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「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

【入試問題紹介】 出題者の意図は,いったい・・・

【入試問題紹介】
出題者の意図は,いったい・・・

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2021年の某大学の入試問題です.

問題文が分かりにくかった,と受験した生徒(合格!)に言われました.
集合を使って書いたり,論理構造を問うようにすると,混乱してしまう人がかなり多くなると思います.

 

この問題で問いたいのは,読解力?
👉それなら,(2)はいらない!


(1)はどういう方針を想定している?
👉
①「T∩(β,∞)に最小元があるから,それを用いてγを構成できる」を認めて良いか?
➤それなら,(2)は「(1)と同様」でOKに・・・.
②上記①での最小元の存在をキッチリ証明させたいのか?
➤それはかなり難しい・・・
背理法(存在しないなら,矛盾)とやらせたいのか?
➤(2)はSからTを構成するのか?


①,②,③のどれなんでしょう?

※長いです!スミマセン.

さて,その前に,まずは読解力について.
受験生の言うと通り,確かに,大人の数学の本に書かれているような文です.

 ~が存在して,…を満たす

これは,

 There exists ~ such that …

を直訳したような文で,ふつうの日本語じゃないです.

 …を満たす~が存在する

と同じ意味です.
~に入るのは適当な名詞で,…は~に関する条件です.

これだけならまだしも,本問の構造はかなり複雑です.

  x>βならばx-β≧γ

は,x,β,γに関する条件ですが,「βを実数とする」はβを文字定数として扱う,という意味なので,これは,x,γに関する条件です.
ちなみに,文字定数は,答えに入っても良い文字で,その文字の値によって答えが変わるときには場合分けして答えます.

さて,条件とはなんでしたか?
「x,γに数値を代入すると,命題(=真偽が決まるもの)になるもの」が条件です.

これに,「x∈Tについて」がくっ付いていますが,これは「すべてのxについて」という意味です.

  x∈Tについてx>βならばx-β≧γ

は,「xに何を代入しても真か?」ということだから,xについての条件ではなくなります.
命題になってしまいました!
しかし,まだγについては条件のままです.

ということで,条件(F)はγに関する条件です.
条件(F)を満たすγが存在することを示す問題です.

これを正しく読解するのは,なかなか難しいですね.

  x∈Tについてx>βならばx-β≧γ

が真になるというのは,集合でいうと

  {x∈T|x>β}⊂{x∈T|x-β≧γ}

が成り立つということです.
もしも,全体集合がTでなかったら?
仮に全体集合が実数全体の集合だったら,

  (β,∞)⊂[β+γ,∞)

ということで,これが成り立つγの条件は

  γ≦0

です.正のγでは,このようなものはありません!

ということで,集合Tを真剣に向かい合う必要があります.
意味が分からないなら,具体例!

最初に与えるのは,m_1,…,m_kです.
k=2としてm_1=0.3,m_2=0.5でどうでしょう?
a_1,a_2が色んな0以上の整数であるときに,Σで書かれたものがどういう値になるかを調べます.
  (a_1,a_2)=(0,0),(1,0),(0,1),(2,0),(1,1),(3,0),(0,2),……

の順に

  T={0,0.3,0.5,0.6,0.8,0.9,1.0,……}

です.
飛び飛びの値しかとりません!
例えば,β=0.7として

  {x∈T|x>β}⊂{x∈T|x-β≧γ}

となるγを探します.

  {x∈T|x>0.7}={0.8,0.9,1.0,……}

だから,例えば,γ=0.1とすると

  {x∈T|x-β≧γ}={x∈T|x≧0.8}={0.8,0.9,1.0,……}

です.γが存在しました!

  {x∈T|x>β}

という飛び飛びの値しか含まない集合の最小元をβ+γとおけば良いのです!
(2)も飛び飛びの集合だから,同様です!

①読解が十分に難しいので,「最小元の存在」は認めてしまって良いような気がします.
けれど,それなら(2)は要らないような・・・

②では,最小元の存在をしましますか?
それでも(2)が自明であることは変わらないです.
まぁ,示しておきましょうか.

