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この主張以外の受け付けない,という趣旨ではなく,±を雑に扱うと危険である,というのが趣旨です.
言い切る口調で書きますが,広い心で読んでください.
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「|x|って何?」と聞いたら「±x」と返ってくることがあります.
関数としての|x|を扱っていてグラフを考えていたら,y=|x|とy=±xは別の曲線を描きます.
でも,ちょっと考えると・・・
①方程式|x|=2を解くのに
±x=2
∴x=±2
②不等式|x|>2を解くのに
±x>2
∴x>2,-x>2
つまり x<-2,2<x
③不等式|x|<2を解くのに
±x<2
∴x<2,-x<2
つまり -2<x<-2
となるわけです.
何にも問題ないのでは???
いえいえ,よく見ると,①,②では,条件として,±を“または”で扱っていますが,③では“かつ”になっています!
①,②と同じように③を解くと,
x<2 または -x<2
∴ xは実数
となってしまい,|x|<2の解は「すべての実数」になってしまいます.
±は,条件としては,“または”であると思います.
“実数についての条件”として,
|x|=±x
は,
|x|=x または |x|=-x
と同値であると考えられます(「|x|=x または -x」ではない!).
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※ここがウヤムヤになっているのが高校数学なのではないかと思います
この条件(=変数xに実数を代入すると命題になるもの)は,
・x=1のとき,
|1|=1 または |1|=-1 …真の命題
・x=-1のとき,
|-1|=-1 または |-1|=1 …真の命題
から分かるように,
「すべての実数xで成立」
となります!
2つの命題(=真偽の定まる数学的な式や文)p,qについて,「p または qが真」であるのは,「pが真,qが真」または「pが真,qが偽」または「pが偽,qが真」のときであるからです.
もし生徒が,実数についての条件として「|x|=±x」と言っていたら,「そうだね」と私は答えるべきなのです.
条件におけるイコールは,「左辺と右辺が同じものを表す」という意味ではなくて,xに代入するごとに「左辺と右辺が同じものを表すかをチェックせよ」という意味なのですよね.
だから,“数学的な対象”として,|x|と±xはまったくの別物ですが,条件としては「|x|=±x」が常に成り立ってしまうと思います.
だから,すべてのxについて「|x|=±x」が成り立つけれども,2つの曲線y=|x|とy=±xはまったくの別物になってしまいます.
前者は
半直線 y=x (x≧0)
と
半直線 y=-x (x≦0)
の和集合.
後者は
直線 y=x (x≧0)
と
直線 y=-x (x≦0)
の和集合.
xについての条件として「|x|=±x」の真理集合は,実数全体の集合.
x,yについての条件として「y=|x|」と「y=±x」は真理集合が異なっているけれど,それらの共通部分をx方向に正射影するとx軸全体になってしまう,というのが上記のイメージになります.
蛇足ながら・・・
実数についての条件として「|x|=±x」は常に成り立ち,「-|x|=±x」も常に成り立ちますが,「|x|=-|x|」の真理集合は{0}になってしまいます.
条件におけるイコールは「代入するごとに成り立つかどうかをチェックするもの」であって,「等しい」という主張ではない!
命題におけるイコールは,「等しい」という主張である!
この違いを知っておくことが大事なのだろうと思います.