漸近線とは?
解析幾何学において、平面曲線の漸近線(ぜんきんせん、英: asymptote)とは、十分遠くで曲線との距離が 0 に近づき、かつ曲線と接しない直線のことである。通常の定義では、漸近線は曲線と無限回交わってもよい。
漸近線は存在するとは限らず、また複数存在する場合もある。漸近線を見出すことは、曲線の概形をつかむ一助となる。
特に、座標平面における関数に対しては、そのグラフの漸近線の方程式は(存在の可否も含めて)求め方が確立されている。関数のグラフの接線の極限が存在するならばそれは漸近線に等しい。
代数幾何学などでは、漸近線は無限遠点のみで曲線と接する直線と定義される 。
漸近線として直線だけでなく曲線を考えることもある。
と書かれています(定義①と呼びます).
接するとか,接さないとか,定義に含まれているんでしょうか?
写真の下の方にある2つの曲線は,関数
青:y=sin(5x)/e^(x/3)
赤:y=(1+sin(5x))/e^(x/3)
のグラフで,x軸に漸近しています(と言って良いのか・・・???).
2つの違いは分かりますか?
青い方は,x軸の上下を細かく振動しながら,x軸に漸近しています.
この挙動を減衰振動なんて言いますね.
定義①でも,無限回交わっても良いそうなので,漸近線で良いのでしょう.
赤い方は,1+sin(5x)とすることでsin(5x)=-1となるxにおいてx軸に接しています.
定義①では,接してしまっているから,漸近線として認められないのかも・・・
(注)定義①では,「かつ曲線と接しない」の部分にも「十分遠くで」がかかっていると読むのが良いと思います.
y=xはy=xの任意の点における接線であるから,定義①では,y=xはy=xの漸近線にならないでしょう.
では,高校数学の教科書ではどうなっているでしょう?
中1の反比例の段階では,漸近線という言葉は登場しません!
初出はどこだと思いますか?
数Ⅲの微分?
数Ⅲの無理関数?
数Ⅲの双曲線?
数Ⅱの指数関数,対数関数のグラフ?
その1つ前にあるのが
数Ⅱの三角関数,y=tanxのグラフ
です.ここが初出のようです.
定義②
グラフが一定の直線に限りなく近づくとき,その直線を,そのグラフの漸近線という.
これに従うと・・・
赤も青もx軸に漸近するし,y=xはy=xの漸近線になりそうです.
実際,数Ⅲの教科書には,次のようにも書かれています.
関数f(x)において
lim(x→∞) f(x)=a または lim(x→-∞) f(x)=a
が成り立つとき,直線y=aは曲線y=f(x)の漸近線である.また,
lim(x→b+0) f(x)=∞,lim(x→b+0) f(x)=-∞
lim(x→b-0) f(x)=∞,lim(x→b-0) f(x)=-∞
のいずれかが成り立つとき,直線y=bは曲線y=f(x)の漸近線である.
関数f(x)において
lim(x→∞) {f(x)-(ax+b)}=0
または lim(x→-∞) {f(x)-(ax+b)}=0
が成り立つとき,直線y=ax+bは曲線y=f(x)の漸近線である.
極限を考えるだけで,「漸近線だ」と主張できるということです.
f(x)=xのとき,
lim(x→∞) {f(x)-x}=0,lim(x→-∞) {f(x)-x}=0
ですから,y=xはy=xの漸近線です!
(注)直線は,真っ直ぐな曲線です.「曲線ではないから,漸近線の定義に当てはまらない!」とはならないのです.
一方,Wikipediaにも似た記述がありますが,
曲線y=f(x)が直線y=ax+bに漸近するとき,
lim(x→∞) {f(x)-(ax+b)}=0
または lim(x→-∞) {f(x)-(ax+b)}=0
が成り立つ.
という書き方になっています.
違いは分かりますか?
Wikipediaの方は,「極限の性質が成り立つからと言って漸近線とは限らないよ」という含むがありますね.
接するとかいうところにこだわっている感があります.
高校数学の範囲で考えると,「y=xはy=xの漸近線である」となりますが,これを敢えて主張することに意味がないから,考えることはほぼないでしょう.
万が一,「y=xはy=xの漸近線であるか?」と問われたら,「Yes!」と答えましょう.