<証明>
{x∈T|x>β}=S’と表すことにする.
S’に最小元が存在しないと仮定する.
x∈S’を任意に1つとり,x_1と表すことにする.
すると,これは最小元ではないから,

  x_2∈S’かつ x_2<x_1

となるx_2が存在する.もちろん,x_2はSの要素である.
これを繰り返すと.S’の要素の無限列{x_n}で
  
  x_1>x_2>x_3>……>β

となるものがある.この無限個の数は,すべてのSの要素である.
Sの定義から,x<x_1を満たすx∈Sは有限個しかないので,これは不合理である.
  ◆  ◆  ◆

こんなのは高校生には厳しい気がしますね・・・

やはり,③でしょうか?
背理法
命題

  (F)を満たす正の実数γが存在する

を否定してみましょう.それは

  すべての正の実数γについて,(F)が成り立たない

です.
次に考えるのは「(F)が成り立たない」の意味です.

  x∈Tについてx>βならばx-β≧γ

の否定は,

  x>βかつx-β<γとなるx∈Tが存在

つまり,

  β<x<β+γとなるx∈Tが存在

です.集合での

  {x∈T|x>β}⊂{x∈T|x-β≧γ}

の否定として考えると,

  {x∈T|x>β}∩{x∈T|x-β<γ}≠∅

で,

  β<x<β+γとなるx∈Tが存在

と同じになっていますね.
ということで,背理法示すときの仮定は,

  すべての正の実数γについて,「β<x<β+γとなるx∈Tが存在」

です(βは固定された定数です!).

Tは飛び飛びの値のみを含む集合だから,γが十分0に近いと,「β<x<β+γとなるx∈Tが存在」は成り立たちません.
だから,矛盾です.
☞Tが飛び飛びの集合である,をどこまで使ってよいのか,判断が難しい・・・

出題者の想定解法として考えられるのは,(2)で(1)を利用するものでしょう.
(最小元の存在は使わずに)

(2)
  n_i=m_i/r(>0)←定数!
  b_i=a_i+m(≧0)←集合を定めるための変数

とすると,

  S={Σb_i*n_i-m/r*Σn_i|n_1,……,n_kは整数で,0以上}

となっています.

  T={Σb_i*n_i|n_1,……,n_kは整数で,0以上}

とおくと,(1)の性質を満たしていて,x∈Sのとき,y∈Tで,

  x=y-m/r*Σn_i

と表せて,x>0は

  y>m/r*Σn_i

です.だから,(1)で

  β=m/r*Σn_i

とすれば,(2)も示せたことになります.


あぁ,メンドクサイ.
出題意図はどれなんだろう??
ここまで書いても,結局,よく分かりません.
後味悪くてスミマセン.

****

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2021年 東大・理「4」(3)の“a-bが偶数”は不要

こんな問題でしたね.

*****

以下の問いに答えよ。

(1) 正の奇数  と正の整数 A,B が  を満たしているとする。 
 を 4 で割った余りが L を 4 で割った余りと等しいならば、 
 を 4 で割った余りは  を 4 で割った余りと等しいことを示せ。

(2) 正の整数  が  を満たしているとする。このとき、 
 に対して  となるような正の奇
 数  が存在することを示せ。

(3)  は(2)の通りとし、さらに  が 2 で割り切れるとする。
 ( を 4 で割った余りは  を 4 で割った余りと
 等しいことを示せ。

(4)  を 4 で割った余りを求めよ。

*****

 この(3)にが偶数,という設定があるのですが,実は,これ,不要なんですよね.
とりあえず,その証明だけやってみます.

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※どこかで既出だったらスミマセン.見てないので許してください.

(3)でなぜこういう不要な設定を付けたのか?

もちろん,(2)からの誘導を生かすことを前提にした解法でやらせたかったからです.
その解法の中では「が偶数」を使ったはず・・・

どうしてこれが無くても示せるんでしょうね.
その辺は面白そうなので,大数に書こうかな,と思います(笑)
掲載をお楽しみに.

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場合分けって,色々ないですか?

「場合分け」のこと,実はあんまり分かっていないかも知れません.
2つの場合分け,区別できていますか?

問.
aを実数の定数とする.
2次関数 f(x)=x^2-2ax の 0≦x≦1 における最小値を求めよ.

解.
f(x)=(x-a)^2-a^2 だから
・0≦a≦1 のとき,最小値はf(a)で,-a^2
・a<0 のとき,最小値はf(0)で,0
・1≦a のとき,最小値はf(1)で,-2a+1

これで終わり.


 文字定数 a の値によって最小値の
 答えが変わるときに,
 「分類」して答える

というのが,ここでの場合分け.
答えが何種類あるかを分類して,どういう a のときにどの答えになるか,整理するのです.


次は,場合分けで有名な絶対値.
|x| を

 |x|=±x ☚間違い!

と書いてはダメ.

・x≧0 のときは |x|=x
・x<0 のときは |x|=-x

です.
±xと書くと,各 x について,|x|の値が ±x の2つになっているという意味です.

では,この問題は?


問.
|x|+|x-1|=5を解け.


