yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

ぽっこりカワイイ曲線の漸近線を求めるのは楽ではない ②

唐突ながら,

  “極限”+“不等式”=“ハサミウチ”

ですね!

 

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さて,もともと,「式だけで漸近線を求める」という課題でしたから,

  「図より,漸近線は 3x+3y+1=0 である」

というのは,今回は避けることにします.


ちなみに,k の範囲は

 1)曲線の式に,x+y=kを代入して,xy を k の式で

 2)その際,k≠-1 / 3 が確定

 3)x,y を解にもつ2次方程式が実数解をもつ条件(判別式≧0)

として求めることができますね.


さて,そうして得られた

  -1 / 3 < k ≦ 2

の意味を考えることにしましょう.


k=2のときの直線 x+y=2 は,ひょっこりの頂点(1,1)を通るもので,ちょうど接しているようです.

k=2以外の k の値については,(x,y)が2つずつ求まります.

そして,

  k=-1 / 3 のときの直線にどこまでも近づいていきそうだ

となるのです.

でも,図が分かっている前提で議論しているようになるのと,極限を使って論証したいというのと,2つの意図があるので,この不等式を

  「極限」

に活かしてみようと思います.


  x^3+y^3-xy-1=0

において,

  ①x→+∞のときにy→-∞になるのか?

  ②x→+∞のときに y / x が収束するのか?

が宿題なのでした(どんな x に対しても y が存在することは確認済).


実は,もう宿題は終わったも同然です!


x^3+y^3-xy-1=0において,
  
  -1 / 3 < x+y ≦ 2

が成り立ちます.


① y ≦ 2-x ,x → +∞

だから,y→-∞


② x → +∞の極限を考えるからx>0として良く,

  -1 / 3x < 1+(y / x) ≦ 2 / x

 ∴ -1-1 / 3x < y / x ≦-1+ 2 / x

で,(-1-1 / 3x) → -1,(-1+ 2 / x) → -1なので,

  y / x → -1

 

ということで,宿題2つは解決しましたね!

  -1 / 3 < x+y ≦ 2

から直接的に漸近線が求まったとも思えますが,極限を求めるのに不等式を使ったのが,ちょっと良いですよね.
おかげで,厳密に漸近線を考えることができました!