「内積は正射影だ」なんて言われることがあります.
正射影ベクトルの公式:
(ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)
を丸暗記させること,ありませんか?
私がどういう解釈をしているか,まとめてみようと思います.
平面内に,同一直線上にない3点A,B,Cがあるとする.
「点Cから直線ABに引いた垂線の足」をC'とおく.
すると,
AB⊥CC' ∴ ベクトルABとCC'の内積が0 ‥‥‥①
以後,内積を使った式は,例えば①なら,
(AB,CC')=0 ‥‥‥①
のように書くことにする.
(AB,CC')=(AB,AC'-AC)=(AB,AC')-(AB,AC)
であるから,① より
(AB,AC')=(AB,AC) ‥‥‥②
が成り立つ!
この式は重要な式である.
ベクトルAC'が,「ベクトルACの,ベクトルAB方向への正射影ベクトル」である.
「正射影ベクトルとの内積は,元のベクトルとの内積と等しい」というのが②の意味である.
C'は直線AB上にあるから,ベクトルAC'は「ベクトルABの実数倍」で,
内積が正のときは,ベクトルABと同じ向き
内積が0のときは,零ベクトル
内積が負のときは,ベクトルABと逆向き
である.
(ベクトルAC')=k×(ベクトルAB) (kは実数)
と置けて,②より
k×|ベクトルAB|^2=(AB,AC) ☜両辺とも数値です(ベクトルではない!)
∴ k=(AB,AC)/|ベクトルAB|^2
である.よって,
(ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)
である.
ここで,
{1/|ベクトルAB|}×(ベクトルAB)=ベクトルe
とおくと,ベクトルeは,「ベクトルABと同じ向き」の単位ベクトルである.
直線ABを数直線と見る.
その際,Aが原点で,Bが正の方向にあるようにとる.
すると,この数直線の正の向きを表す単位ベクトルがeである.
(ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|}×(ベクトルe)
となっているから,
(AB,AC)/|ベクトルAB|
が数直線上でのC'の座標である.
「ベクトルAC'の成分」と思っても良い.
2ベクトルAB,ACのなす角をθ(0≦θ≦π)とすると,
|AC|cos θ
がC'の座標である.
θが鋭角のとき,座標が正
θが直角のとき,座標が0
θが鈍角のとき,座標が負
である.
数直線を考えて,その中だけで「1次元ベクトル」を考えていることになっているのに気づいただろうか?
正射影ベクトルの公式
(ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)
を覚える必要はないが,「正射影ベクトルは,垂線の足を下した直線の中だけで1次元ベクトルを考えていることになる」という観点は重要である.
内積を
(AB,AC)=|AB||AC|cos θ=|AB|×|AC|cos θ
と分けて考えると,後半(|AC|cos θ)が,ベクトルAB方向(前半のベクトル)への正射影ベクトルの「座標」を表している.
「長さ」ではない!
負になることもあるからだ.
だから,垂線の足が線分AB内に,あっても,なくても,
(ベクトルAC')={(AB,AC)/|ベクトルAB|^2}×(ベクトルAB)
と1つの式で書けるのである.
鈍角のときに,うっかりマイナスを付けてしまったり,しませんか?
丸暗記しても,あまり意味はない‥‥‥
しかし,読みにくいですね.スミマセン.