解.
・x<0 のとき,(-x)+(-x+1)=2
 ∴ x=-2 で,これは x<0 を満たす.
・0≦x<1 のとき,(x)+(-x+1)=2
 ∴ 1=-2 となり,これを満たす x は存在しない.
・2≦x のとき,(x)+(x-1)=2
 ∴ x=3 となり,これは 2≦x を満たす.
これで終わってはダメで,
  x=-2,3
が答え.


“文字定数 a の値によって答えが変わるときに,「分類」して答える”ではないのですよね.

 未知数 x を,x<0,0≦x<1,1≦x の
 それぞれの範囲で探す


ということをやっています.
これを集合で見ると・・・

 

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同じ場合分けという言い方に

 

 文字定数で「分類」して答える

 

 

 範囲を「分割」して考え,和集合を考える

 

というのがあるのです.

問題によっては,ある文字を,途中までは文字定数として考え(分類),途中から未知数・変数として考える(分割)こともあります.

「場合分け」と一言で言っても,色々あることを理解しておきたいですね.

脱!解法主義 ~大学入学共通テストからのメッセージ~

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普通は,平方完成して最大値を求め,因数分解して2次不等式を解くのですけど・・・
共通テストでは,数字が大きくなってしまうのが厄介なんですよね.

定石的で汎用性の高い解法は,いつでもどこでも使えるけれど,個別の問題において最適な解法とは限らないんです.
困ったときは定石に頼ろう,というくらいのスタンスがちょうど良い.


この問題だったら?


中学で習った2乗に比例する関数のグラフと合同なんだから,グラフはとってもわかりやすいものです.

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この性質を使わない手はない!

****

  y=x(560-x)-70000

だから,y=-70000となるのがx=0,560で,ちょうどその真ん中に軸があります.
最大値をとるxは

  x=280 ‥‥ アイウ

最大値は,x=280を代入したら良いでしょう.

  280^2-70000=100×7×4×(7×4-25)=8400 ‥‥ エオカキ

x=0は軸から280だけ離れているので,高さは280^2だけズレています.
これは,いま考えている関数のグラフがy=x^2のグラフと合同だからです!
だから,最大値は,x=0でのy=-70000に280^2を足した

  280^2-70000

です.

この考え方を使うと,最後の2次不等式は,因数分解の問題ではなくなりませんか?


頂点のy座標が8400で,7500はこれより900だけ下になります.
900=30^2なので,軸x=280から横に30ズレたところの高さが7500です.
小さい方だから,

  280-30=250 ‥‥ クケコ

****

いかがでしたか?
考えるべき点が,頂点から

・ヨコにどれだけズレている?

・タテにどれだけズレている?

を見るだけで解けてしまうんですね!
x^2の係数をちゃんと確認する必要はありますけど.


こういう定性的なアプローチも取り入れて,個別の問題で「もっとも楽をする!」ことを追求するのが,脱!解法主義です.

そんなのを集めたのが,この2冊!
   👇       👇

置換積分の真の姿は,区分求積で見えてくる?

置換積分って,合成関数の微分を利用して公式を作って,それ以降は機械的に計算するだけのものになっていませんか?

そんな方には次の写真を送ります.

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区分求積が定積分(面積)の定義だと思っていませんか?
実はそうではないのです.
本当は,リーマン和というものを使っています.

面積を求めたいxの範囲を等間隔に区切らなくても,区間の幅の最大値が0に収束するような分け方をしておくと,どんなリーマン和も区分求積と同じ極限値に収束するということ(言葉の使い方が不正確だと思いますが,お許しを).

区分求積は,リーマン和の特殊な形の1つ,ということ.

区間[0,1]を

  [0/n,1/n]∪[1/n,2/n]∪‥‥∪[(n-1)/n,n/n]

と分けるのが通常の区分求積.

区間[0,1]を

  [0/n^2,1/n^2]∪[1/n^2,4/n^2]∪‥‥∪[(n-1)^2/n^2,n^2/n^2]

と分けても良いじゃないか,というのがリーマン和(の1つ).

 

積分可能なときは,どんなリーマン和も同じ値に収束するので,写真の「やってよい?」は,「やってよい!」なのです.

 

では,上の方の積分の計算は何なのでしょう?
0になった部分は無視してください.

