yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

外接円の複素方程式 -ベクトルと複素数での図形表示の違い-

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()は,確かに外接円を表しています.

 1)式の形から,円,直線,または,1点,または,∅

 2)z=α,β,γのとき()が成立

の2つから分かります.
2)から,1)は円に決まり,3点を通る円は外接円しかないので,()は外接円を表す式であるしかありません!

さて,どうやって作ったか,少し説明してみます.

まず,ベクトルと複素数の対比から.


ベクトルでは,図形的な量は内積を使って捉えます.
内積余弦定理が元になっているので,そこで考える角度には「向き」がありません.
角度も長さも面積も,すべて内積で捉えられるのが良いところ.


一方,複素数では,絶対値と偏角で捉えていきます.
2つを分断して捉えることになるから,細かく見ることが可能と言えます.
角度に「向き」を付けることができたり.
また,それらを統一するときには,共役複素数を利用することができます.

   (a+bi)*(c-di)
  =(ac+bd) + (bc-ad)i

という計算をすると,実部が内積で虚部が符号付面積になります.

  {z * (wの共役)+(zの共役) * w }/2

  |z * (wの共役)-(zの共役) * w }/2

が順に内積と面積(平行四辺形の)になります.


()は共役複素数が入った形になっているので,この辺りが作成の鍵になるはずです.
ここからが本題です.


4点が同一円周上にある条件には,円周角が等しい,があります.

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3点A,B,Cを通る円周上に点Pがある条件は

  Aを含む弧BC上 … ∠BAC=∠BPC(向きも等しい)

  Aを含まない弧上 … ∠BAC+∠CPB=±180°(向きも込めて)

前者は

  ∠BAC+∠CPB=0°(向きも込めて)

と言えるから,まとめることができます.

複素数で角を表示すると,向きを込めたことになるという「高校数学」のローカルルールがありますから,

  ∠βαγ+∠γzβ=180°×(整数) ……💛

となることが条件になります.

  ∠βαγ=arg{(γ-α)/(β-α)}

  ∠γzβ=arg{(β-z)/(γ-z)}

であり,

  ∠βαγ+∠γzβ=arg{{(γ-α)/(β-α)}*{(β-z)/(γ-z)}}

となります.

だから,💛は

   {(γ-α)/(β-α)}*{(β-z)/(γ-z)}が実数

と言い換えられます.

ということで,Pが円周上にあるための条件は

   {(γ-α)/(β-α)}*{(β-z)/(γ-z)}が実数 ……💛

  または

  z=β,γ

で,💛は

   {(γ-α)/(β-α)}*{(β-z)/(γ-z)}
  =({(γ-α)/(β-α)}*{(β-z)/(γ-z)}の共役複素数

と書き換えられて,分母を払うと★になるのです!


実はあまり工夫せずに作った式でした.
また機会があれば,3点を通るように設定して作った「外接円の複素方程式」も紹介してみようと思います.
お楽しみに.



※外接円シリーズはこちら
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円だと分かっているので・・・ - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

新発見!? 「“三角形の外接円”のベクトル方程式」を求める公式 - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

 

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