2〕
データの分析だが,チツは定義の意味,テトは定義通りの計算


〔3〕
データをテーマにした数字遊びのような問題(私の本に多い.相関係数が0の意味)
定義通りに計算する.

※〔2〕〔3〕を通じて,データを分析してはおらず,箱ひげ図も散布図もない斬新な問題(私の本に多い)!


第3問
中学受験算数における経路問題の典型解法(1,1解法と呼ばれることもある).
いわゆる振り返りにあたる(2)は,少しややこしい.
昨年のような“受験者に投げっぱなし”の振り返りでなく,発展もあって,ボリュームあり.
条件付き確率の「意味」を問われている(定義でなく,意味)


第4問
同じことを4回やらされる,振り返りが“くどい”タイプ(共通テスト的).
言葉として「必要十分条件」が登場.
思考のギャップを埋める部分についての誘導や気付きの誘発は少ない.
それを“くどさ”でカバーしているせいで,長い・・・


第5問
メネラウス.チェバ,面積比,内接円の接点など,基本的.
数学の問題らしい問題.
気付きも少し必要で,万人が良い問題だとコメントすると思われる.

 

  =ⅡB=

第1問
〔1〕
実係数多項式で共役複素数の性質を,割り算で考察
P(x)の前提が(1)に入る前にあって,ページの変わった(2)では忘れそう.
定性的にポイントを押さえたら,易しいが,キの選択肢はあまり好ましくない(考えてから探すのでなく,選択肢から探すようになっているのが残念).


〔2〕
共通テスト的.
数学の実用がテーマで,知っている範囲内でモデルを作り,検討する場を想定.
ついに常用対数表が登場した.
対数の意味と表の読み取り(私の本的であるw).
細かく読むと大変なので,ある程度の意味を押さえながら進めていく感じになる.
「実用・長文の問題への対策」というものが出来上がりそうな感じがする.


第2問
〔1〕
箱を作って容積を最大にする問題.
(2)(3)は蓋を作るという設定の意味を読み取り,式を作ったら,前に作った式と関係が見いだせる.
ごく簡単な法則だが,それを読み取って,正しく判断することができるか.
ここでも,意味理解が大事.


〔2〕
ベルヌーイ多項式(大学で登場)という有名なものがテーマ.
高校生にとっては,恒等式との融合.
等号の意味をしっかり把握できているか(第1問〔1〕も恒等式).
数列と本格的に融合するのは困難ということで,実際に和を計算することはせず,式の意味から,「これを計算したらわかる」で終わっている.やり切った感は少ない.


第3問
統計ですが,既存の問題との乖離が大きく,とても良い問題と私は思います.
確率分布,確率変数,変換の定義と意味と性質.
記憶が正しいかを検証するというテーマも面白くて,新課程で範囲となる「仮説検定」を見据えていることがよく分かる.
意味を考えたらツテとトナがまったく同じであると,自信をもって答えたい!


第4問
数列の増減がテーマ.
等差数列の漸化式から一般項,和,および,それらの増減.
始めて負になるのは?という設問は,懐かしい感じがした.
後半は1次分数変換タイプの漸化式.少し変わった誘導.
数列を点としてプロットするのは,目新しい.
逆数の意味,増減,上限などの観点から,意味判断で選ぶもので,収束する様子を目で見る感じ.


第5問
普通のベクトルだが,2乗したために,考察が必要になる問題.
ⅠA第1問〔2〕と類似の,意味理解できないと答えにくいのがトナニ.
(3)は1/tの挙動を調べる問題で.媒介変数表示の直線の意味が分かっていないと
解けず,共通テストではかなり目新しい(初見への対応).
最後は除外点の図形的意味を探る設問であるが,点を求めると,選択肢から選ぶ問題になってしますのがもったいない.



こうやって書くと,点を取らせることを重視した本試験と比べて,本来の作成意図にかなり合致した問題セットになっていると思われる.
作ってみると分かりますが,これだけの問題を作るのは,本当に大変なことです.
ご苦労さまでした,と言いたいです.
(普通の問題でも良いんじゃない?という意味も込めて)

 

改めて・・・私のイメージする共通テストを具現化したようなもので,共通テストが,どんどん私の本に近づいてきています!
学校で使ってもらいたいな・・・

  

【ピーマン分類法】 2023共通テストより

【ピーマン分類法】

共通テストで目を引いた【ピーマン分類法】.
統計は,もうすぐ必須になるにも関わらず,多くの先生方が学習を避けている分野です.
拙著などどうですか?
    ☟
 
本当は,それよりもこっちの方が断然オススメです.
    ☟
 

ピーマンを通じて,統計を少し身近に感じてもらいたく,解説してみようと思います.