  Σ(2k/n)*1/2*(k/n)^2=Σ1/n*(k/n)^5→∫[0,1]x^5dx

となったわけですが,この積分において,t=x^2と置換すると,どうなるでしょう?

  x:0→1 のとき t:0→1

であり,

  dt/dx=2x ∴ 2xdx=dt

だから,置換積分すると

  ∫[0,1]x^5dx=∫[0,1]1/2*t^2dt

となります.これって,まさに

   Σ(2k/n)*1/2*(k/n)^2

の極限になっていますよね!
丁寧に書くと,

  f(k^2/n^2)

の和で定積分を考えたいときは,t=k^2/n^2とt=(k-1)^2/n^2の差Δtとして

  Δt=k^2/n^2-(k-1)^2/n^2

   =(2k-1)/n^2≒2k/n^2

を考えることになって,

  Σ2k/n^2*f(k^2/n^2)→∫[0,1]f(t)dt

となるのです.
通常の区分求積では, 

  f(k/n)

の和で定積分を考えたいから,xの差Δxとして

  Δx=k/n-(k-1)/n=1/n

を考えることになって,

  Σ1/n*f(k/n)→∫[0,1]f(x)dx

となっているのです.
これが定積分の真の姿!


t=x^2の置き換えでは,置換積分の肝となる

  2xdx=dt

は,何を表しているかというと・・・

リーマン和の状態では,

  x=k/n と t=k^2/n^2

において

  Δx=1/n

  と

  Δt≒2k/n^2

の比較をして,

  Δt≒2k/n^2=2k/n*1/n=2xΔx

としているのです.

 
「どういう関係?」は「こういう関係!」でした.

機械的に置換するだけでなく,たまには「和」の状態で積分を見つめて,置換の真の意味を考えるのも良いかも知れません.

 

xが等速で動いても,
tの速度dt/dxはxによって変わり,
その分,和の状態で見ると,
長方形の底辺が一定でなくなっている.
その調整をしているのだ!

これが置換積分の解釈になるのだろうと思います.

どう解く?共通テスト・第2日程 数学Ⅰ・A How to Solve IA

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1/31に行われた大学入学共通テスト・数学ⅠAです.
中間発表での平均点が35点!
驚きです.
そんなに難しいのでしょうか?
僕は47点くらいになると予想していて,第1日程の55.6点(中間発表)よりは低くなりそうと思っていましたが,ここまでとは.
・確率の計算処理量
・整数,図形の後半の難度
のため,満点を取りにくいようには思いますが,普通にやっても50点をとることは難しくないです.

本稿では普通ではなく,定性的なアプローチで可能な限り計算せず,ズルく解く方法を書いてみようと思います.
もっと楽な方法があると思うので,引き続き考えてみようと思います.
みなさまも,ぜひ!

では,できれば問題を解いてから,お手元に問題冊子を置いてご覧ください.

※文章ばかりなので,適宜,図など書きながらお読みください.
※しかも長い・・・スミマセン

******

数IA
第1問
〔1〕
(1)2つしかない(しかも,たぶん負の数)と分かっているから,見つけたら終わり

(2)
(ⅰ)解いて,√2の値を利用して,整数部分の評価をするしかないか?

(ⅱ)範囲の幅が6√2=8.4・・・その中に9個入るから,左端(b+4)√2の小数部分は大きいはず.
6√2は調べた.右端が17に満たない
7√2は9.8・・・で,大きい!6√2を足したら18.2・・・くらいで,OK!
【できるだけ値を細かく求めずに!】

〔2〕
(1)分子が固定されているから分母のサインが最大で,全体は最小
 →ずっと使う気づき

(2)場合分けの分岐点を特定,ちょうど接するときの数値を入れる

(ⅰ)無条件でサインが最大になる90°が実現可能
 →そうじゃない場合が,次の(ⅱ)

(ⅱ)P_1と,それ以外の任意のP_2で比較
 →おそらく,P_1が答え,というストーリー【不等式の証明+等号成立で最大確定】
P_2の話をP_3に変え(円周角の定理!)て,P_3とP_1を比較する流れ
 →予想通り,P_1が答えに!

(3)(ⅱ)の結果からPを特定
高さ・底辺が既知の二等辺の頂角
→斜辺を求めて,①倍角の公式(数Ⅱ),または,②面積を利用,または,③余弦定理

******

第2問
〔1〕
(1)問題文から傾き-1と分かるが,①に書いてある
 →x=200で200になるように

(2)書かれた通りに立式(ミスしないよう丁寧に)

(3)平方完成せずとも,-x^2+ax+bは-x(x-a)+bだから,x=a/2で最大【定性的な観点】

(4)不等式を解くのはメンドクサイ【定性的な観点】
 →y=-x^2と合同なグラフで,頂点よりも8400-7500つまり900だけ下にあるところ
 900=30^2だから,頂点から30だけ離れたところ!

