yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

方程式を如何にとらえるか

先日の中1の授業での板書.

xが1と等しい,のではない!
xに1を代入したときのみ,正しい式になる,ということ.
変な式になるだけで,1以外も代入できるのである.

 
しかし,ある方程式の解である数は,ちゃんと値が確定し,存在している.
「方程式(条件)」と「解が満たす関係式(命題)」は,明確に区別する.

移項という操作しかやらないことが,マニュアル数学の始まりだろうと思います.
 「等しいものに同じものを加えても,等しい」
 「等しいものに等しいものを加えても,等しい」
などを公理としてきちんと構成していくことは,中1でも可能なのですね.

「等しい」と「同じ」が同じではないことも,大事なところです.


【問.3倍して1を加えた値と,5から引いた値が等しくなるような数は?】

それをaと表すと,aは
 3a+1=-a+5 ☜成り立つ式
を満たす数である.
つまり,xについての方程式
 3x+1=-x+5 ☜成り立たせる数は?という問い
の解である.
これは,
 x=1
と同じ方程式.
(☝ xに何を代入したら正しい式になるか?という問いかけ)
これの解は1である.
(☝ 「x=1が解」ではない!ただし,「1が解である」ことを「解はx=1」と表現することが認められている)
よって,aは1であることが分かる.
つまり,a=1である.
(☝ これは,数としてaは1と等しい,という意味である!)
    *     *

【問.aは定数.方程式 2x+3a=1の解と方程式 3x+a=-2の解が一致するようなaは?】
 
解をbと表すことにすると,
 2b+3a=1 と  3b+a=-2
の両方が成り立つ.(b,a)は,連立方程式
 2x+3y=1 ,  3x+y=-2
の解である.解は
 (x,y)=(-1,1)
だから,a=1である.
    *     *

この意識が無いと,次のようになるとお手上げになる.

【問.aは定数.方程式 2x+3a=1の解に1を加えたら方程式 3x+a=8の解になる.そのようなaは?】
 
1つ目の方程式の解をbと表すことにすると,
 2b+3a=1 と  3(b+1)+a=8
の両方が成り立つ.(b,a)は,連立方程式
 2x+3y=1 ,  3x+y=5
の解である.解は
 (x,y)=(2,-1)
だから,a=-1である.
    *     *

「aが満たす方程式」という言い方も大事だが,「定数aが解になるような,変数xについての方程式」という方が正確であろう.
常にこれを意識していると混乱しそうになるけれど,いざというときには,ここに立ち返れるようになって欲しいな,と思う.