今回も重箱の隅をつついていきます(笑)
もはやライフワークですね.
さて,ほぼ同じ問題を4つ挙げています.
いずれも,a=-1を答えるのがベストですが,a=1,-3という“誤答とされるもの”が正答と見なされ得るものがあります.
良ければちょっと考えてみてください.
とでは、1行目の「~とする」の部分が違います.
これは,どういう意味なんでしょう?
また,とでは、最後が「条件を求めよ」と「値を求めよ」の違いがあります.
これは,どういう意味なんでしょう?
例えば,a=-1という式.
値の表示と見るか,条件と見るかで,意味が変わります.
値を表すものとしては,「aは-1だ」と主張していることになります.
条件を表すものとしては,aに代入できるもの全体の集合(全体集合)の要素をaに代入して,その都度,真偽が決まるものです.
a=1を代入➤命題「1=-1」は偽
a=-1を代入➤命題「-1=-1」は真
‥‥
これが2つ目の観点.
では,1つ目の観点は?
実は,「~とする」の部分は,aに関する条件を考える際の全体集合を指定する部分と捉えることができます.
では,実数解をもつ方程式であることが前提となっていて,全体集合は
A={aは実数|a≦0または4≦a}
です.この中でα^2+β^2=3となる条件・値を考えることになります.
では,
R=(実数全体からなる集合)
で考えることになります.
その中で,実数解をもち,かつ,α^2+β^2=3となる条件・値を考えることになります.
いずれも,値を答えるとしたら,「a=-1」しかあり得ません!
a=-3という値は,判別式を負にしてしまうから,不適です.虚数解をもって,その平方の和が3になる,ということです.
では,答えは「a=-1」という値になります.
しかし,「条件」を考えるときは,少し事情が違います.
条件には全体集合が付属しています.
全体集合の要素を代入して,真か偽かを考えるのが条件です.
では,実数全体からなる集合Rで考えることになります.
実数解をもつ条件は「a≦0または4≦a」で,α^2+β^2=3となる条件は「a=-1またはa=3」です.
Rにおける条件として,
「a≦0または4≦a」かつ「a=-1またはa=3」
⇔ a=-1
なので,これが条件です.
では,A={aは実数|a≦0または4≦a}が全体集合で,α^2+β^2=3となる条件は「a=-1またはa=3」です.
ここで,驚くべきことが起こります.
Aにおける条件として
「a=-1またはa=3」⇔ a=-1
なのです!
理由は分かりますか?
集合Aの要素で,「a=-1またはa=3」に代入して真になるものを考えます.
a=5を代入➤命題「1=-1または1=3」は偽
a=-1を代入➤命題「-1=-1または-1=3」は真
‥‥
a=3を代入 することはできない!!
代入できるのは,Aの要素のみ.つまり,a≦0または4≦aを満たす数のみ!
集合Aの要素で,「a=-1またはa=3」に代入して真になるものを集めると,{-1}です.
-1のみからなる集合で,条件「a=-1」の真理集合と一致します.
このようなときに,2つの条件は,Aにおいては,同値となります.
だから,でAに関する条件を答えるとき,「a=-1」でも「a=-1,3」でも,同じなのです.
例えば,「a=-1,1,2,3」でも,同じ条件です.
A={aは実数|a≦0または4≦a}における条件としては!
始めてみる方は,気持ち悪いですよね.
でも,これが隠された現実なのです.
例えば,全体集合を「10以下の自然数全体からなる集合B」とすると,Bにおいて,
nは偶数
⇔ n=2,4,6,8,10
⇔ n=2k,1≦k≦5となる自然数kが存在する
が成り立ちますし,
nは偶数
⇔ n=2,4,6,8,10
⇔ n=2,4,6,8,10,12,13,14,17,10000
も成り立ちます.偶数であるための必要十分条件が
n=2,4,6,8,10,12,13,14,17,10000
なのですね!驚きませんか?
真理集合が
{2,4,6,8,10}∪∅={2,4,6,8,10}
となるからです.
これをテストで問うと,大変なことになりそうです(笑)
正しいのにね.
いまだに半信半疑の人,たぶん,居ますよね.
そういう人に質問です.
0≦θ<2πとする.sinθ>1/2となるθの範囲を求めよ.
という聞き方に違和感はありますか?
条件「sinθ>1/2」には「sinθ=5」なども含まれますけど・・・
0≦θ<2πとする.1/2<sinθ≦1となるθの範囲を求めよ.
でないと,問題として不成立ですか?
0≦θ<2πとする.1/2<sinθ≦1000となるθの範囲を求めよ.
ではどうですか?
条件というのは,こんなものなのです.
0≦θ<2πとする.sinθ>1/2となるθの条件を求めよ.
だったら,
π/6<θ<5π/6 または θ=100 または θ<0
と答えられても,真理集合が
[π/6,5π/6]∪∅=[π/6,5π/6]
となってしまうから,○にしないわけにはいきません.
だから,問題文の書き方に気を付けましょう!
生徒に空気を読むことを強いるのではなく,読む必要がない文で書いてあげてください.
こういう重箱の隅に気付ける生徒を育てたい!
または,そういう生徒が不幸にならないように先生方に,こういう考えの存在を知ってもらいたい.
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