〔2〕
(1)ちゃんと数えたり,計算したりは,不可能!【定性的】
選択肢(Ⅰ)白黒の縦方向,四分位範囲=真ん中半分の範囲→真ん中が密集なら小
選択肢(Ⅱ)白丸の縦横それぞれの存在範囲(縦横比が違うことには注意)
選択肢(Ⅲ)白丸はやや右上がり,黒丸は右下がりっぽさを醸し出す外れ値アリ

(2)式変形する(Σf_k=n)か,具体的な分布表で⓪~④の中からアタリを探す
平均値は,階級値の読み取りが少しわかりにくい.テを使うか,そのままやるか.

(3)Σx_k*f_k=n*平均,Σf_k=nを利用
統計で学ぶ公式を知っていたら楽(統計受験者を増やしたい思惑か?)
選択肢は1000ずつズレているから,ある程度,ざっくり計算しても正解は分かる
2乗の平均は10000でくくってから計算

******

第3問
(1)
(ⅰ)余事象?
(ⅱ)(ⅰ)を余事象でやっていても,結局,こちらでは3パターンが必要

(2)白は全部で2個しかない!
(ⅰ)(ⅱ)細かく見るだけだが,手間がかかる

******

第4問
(1)m=14,答えは1つだから,当てはめる
m=28は,最大のaが何であるかで分けて考える.
a^2≦28≦4a^2だから,a=5,4,3で実験

(2)8が適することは分かり,枠から1桁だから最大のものは8と分かる

(3)すべて偶数は適していそうで,答えは1つに決まるから,4個
→「奇数があったら,a^2+b^2+c^2+d^2≡1,2,3,4(mod8)で,NG」とやるのが正統

(4)“求めやすくなる”が何を意味するか?
「224で1つ」と書いてあるのは?
→m=14で1つだったことを思い出せ,という意味?
224が8の倍数か?2^5×7
定性的にやれるのは限界→(2A,2B,2C,2D)などとおけ,というのが(3)の意味
→A^2+B^2+C^2+D^2=2^3×7 ←8の倍数
さらに,(2p,2q,2r,2s)とおけて,p^2+q^2+r^2+s^2=14で,m=14に帰着

(5)オ=3個の意味は?(4)はm=14に帰着
3個だったm=28に帰着,と想像
896=2^7×7だから,
 m=7,2×7,…,2^7×7 ←8の倍数は5個

m=896=2^7×7 →÷4でm=2^5×7 →÷4でm=2^3×7 →÷4でm=2×7 1個
m=2^6×7 →÷4でm=2^4×7 →÷4でm=2^2×7=28 3個
m=7はまだ考えていない!4+1+1+1の1個
→m=7を考えていなくても,スが当たってしまう・・・

※ヒントが中途半端で,分かりにくい.
問題難度的にはもう少し具体的に書いても良いように感じた.

******

第5問
(1)ごちゃごちゃしていて,見にくい,読みにくい,分かりにくい.
円だから,半径のことを言っていると読んで,OSを選ぶ.
「三角形ZDG,ZHSおよびZDC,ZHOの関係」とは「相似」のこと.
辺の対応を追って機械的に埋められる(カまで).
S,O,Hが一直線のとき,対応するG,C,Dも一直線.
DGが直径,Cが中心.
→何もわからなくても,埋めることは可能!

(2)図を描くのが大変.
前の(1)の段階で「どっちの円だ?」と思っていたら,ここで報われる.
2円が接していて,2直線にも接する形
→半径の差を使って直角三角形(定石の形)
LM・LKは方べきっぽい
→LS^2またはLJ^2で求める.
 LS^2は2円共通の方べきだから,LI=LJ
 →LはIJを2等分!
ZI:ZJ=3:5だから,IJは2に相当.
ZLは4に相当し,ZKは5に相当.
角の二等分線の性質から,LN:NK=4:5
メネラウスでZS:SNを求める
・Kからlに垂線KHを引くと,KH:SN=9:4
 相似比からZS:KH=4:1
1:4:√15の直角三角形を使ってZSを求めて,SNを求める.

******

やはり,整数と図形の最後は厄介な問題です.
誘導が無いとかなりしんどいですが,誘導が分かりやすくも無く・・・

「できるだけ楽をする」を一番に考えながらも,各大問の最終盤には「楽をさせてくれない」問題が待っていると思っても良いかも知れません.
特に,数学Aにその傾向が強いです.

時間的な制約のため,「思考vsごり押し」の葛藤があったら,後者を選ぶことに.
数学という枠で見るとテストの本来の目的とは違うかも知れませんが,その「判断」をするというのは,大きな枠で見たら思考・判断・表現力を試すものとして適当なのでしょう.


※しつこいかもですが,僕の本,けっこう良いと思うので,オススメしておきます.

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楕円と直線の2交点をつなぐ線分の中点の軌跡(円の場合との比較)

楕円のことを,円を使って考えたい.
誰もが考えることですが,1次変換が高校数学にない今,何かよい考え方はないものか?と考えたわけです.

