yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

「-1≦x≦1⇔x=sinθ(0≦θ<2π)」なのか?

こんな質問がありました.
合わせて,色んな問題で「解」というものを考えるけれど,それって正確にはどういう意味?と.

何となくで数学をやっていると気にも留めないですが,ちゃんと知ろうとしたら躓くところです.
だって,高校数学のブラックボックスに近い部分ですから.


※文字ばかりで読みにくいですが,お許しを.
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さて,いつも書くことですが・・・

「条件」は,変数を含む数学的な文や式で,変数に具体的なものを代入するごとに命題になるものです.
その際,前提として,代入できるもの全体の集合を決めないといけません.
その集合の要素の中で,条件に代入して真になるもの全体の集合を考えて,その包含関係により,必要条件・十分条件という風に言われます.

実数θに関する条件として,
 -1≦sinθ≦1 ……☆
 ⇔θは実数
 ⇔sinθ<2
 ⇔-5≦sinθ
です.どんなθでも成り立つ条件だからです.
また,全体集合が0≦θ<2πであるとき,
 sinθ≧1/2
 ⇔π/6≦θ≦5π/6
 ⇔1/2≦sinθ≦1 ……☆
 ⇔1/2≦sinθ≦10
 ⇔1/2≦sinθまたはsinθ=-5
です.
sinθの値の範囲を表す条件としては☆ですが,他のものも条件としては同値です.

とりうる値の範囲や,方程式・不等式の解,軌跡の方程式などを答えるときは,条件の中でも☆にあたるものを答えよ,という意味になっているのだと思います.



(例)
正の実数xについての方程式(xの4乗)=1を解け.

※解くとは,解をすべて求めること.
※解とは,方程式に代入したら真の命題になるもののこと.
※解全体の集合を解と言うこともある.解け,と言われたら,こっちの意味.

(補足)
2x-1=0の解は1/2であって,正確にはx=1/2ではない.
x=1/2は,解が明示された形の方程式であって,解の表現としてこれも認める,となっているから,x=1/2と答えてもよい.
x=1/2は,xに1/2を代入したときのみ真になる条件.
xに1などを代入することもできるが,そのときは1=1/2という偽の命題になる.


(例の解答の一例)
正の実数xについての条件として,
 (xの4乗)=1
 ⇔(xの2乗)=1または(xの2乗)=-1
 ⇔x=1またはx=-1またはx=iまたはx=-i
 ⇔x=1,-1 ←「または」を省略して,こう書いても良いことになっている
 ⇔x=1
である.よって,解は1(x=1と答えても良い).


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では,本題.

 -1≦x≦1⇔x=sinθ(0≦θ<2π)

なのか?
そもそも,何についての条件なのか?

 「-1≦x≦1」はxについての条件
 「x=sinθ(0≦θ<2π)」はxとθについての条件

です.
xについての条件のだろうと思います.
なぜなら・・・
xとθの条件として考えるなら,xとθに数値を代入した命題を考えることになります.
例えば,x=0,θ=π/2として
 
 -1≦0≦1 ならば 0=sinπ/2(0≦π/2<2π)
 0=sinπ/2(0≦π/2<2π) ならば -1≦0≦1
 
を考えるのは,何とも奇妙だからです.

xの条件として考えるには,θが変数であってはならないので,

「x=sinθ(0≦θ<2π)となるθが存在する」

に変えないといけません.

xについての条件として,
 -1≦x≦1
 ⇔x=sinθ(0≦θ<2π)となるθが存在する
です.

ついでながら,「解」について確認しておくと・・・

θに0以上2π未満の実数を代入して得られるxを“すべて”集めて得られる区間が-1≦x≦1.
この区間内にある各実数について,その数を表すθが“存在”する.

 

 

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(例)
平面上に異なる2点A,Bがある.
同じ平面内の点Pについての条件として
 A,B,Pが同一直線上にある
 ⇔(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB) となる実数tが“存在する”
です.間違っても
 A,B,Pが同一直線上にある
 ⇔(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB)
と書いてはダメです.
(ベクトルAP)=t×(ベクトルAB)のtに実数を代入して得られるPを“すべて”集めたら,Pの描く図形(軌跡).
その軌跡上の各点に対して,その点を表す実数tが“存在”する.

(例)
整数m,nについての不定方程式3m+2n=1

3(m-1)+2(n+1)=0と変形できて,
 3(m-1)=-2(n+1)
3,2は互いに素だから,
 3(m-1)=-2(n+1)=6k
となる整数kが“存在”して,
 m=2k+1,n=-3k-1
と表すことができる.
(それぞれの解に対して,整数kが“存在”する)
よって,解は,
 m=2k+1,n=-3k-1
のkに整数を代入したものの“すべて”である.

条件の比較においては,変数が何であるかを見極めることが大事です.
何となくで「⇔」を使うことのないように.


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