yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

n倍角の公式を表す多項式(チェビシェフの多項式)の係数の秘密②

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漸化式&帰納法バージョン
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n倍角の公式を表す多項式(チェビシェフの多項式)の係数の秘密① - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー



漸化式を使って帰納法で示すのは,連鎖的な構造が分かって気持ちいいですが,「そのもの」をスパッと考えていないから,ちょっとモヤモヤしたものも残りませんか?
僕だけ??
ということで,一般項的に一発でドーンと示す方法を考えましょう.


T_nの定数項 T_n(0)については,0=cos(π/2)だから,

  T_n(cosθ)=cos(nθ)

にθ=π/2を代入したら,直接的に考えることができます!


では,T_nのxの係数はどう考えましょうか?

実は,これも,何かに,何かを代入することで,直接考察が可能です.

何と,微分するのですね!

  f(x)=(2次以上)+ax+b

は,微分すると,

  f'(x)=(1次以上)+a

だから,f'(x)の定数項がaになります.つまり,

  a=f'(0)

です.
チェビシェフでは,T_n'(0)を考えたいのですが,それは

  T_n'(cos(π/2))

ということです.

  T_n(cosθ)=cos(nθ) …①

の両辺を,θで微分してみます(θですよ!).

左辺のT_n(cosθ)は,

  T_n(x)にx=cosθを代入

しているので,合成関数の微分です.

  d(T_n(cosθ))/dθ=T_n'(cosθ)×d(cosθ)/dθ
   =-sinθ・T_n'(cosθ)

なので,①の両辺をθで微分すると

  -sinθ・T_n'(cosθ)=-n sin(nθ)

が得られます.
これにθ=π/2を代入したらどうなるでしょうか?

  -1・T_n'(0)=-n sin(nπ/2)

 ∴ T_n'(0)=n sin(nπ/2)

よって,

 nが偶数のとき,T_n'(0)=0

 nが奇数(n=2m-1)のとき,T_(2m-1)'(0)=n×(-1)^(m-1)


予定通り,T_1,T_3,T_5,T_7,……のxの係数が

  1,-3,5,-7,9,-11,……

となることが分かりました!


帰納法よりも圧倒的に気持ちいいのは,僕だけでしょうか?
いや~,きもちいい!

今回の手法「微分&代入で係数を求める」は,大学数学のテーラー展開にもつながっていきます!

 

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