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【円と直線の2交点をつなぐ線分の中点の軌跡①
 ~直線が平行に動くとき~】

円の中心と線分の中点をつなぐ直線が不変(弦の二等分線が中心を通るから)
この直線のうち,円の内部に入るところが軌跡.
接するときの接点2つをつなぐ線分(両端を除く)と見ても良い.


【円と直線の2交点をつなぐ線分の中点の軌跡②
 ~直線が定点を通るとき~】

弦の二等分線が中心を通るから,円の中心と定点をつなぐと,直角三角形.
円の中心と定点をつなぐ線分が直径の両端になる円のうち,元の円の内部に入るところが軌跡.


ここまでは,図形的な性質から,式を使わずに確認できます!
これを楕円でやったらどうなるでしょう?


【楕円と直線の2交点をつなぐ線分の中点の軌跡①
 ~直線が平行に動くとき~】

答えは,接するときの接点2つをつなぐ線分(両端を除く).


【楕円と直線の2交点をつなぐ線分の中点の軌跡②
 ~直線が定点を通るとき~】

答えは,楕円の中心と定点を通る楕円(中点が楕円の中心)のうち,元の円の内部に入るところが軌跡.
しかし,これでは,1つに決まらないですね・・・
結論は,元と相似で,同じ向きの楕円,です!


さて,楕円での軌跡はどう考えたら良いでしょう?

 座標平面で,方程式を置いて,解と係数の関係を使って・・・

もちろん,それでまったく問題ないです.
でも,今回は,定性的にいこうと思います!

そのために考えたのが,「円柱の利用」です.
(実質的には1次変換と同じです)

円柱を平面で切ると,断面は楕円です.

 

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長半径a,短半径bの楕円は,どうやって切り出せるでしょう?

底面が半径bの円柱を,角度θ(ただし,cosθ=b/a)だけ傾いた平面で切ると良いですね.

直線が動いて,【楕円】との2交点をつなぐ線分の中点を考えると,どうなるでしょうか?
それを底面に正射影すると・・・

直線が動いて,底面の【円】との2交点をつなぐ線分の中点を考えることになります!
それを断面に戻すとよいのですね.

 

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①では,円のときの,接点をつなぐ線分がそのまま楕円でも再現されます.
②では,円のときの,中心と定点を直径の両端にもつ円が,楕円になって再現されます.
その際,持ち上がり方を見ると,長半径と短半径の比はa:bで,しかも,それらは,切断面の楕円と平行になります!
長さが維持される方向(短半径),長さが最大に伸びる方向(長半径)が決まっているからです!

あまり読みやすくならなかったかも・・・

高校生や大人にも解いてもらいたい! 面白い図形問題 @2021関西の中学入試算数

【東大実績を伸ばし続ける「西大和学園」】
図において,角BAC=90°,AB=ACである.角ACD=30°,角ABD=15°のとき,ACとCDの長さの比を最も簡単な整数比で表せ.

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=========================

答えは「1:1」と分かるのですけど・・・導くのが難しかった.

<大人のごり押し解法①>

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→西大和の中3に見せたら,「こんなことやるヤツは居ない」と言われる(笑)

<大人のごり押し解法②>

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→15°のサイン,コサイン,タンジェントを求めるときに使う方法の応用.
 できれば三平方の定理を使わずにやりたい・・・

<これと同じ図形だから,これだ①>

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→あの形を知っていて、その形と一致するから、これで良し、という論法
 導いていないのがポイント!

<これと同じ図形だから,これだ②>

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→折り紙が好きな人はすぐに思いつくのだとか!
 上の図よりもこちらを思い出す生徒の方が多い.



聖武天皇に所縁のある,奈良県No1の学校と言えば「東大寺学園」】

BC=5の平行四辺形ABCDにおいて,CD上に点Fをとり,直線AFに関するDの対称点Eをとる.2直線AC,BEの交点をGとすると,角FAG=45°,角ACB=60°となった.
(1) 角DAEを求めよ.
(2) 三角形AEDの面積を求めよ.
(3) 三角形GCE,GABの面積の比が6:11であるとき,この2つの三角形の面積の和を求めよ.

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=========================

かなり考えました.
B,G,Eは一直線上ですが,Dはその直線上ではありません.

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(1)(2)は易しいと思いますが,敢えて問われているということは,続く問題のヒントになっているということ.
(1)の30°を使って,(2)の面積を出しています.正三角形を半分にして得られる直角三角形と見たら,斜辺と高さの比が2:1になることが分かります.これを使って高さを出せます.
(3)が難しい・・・どこから手を付けてよいやら.
「三角形AEDの何倍か?」と考えることだけは分かるのですけど.

