前の記事の続きです.
±は罪深い表記だと,改めて思いました.
「実数xについての方程式x^2=1」
とは,
「実数xを変数とする条件x^2=1」
のことで,その解とは,
「変数xに代入して得られる命題が“真”になるもの」
のこと.
ただし,「解をすべて求めること」つまり,「条件x^2=1の真理集合を決定すること」を「方程式を解く」と言い,解全体の集合のことも「解」と呼びます.
※「方程式x^2=を解け」は,
「xにどんな実数を代入したら真になるかを考えよ」
という意味で,
「xが1であるか―1である」
と言っているわけではありません!
そう見るのは,未知数としてのxであり,いまは,変数としてのxです.
詳しくは後ほど.
「実数xについての方程式x^2=1」の解は
{1,-1}
です.
「実数xを変数とする条件」として「x^2=1」と同値な条件が
「x∈{1,-1}」
です.集合を用いずに書くと,
「x=1 または x=-1」
です.
毎回こう書くのがメンドクサイから,この条件のことを
「x=1,-1」
と略記することが認められています.あくまで,条件として.
さらに,こう書くのもメンドクサイということで,
「x=±1」
と書くことも認められています.あくまで,条件として.
だから,変数xに数値を代入して得られるもの(命題)を考えるとき,このままの形で考えるとおかしなことになってしまいます.
「x∈{1,-1}」
「x=1 または x=-1」
「x=1,-1」
「x=±1」
は,どれも同じ条件を表します.変数xに1を代入すると,命題は真になるのですが,その命題としては
「1∈{1,-1}」
「1=1 または 1=-1」
「1=1,-1」
「1=±1」
となります.
上で「あくまで,条件として」と書いたのは,「1=1,-1」と「1=±1」は命題として認めてはならないだろう,ということです.
ここの認識が誤っていると,
【すべての実数xで
√(x^2)=±x
が成り立つ.だから,x=2を代入した命題
√4=±2
は真である】
という主張をしてしまう可能性があるわけですね.
さて,では,未知数と変数について.
「2乗すると1になる実数を求めよ」
という問いに出くわしたとします.
【そんな数をxとおく.すると,xはx^2=1を満たす実数である.】
【x^2=1を解くとx=1,-1である.】
【よって,当てはまる数は1,-1である.】
赤字部分のxは,求めようとしている「値」を表す文字で,「未知数」.
求まっていない段階でも.xは1か-1を表しています.
しかし,青字部分は,「方程式の理論」を使って,「条件の言い換え」をしており,xは「変数」.
例えば,xに2を代入することもでき,「2^2=1」という偽の命題が得られます.
変数ですから,何でも代入できます.
未知数の値を求めるのに,いったん変数に切り替えて方程式の解法を利用し,最終的に数値としての1,-1を求めています.
ここに記号のトリックがあって,バレないように“,”の使い分けがされています.
よく考えると,
【x=1,-1】は【x=1 または x=-1】
【当てはまる数は1,-1】は【当てはまる数は1と-1】
です.
前者は条件の略記ルールに対応する“,”で「または」であり,
後者は数値の列挙の区切りを表す“,”で「と」です.
教科書では,この辺りを悟られないような巧みな書き方がされています.
こんな風に説明されたら混乱しかしないですからね.
私は,「このように教えるべきだ」などとは思っておらず,「いつかここで引っかかる生徒が居ないかなぁ,そのときには完璧に納得させられるのになぁ」と思っているだけです.
来たるべき時に備えて,自信を持てました!
早くそんな生徒に出会いたいな.
なかなか出会えないと,求められていないのに話したくなってしまかも笑