yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

不等式の解の話の続き・・・

これの続きです
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「条件と範囲」

𝑙𝑜𝑔(𝑥-1)+𝑙𝑜𝑔(3-𝑥)の真数条件について,まず考えてみます.


『𝑙𝑜𝑔(𝑥-1)+𝑙𝑜𝑔(3-𝑥)が定義されるような実数𝑥の条件(𝑙𝑜𝑔を用いずに)』であれば,「𝑥>1かつ𝑥<3」でも「1<𝑥<3」でも良いように思います.
「𝑥>1かつ𝑥<3」⇔「1<𝑥<3」で,前者が後者の定義に当たるとも言えます.


では,『…𝑥の範囲』だったら,どうでしょう?
私だったら「1<𝑥<3」と答えます.


範囲としての「1<𝑥<3」は{𝑥|1<𝑥<3}を表すもの.開区間(1,3)のことです.

・上記の定義により,(1,∞)∩(-∞,3)は(1,3)と一致しています.
・「𝑥>1かつ𝑥<3」によって{𝑥|𝑥>1かつ𝑥<3}つまり(1,∞)∩(-∞,3)を表すことになっているのでしょうか?


このことを考えるヒントが,和集合にあります.

不等式の解で用いる表記「𝑥<1,3<𝑥」について,詳しく考えます.
何となく受け入れている人が多いのではないかと思いますが,いかがでしょうか?


教科書の記述によると,「𝑥<1,3<𝑥」は「𝑥<1の範囲と3<𝑥の範囲を合わせた範囲」です.
(絶対値の不等式のところに書いてありました)
つまり,(-∞,1)∪(3,∞)であり,{𝑥|𝑥<1または3<𝑥}です.
条件「𝑥<1または3<𝑥」が表わす範囲を,別の記号を用いて「𝑥<1,3<𝑥」と表しています.


「または」と書くのが面倒だからでしょうか?


そうではない,と私は思います.
「𝑥<1」と「3<𝑥」がそれぞれ範囲を表すものと見ることもできるので,「𝑥<1または3<𝑥」によって,『「𝑥<1」と「3<𝑥」のどっちかが答です』と書いている文章と見ることもできます.
誤解を避けるためには『「𝑥<1または3<𝑥」が表わす範囲』と書けば良いですが,長いです.


範囲として書くときは,(-∞,1)または(3,∞)ではなく(-∞,1)∪(3,∞).
条件なら「𝑥∈(-∞,1)または𝑥∈(3,∞)」ですが,範囲としては「(-∞,1)と(3,∞)の和集合」です.


この辺りの様々な事情を考慮して編み出した記述法が「𝑥<1,3<𝑥」なのではないか,と私は思っています.


翻って,共通部分.


条件としては,「𝑥>1かつ𝑥<3」⇔「1<𝑥<3」です.
範囲としては,(1,∞)∩(-∞,3)=(1,3)です.


・「かつ」「または」は,条件をつなぐもの.
・条件によって範囲を表すことにしている.
・範囲を表すときにも「かつ」「または」を用いるか?
 ➤「または」には,別記号「,」を導入している


「,」を導入しているからといって,「または」が良くないとは言い切れない.
だから,「かつ」が良くないとも言い切れない.
言い切れないからOKにする?
すべて腹落ちした状態にして,確実にOKな書き方をしてもらうのが,ベストだろうと思います.
でも,すべてにおいてそれを生徒に求めることは現実的ではなく,匙加減が難しいと思います.

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教科書に記述だけに従う必要はない,というのは私も同感で,私もよく不従順になります.
でも,万が一,生徒が細かい記号の使い分けに疑問をもったときに,一貫して説明する方法は,上記の教科書流に倣うのが良いと思っています.
屁理屈好きな私にとっては,楽しいからやっているというのもありますけれど.

※言うまでもないと思いますが,問題を解いたり,答案を作るときに,無条件でこれに従え,という指導は,好ましくないです.