これは東大寺中3生に解いてもらったときの板書です((3)は全員詰まっていました).
「三角形AED=⑤だよ」と伝えるだけで,何人かは解けてしまいました!流石!
   ⑤+⑥=⑪
だからですね.
「三角形GBCをくっつけてみる」が当たりです.

   三角形GAB+三角形GBC=平行四辺形の半分

   三角形GCE+三角形AED+三角形GBC=平行四辺形の半分
  (BC,ADを底辺として,高さの和が,平行四辺形の高さと一致するから)

から,

   三角形GAB=三角形GCE+三角形AED

が導けるのです.
   ⑤=25/4 ∴ ①=5/4
となって,答えは
   ⑰=85/4=21.25
 
【関西女子校の最高峰「神戸女学院」】

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=========================

これもかなり困りました.
複素数平面で考えて回転を利用して,全部の座標を出してしまおうか,とか(笑)

メネラウスの定理などを駆使して,大人のごり押し解答>

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→ツライ・・・

<実は,回転が“肝”だった!!>

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→こう見ることができたら,(2)の方が易しい!!


算数ってどんなイメージでしょう?
三平方を使ってはダメとか,座標を使ったら反則とか,そういう感じに思っているかも知れません.
でも実は,そんなもんじゃなくて,手段を選ばず1つ1つの問題と向き合っていく戦いです.

知っているものだったらためらうことなく知識で解く(西大和)し,
くっつけるという定石解法が思い出せずに悔しい思いをする(東大寺)し,
1つの視点の変更で一気に世界が開ける(神戸女学院)し.

高度な中学入試算数を経験している人にとって,共通テストの「思考・判断・表現」問題なんて,何の苦労もないほど易しく感じるようです.
「手段を選ばない」「できるだけ楽な方法を」という感覚が大事なのでしょうね.

〔拙著からのオススメ〕
❶そういう問題をたくさん集めました!
    
※灘中,算数オリンピックから,東大まで

❷受験算数エリートたちは数学とどう向き合っているか?
    
※本の中ではA校と書いていますが,もちろん,あの学校のことです(笑)
 ❶でも,その中学の問題をたくさん取り上げています.

大学入学共通テスト・思考ベースでの詳解 ===数学Ⅱ・B===

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※問題はお手元にあるという想定です!

『総評と凡例』

高度な知識があれば一瞬で解ける問題が多い
(第1問〔1〕,〔2〕,第2問,第5問)
→知識で解く方針での指導に偏らないように注意したい!
選択式の問題が多く,計算量が恐ろしく少ない
→グラフや大小関係を選ばせるなど,定性的な数学の要素が強い
知識・技能は,ストレートに問われる形式が多い一方,典型解法で解く問題は非常に少ない.
→基本知識を自由自在に活用できることが重視されていることは間違いない!
知識技能で半分くらいの配点,加えて選択式の問題が多いため,平均点は高くなると思われる.


  “  ” =思考・判断力
【 】=確定ポイント

定性的数学度:
 ☆☆☆☆☆=定量的に解くだけの数学らしい問題
 ★☆☆☆☆=計算ベースの旧来型の問題
 ★★☆☆☆=旧来型より思考要素が強い問題
 ★★★☆☆=計算要素が少なく,共通テストらしい問題
 ★★★★☆=ほぼ計算ゼロで,共通テストらしい問題
 ★★★★★=計算ゼロで,もはや数学とは言えない問題


第1問
〔1〕(定性的数学度:★☆☆☆☆)
(1)合成して最大値
(2)そのままの最大値
 文字入りでコサインの合成(やや不慣れでも「加法定理」の使用指示に従う)
 文字pによる場合分け→選択式なので,選べる

〔2〕(定性的数学度:★★★☆☆)
(1)指数,対数の計算
(2)正しい恒等式の選択→グラフの対称性
 →いくつか代入して成り立つことが「必要」だが,この形式なら

  「十分」は不要
(3)会話による発展→重要な着眼点(“答えは1つ”と分かるので,【必要条件】で1つを特定)

 →「βに何か具体的な値を代入」「(1),(2)を利用」というヒント
  から,β=0を代入してみようと感じ取る
  β=αや-αでも良いが,具体的な値とは言いにくいか・・・
 →「[ネ]以外の三つは不成立,[ネ]のみ成立」という文の並び順から,
  NGを3つ探す“方針決定”

