yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)=(6の3乗)

もしも,

「(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)が3乗数であることを示せ」

のような問題だった場合,(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)の概算によって,何を3乗した数と一致するのかを考えることになります.
そこで,(3の3乗)+(4の3乗)+(5の3乗)を評価してみよう,となるわけです.
(1の位の数を見たら分かる,というのは言わない!)

相加相乗平均の不等式(AM-GM)は,個数が増えても使えるのでした.ここでは3個バージョン.

 

コーシーシュワルツの不等式(C-H)は,ベクトルの内積

  (大きさ)×(大きさ)×(なす角の余弦)

であることを利用しているのでした.これも,何次元でも使えます.ここでは3次元バージョンを2通りで使ってみましたが,後でもう少し高次元でやってみます.

なお,C-Hを利用して,-1≦(相関係数)≦1が示せるのでした.
標準偏差が大きさ,共分散が内積に相当するからです.
ちなみに,XとYの共分散は,それぞれの平均m,nを使って

   E( (X-m)(Y-n))

  =E(XY-nX-mY+mn)

  =E(XY)-nE(X)-mE(Y)+mn

  =E(XY)-mn

  =E(XY)-E(X)E(Y)

  =(積の平均)-(平均の積)

となる.
これを利用したのが,次のチェビシェフの不等式(Chebyと略してみた).

 

(X,Y)=(3,9),(4,16),(5,12)というデータは,XとYに正の相関があり,共分散は正.
つまり,

  (積の平均)-(平均の積)>0

  (3×9+4×16+5×25)/3>(3+4+5)/3×(9+16+25)/3

  3×9+4×16+5×25>(3+4+5)×(9+16+25)/3

これがチェビシェフの不等式と呼ばれるそうです.

最後は,y=3^3のグラフが下に凸であることを利用.
イェンセンの不等式とも呼ばれるもの.

グラフ上の3点(3,3^3),(4,4^3),(5,5^3)を頂点とする三角形の重心

  ((3+4+5)/3,(3^3+4^3+5^3)/3)

はグラフよりも上にある.つまり,

  (3^3+4^3+5^3)/3>((3+4+5)/3)^3
  3^3+4^3+5^3>3×(4^3)

さて,そこそこの精度の評価が得られて,6^3しかあり得ないことは分かるのですが,評価の精度をもっと高めたいというのが人情です.
そこで,
  3^3+4^3+5^3

  =3×3^2+4×4^2+5×5^2

  =3^2+3^2+3^2+4^2+4^2+4^2+4^2+5^2+5^2+5^2+5^2+5^2

と見ます.すると,12次元ベクトル(3,3,3,4,4,4,4,5,5,5,5,5)の大きさです!
もう1つ,(1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1)をとって,大きさと内積の不等式(C-H)を作ると

  (3^3+4^3+5^3)×(1+1+……+1)

  ≧(3×1+3×1+3×1+4×1+4×1+4×1+4×1+5×1+5×1+5×1+5×1+5×1)^2

よって,

  3^3+4^3+5^3≧50^2/12=625/3

  =208. 333……

となって,ものすごく良い評価!!

自己満足でしたw