yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

2023共通テスト・数学・追試についての考察

 

「共通テスト数学の平均点を予想する公式」を編み出しております.
それによると,
 IA=41.2~44.2
 ⅡB=53.5~56.8
となりました.
大きく外れることはないと思います.

※詳細はインスタを見てください.

https://www.instagram.com/p/CoSPd44pJdl/


本試験よりも少し低くなるのは毎年のことです.
では,追試の中身はどうだったのでしょう?

結論から言うと,問題の質は,本試験とは大きく違っています!!
私のイメージする共通テストを具現化したようなもので,共通テストが,どんどん私の本に近づいてきています(笑)

  

 

「意味」がキーワードとなりそうです.

  =ⅠA=

第1問
〔1〕
普通の問題ですが,「範囲の幅」というここだけの用語を定義して,それの考察をさせるところが,共通テストらしいところ.
意味が分かっていないと,後半は解けない.

〔2〕
正弦の値が2倍のとき,対辺の比も分かる.
意味が分かっていないと,セソやヒフは考えにくい.
また,後半では分数が現れるが,うまく消えて2次関数になる.単元融合は,共通テストで今後も増えてくると思われる.

第2問
〔1〕
共通テストを象徴する問題.
数学の実用がテーマで,知っている範囲内でモデルを作り,検討する場を想定.
問題に入る前のリード文が長く,問題を解くのに使う要素がほぼ無い.また,与えられた数値などは鵜呑みにして進める.数値の意味だけ把握する.
煩雑な連立方程式から始まり,諦めそうになるが,これが出来ていなくても,後に影響なし.
エオは判断,カ~スは意味理解+計算,セソタは定性的(計算でやると無理,意味が分かれば易しい).
本文のほぼすべてを読み流すことが大事.
☞y=(-ax+b)(x-80)-5000の形での考察に発展するかと思ったが,そこまでは行かず.


〔2〕
データの分析だが,チツは定義の意味,テトは定義通りの計算


〔3〕
データをテーマにした数字遊びのような問題(私の本に多い.相関係数が0の意味)
定義通りに計算する.

※〔2〕〔3〕を通じて,データを分析してはおらず,箱ひげ図も散布図もない斬新な問題(私の本に多い)!


第3問
中学受験算数における経路問題の典型解法(1,1解法と呼ばれることもある).
いわゆる振り返りにあたる(2)は,少しややこしい.
昨年のような“受験者に投げっぱなし”の振り返りでなく,発展もあって,ボリュームあり.
条件付き確率の「意味」を問われている(定義でなく,意味)


第4問
同じことを4回やらされる,振り返りが“くどい”タイプ(共通テスト的).
言葉として「必要十分条件」が登場.
思考のギャップを埋める部分についての誘導や気付きの誘発は少ない.
それを“くどさ”でカバーしているせいで,長い・・・


第5問
メネラウス.チェバ,面積比,内接円の接点など,基本的.
数学の問題らしい問題.
気付きも少し必要で,万人が良い問題だとコメントすると思われる.

 

  =ⅡB=

第1問
〔1〕
実係数多項式で共役複素数の性質を,割り算で考察
P(x)の前提が(1)に入る前にあって,ページの変わった(2)では忘れそう.
定性的にポイントを押さえたら,易しいが,キの選択肢はあまり好ましくない(考えてから探すのでなく,選択肢から探すようになっているのが残念).


〔2〕
共通テスト的.
数学の実用がテーマで,知っている範囲内でモデルを作り,検討する場を想定.
ついに常用対数表が登場した.
対数の意味と表の読み取り(私の本的であるw).
細かく読むと大変なので,ある程度の意味を押さえながら進めていく感じになる.
「実用・長文の問題への対策」というものが出来上がりそうな感じがする.


第2問
〔1〕
箱を作って容積を最大にする問題.
(2)(3)は蓋を作るという設定の意味を読み取り,式を作ったら,前に作った式と関係が見いだせる.
ごく簡単な法則だが,それを読み取って,正しく判断することができるか.
ここでも,意味理解が大事.


〔2〕
ベルヌーイ多項式(大学で登場)という有名なものがテーマ.
高校生にとっては,恒等式との融合.
等号の意味をしっかり把握できているか(第1問〔1〕も恒等式).
数列と本格的に融合するのは困難ということで,実際に和を計算することはせず,式の意味から,「これを計算したらわかる」で終わっている.やり切った感は少ない.


第3問
統計ですが,既存の問題との乖離が大きく,とても良い問題と私は思います.
確率分布,確率変数,変換の定義と意味と性質.
記憶が正しいかを検証するというテーマも面白くて,新課程で範囲となる「仮説検定」を見据えていることがよく分かる.
意味を考えたらツテとトナがまったく同じであると,自信をもって答えたい!


第4問
数列の増減がテーマ.
等差数列の漸化式から一般項,和,および,それらの増減.
始めて負になるのは?という設問は,懐かしい感じがした.
後半は1次分数変換タイプの漸化式.少し変わった誘導.
数列を点としてプロットするのは,目新しい.
逆数の意味,増減,上限などの観点から,意味判断で選ぶもので,収束する様子を目で見る感じ.


第5問
普通のベクトルだが,2乗したために,考察が必要になる問題.
ⅠA第1問〔2〕と類似の,意味理解できないと答えにくいのがトナニ.
(3)は1/tの挙動を調べる問題で.媒介変数表示の直線の意味が分かっていないと
解けず,共通テストではかなり目新しい(初見への対応).
最後は除外点の図形的意味を探る設問であるが,点を求めると,選択肢から選ぶ問題になってしますのがもったいない.



こうやって書くと,点を取らせることを重視した本試験と比べて,本来の作成意図にかなり合致した問題セットになっていると思われる.
作ってみると分かりますが,これだけの問題を作るのは,本当に大変なことです.
ご苦労さまでした,と言いたいです.
(普通の問題でも良いんじゃない?という意味も込めて)

 

改めて・・・私のイメージする共通テストを具現化したようなもので,共通テストが,どんどん私の本に近づいてきています!
学校で使ってもらいたいな・・・