「2023共通テスト 数学ⅡB」の問題で,少し考察.
もしや,出題ミス!?
第1問[2]の一部です.
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log_2(3)が有理数であると仮定すると,log_2(3)>0であるので,二つの自然数p,qを用いてlog_2(3)=p/qと表すことができる.このとき,(1)によりlog_2(3)=p/qは『ニ』と変形できる.いま2は偶数であり3は奇数であるので,「ニ」を満たす自然数p,qは存在しない.
したがって,log_2(3)は無理数であることがわかる.
『ニ』の解答群
⓪ p^2=3q^2 ① q^2=p^3 ② 2^q=3^p
③ p^3=2q^3 ④ p^2=q^3 ⑤ 2^p=3^q
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(1)では対数の定義を聞いていました.
だから,常識的には,
qlog_2(3)=p
log_2(3^q)=log_2(2^p)
∴ 3^q=2^p
であり,⑤を選び,左辺は奇数なのに右辺は偶数であるから,不合理であって,仮定は誤りである,とします.
偽の命題を仮定すると,いかなる命題も真であると論理的に導けます(その導出課程が真である,ということ).
だから,矛盾を発生させることもでたら,仮定した命題が偽であったのだ,と分かります.これが背理法の原理です.
ということは・・・⑤を経由して,色んな命題が真であるというバーチャルの世界が構築できるはずです(偽の仮定の下では,何でも起こります).
3^q=2^pということは,q≠0であってはダメなので,qは0となる.
つまり,自然数qが0と等しい.
q=0
qで両辺を割ることはできるので,
1=0
であるし,p倍して
p=0
である.
p=q=0であるから,
⓪ p^2=3q^2 ① q^2=p^3 ② 2^q=3^p
③ p^3=2q^3 ④ p^2=q^3 ⑤ 2^p=3^q
はすべて成り立つ!
では,これは出題ミスか?
かなり工夫した問題文になっているのが面白いですね.
「(1)により,…『ニ』と変形できる.」とあります.
それでも変形を頑張ったら,どれにも到達できる気もします.
その後に「いま2は偶数であり3は奇数であるので,「ニ」を満たす自然数p,qは存在しない.」ともあります.
①を満たすp,qは,p=9,q=27が存在.④も存在.
⓪,③は,p,qは存在しないけれど,その理由は「2は偶数,3は奇数」ではない.
②だけは,排除し切れない・・・
この「ニ」を考察する部分にも,「p,qはlog_2(3)=p/qとなる自然数である」という設定が生きているとするなら,また話は変わってきます.
一般に自然数m,nについて
⓪' n^2=3m^2 ①' n^2=m^3 ②' 2^n=3^m
③' m^3=2n^3 ④' m^2=n^3 ⑤' 2^m=3^n
を考えると・・・という風にすればよいですが,無駄に冗長になります.
文脈的に見て,⑤を選ぶしかないですね.
高校数学で命題論理(偽を仮定したら・・・の詳しい話)は扱わないですし.
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正の実数p,qを用いてlog_2(3)=p/qと表すことができるとき,(1)によりlog_2(3)=p/qは『ニ』と変形できる.log_2(3)が有理数であると仮定すると,p,qとして自然数をとることができる.すると,2は偶数であり3は奇数であるので,「ニ」を満たす自然数p,qは存在しない.
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とすれば出題上,完全に安全なのでしょうが,何か変ですねw
以前,このような「一意性」について,センターに問い合わせたことがあります.
数学的な厳密性だけでなく文脈もしっかり読み取る設計になっているそうで,本問も出題ミスには当たらないと思います.
そういえば,数年前にあった数列の周期についての問題は,言い逃れできませんでしたね.