大量のピーマンがあります.
重さの平均は30.0g,標準偏差は3.6です.
これらのイメージは,正規分布に従っていると仮定すれば

 全体の68%が30-3.6~30+3.6に含まれる

を主要イメージとして,

 全体の38%が30-1.8~30+1.8に含まれる
 全体の95%が30-7.2~30+7.2に含まれる

という感じです.
個数が十分多いと,正規分布に近似的に従うことが知られています(中心極限定理という)ので,よっぽど偏りのある分布でない限り,だいたい当たります.
このイメージを利用したら偏差値の意味も分かってきます・

上記の重さを偏差値で表すと,1つ目が40~60,2つ目が45~55,3つ目が30~70です.
偏差値70以上と言うのは,その母集団において上位2.5%くらいというイメージです.
また,偏差値45~55が全体の約1/3なので,45以下,および,55以上もだいたい全体の1/3です.集団を3分割する基準はこのようになっています.だから,入試倍率が3倍であれば,合格するのに全体の上位1/3に入る必要があり,それは,受験者全体を母集団としたときに偏差値55を目指すことに相当します.意外と低いことに驚きます.


さて,大量のピーマンから無作為に2個選んで袋に詰めて,販売します.
公平性のために,1袋ずつの重さの分散を小さくしなければなりません.
そこで考えたのが【ピーマン分類法】です.


【ピーマン分類法】***

無作為に抽出したいくつかのピーマンについて,重さが30.0g以下のときをSサイズ,30.0gを超えるときはLサイズと分類する.そして,分類されたピーマンからSサイズとLサイズのピーマンを一つずつ選び,ピーマン2個を1組とした袋を作る.

***


25袋作りたいとします.

何個のピーマンを無作為に抽出しましょうか?


無駄なく50個ではどうでしょう?
S,Lがちょうど25個ずつになっていたら,そのときに限り,25袋を作ることができます.
そうなる確率は・・・
 (50,25)/2^50
ここで,(50,25)は50個から25個を選ぶ選び方の個数(組合せの記号 C で表すもの)です.
これを計算すると,0.1122……であり,11%です.


意外と高確率である気もしますが,9割ほどの確率で再抽出する必要があって,逆に無駄ですね.


では,何個選べば,25袋作れる確率を95%以上にできるでしょう?

上記の通り,標準偏差2つ分を両サイドにとれば,約95%です.正確には
 平均±1.96×標準偏差
です(正規分布表より).
でも,計算の手間を減らすために,
 平均±2×標準偏差
で考えることにします.


50+k個選ぶことにします.
Sサイズ,Lサイズのピーマンがともに25個以上含まれる確率を考えます.
「二項分布の性質」と「正規分布での近似可能性」と「標準正規分布への変換」を利用します(ここが,統計として理論を学ぶべきところ).


Lサイズが25個以上とは,
  S+L=50+k
だから,Sサイズが50+k-25=25+k個以下であると言い換えられます.
Sサイズが25個以上25+k個以下になる確率を考えます.
「二項分布の性質」から,Sサイズの個数の平均が(50+k)/2で,標準偏差が√(50+k)/2と分かります.
同じ分布の「正規分布での近似が可能」なので,
 Y={(Sサイズの個数)-(平均)}/(標準偏差)
が「標準正規分布」になります.


<補足>
標準正規分布とは,平均が0で,標準偏差が1の正規分布ですから,
 平均±2×標準偏差
というのがすごく分かりやすいです.
-2以上2以下ということです.
その範囲に対応する確率を,正規分布の表を用いて求めると.約0.95になっています.


 25≦(Sサイズの個数)≦25+k
は,Yの範囲として
 -k/√(50+k)≦Y≦k/√(50+k)
と書けるので,これが95%の範囲
 -2≦Y≦2
を含んでいれば良いことになります.

求めるkの条件は,
 k/√(50+k)≧2
であり,少し計算すると,k≧17と分かります.
 50+17=67
67個選べば,95%以上の確率で25袋を作ることができます.


なお,ここの計算では,
 k/√(50+k)≧2
の両辺を2乗して得られる2次不等式を考えます.
それを解くと√51が現れるので,7.14という近似値が与えられています.
しかし,整数値を考えるだけなので,
 k^2≧4k+200
にいくらか代入すればOKです.14^2=196ですが,4kの分だけもっと大きくすべきで,k=16で不成立,k=17で成立することがわかります.

こういう感覚は,共通テスト全般で求められています.