yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

数学Ⅲ・極限の論証について

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この答案,どのように思われますか?

満点をあげますか?
 

それとも,どこかに良くないところがありますか?
あるとしたら,①~⑦のうちのどこでしょうか?


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実は,⑤がダメなんですが,理由は分かるでしょうか?
また,どうすれば認められる答案になるでしょうか?

例えば,数列{a_n}が

  a_(2m-1)=π,a_(2m)=0 (m=1,2,3,・・・)

で定義されているとしましょう.すると,

  lim(n→∞)a_n は存在しない

ですが,

  sin(a_n)=0 (n=1,2,3,・・・)

 ∴ lim(n→∞)sin(a_n)=0

です.

 

④は問題ないですが,ここから⑤,つまり,

  {a_n}は収束し,その極限値が 0 または π

という主張はどうでしょう?
上記のように,④であるが⑤でない例が存在しています!

ということで,ダメなのは⑤です.
では,⑤が無かったら,どうなるでしょう?

そうなんですね.
⑤が無いだけで,認められる答案に変わります.

  lim(n→∞)sin(x_n)=0
  π/2<x_n<π

から,

  lim(n→∞)x_n=π
  つまり,
  n→∞のとき数列{x_n}は収束し,極限値は π

が分かります.
細かくいうと,f(x)=sinx (π/2<x_n<3π/2)の逆関数の連続性を使っています.

①②③④⑥⑦だけならOKなんですが・・・

  「0じゃないことを言わねば!」

という意思を,⑤の形で書いてしまうのがダメなんです.
イメージを正しく伝えるための,正しい言葉は,数Ⅲにおいてはかなり重要なのですね.

収束は証明するもの!
丁寧に扱いましょう.