第2問(定性的数学度:★★★★☆)
(1)多項式の1次以下の部分が接線を表す(知る人ぞ知る事実)ことへの“気づき”を与える流れ
 →気づきを促すよう過度なほど繰り返し問う
  ただし,理由の考察を行っていない!
 (会話で事実を伝える形式は“真である保証”だが,ここは,
  法則に気付くだけでよく“数学的でない帰納→演繹”で算数的)
 差がax^2になることを利用した,簡単な積分計算(文字が少し煩雑)
 正比例になることを確認して,そのグラフを選ぶ(中学生レベル)
(2)(1)で確認した法則が3次式でも使えることを繰り返し確認(あまりにくどい)
 差がax^3+bx^2で,【因数分解,a・bの符号】だけからグラフが決まる(【微分は不要】)
 →2次関数も平方完成不要,因数分解から最大値,のストーリーだった
 (グラフの定性的な捉え方!)
 その後に,x軸との交点をきいている(前の設問は,微分でグラフを描か
 せる想定か?)しかし,その後,改めて,極値をとるxをきいている
 (どういう想定なのか,分からない・・・)

第3問(定性的数学度:★★★☆☆)
(1)二項分布
(2)正規分布表,確率の大小比較
  (p_4を求めずに,【Xの不等式】から特定可能!)
(3)信頼区間だが,直接求めなくても良い
  (両端の和=平均×2,両端の差=範囲の幅)
 得られる区間の意味,実際の平均との関係に関する理解度が問う
 →【統計の意味】を答えるもので,計算では解けない
(4)別標本の意味,大小関係を選択
 →【統計の意味】を答えるもので,計算では解けない
(5)別標本での信頼区間の意味,大小関係を選択
 →【統計の意味】を答えるもので,計算では解けない

第4問(定性的数学度:★★☆☆☆)
(1)等差数列,等比数列,漸化式の変換,nに関する恒等式
 →恒等式部分は,実際には答えはオープンで,数学的思考は不要(読解)
(2)和の公式
(3)①と似た漸化式で式変形(正であるという事実は,(1)末尾で述べ
   られている)
 【得られた漸化式の意味】から,数列の性質のみを特定(一般項は求めない)
(4)①と似た漸化式(文字入り)で式変形
 漸化式が0<公比<1の等比数列を定めるための必要十分条件
 (数ⅠAで「集合と命題」の出題ナシ)
 →一般項を求めないため,後味の悪い感じが残る


第5問(定性的数学度:★★☆☆☆)
(1)正五角形の性質,aをできるだけ残して計算したい
 →aを求める部分は,やってくれている(“鵜呑み”にする)
(2)正十二面体(正五角形の性質)
 |A_1A_2|^2の意味(対角線の長さの2乗,鵜呑みにしたaの利用)
 |A_1A_2|^2の前の|OA_2-OA_1|^2は前設問では邪魔だが,ここで活用(内積の展開)
 対称性の利用を既知の値を使った式で与える→計算はaをできるだけ残して
 分かったベクトルの情報を,図形の言葉に翻訳(かなり多くの情報が本文で
 与えられている)


拙著のタイトル:
 ほぼ計算不要の思考力・判断力・表現力トレーニング 数学ⅠA
 ちょっと計算も必要な思考力・判断力・表現力トレーニング 数学Ⅱ
に沿ったテストになってくれました!
(実際はⅠAがちょっと必要,ⅡBがほぼ不要でしたが)

まだお手にされていない方は,ぜひ,こちらから.
(数学B,数学Ⅲも作成中です.しばらくお待ちください!)
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大学入学共通テスト・思考ベースでの詳解 ===数学Ⅰ・A===

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※問題はお手元にあるという想定です!

『総評と凡例』

計算の負担は軽減,読解の負担増,出題の意図を読み取って“論点を絞り込む”ことが重要.
会話は,“無条件で使ってよい情報の提供”“重要なヒントの提示”にのみ使われ,「議論を深める」系は無かった.
知識・技能は,ストレートに問われる形式が多い.


  “  ” =思考・判断力
【 】=確定ポイント

定性的数学度:
 ☆☆☆☆☆=定量的に解くだけの数学らしい問題
 ★☆☆☆☆=計算ベースの旧来型の問題
 ★★☆☆☆=旧来型より思考要素が強い問題
 ★★★☆☆=計算要素が少なく,共通テストらしい問題
 ★★★★☆=ほぼ計算ゼロで,共通テストらしい問題
 ★★★★★=計算ゼロで,もはや数学とは言えない問題


第1問 
〔1〕(定性的数学度:★★☆☆☆)
(1)2次式の因数分解
(2)解の公式,有理化,ルートの近似値
 →【別】解と係数の関係,5/x=tの2次方程式で解の配置も
(3)会話(必然性はない)で,注目すべき場所だけを提示(その後の解法は自分で思考・判断)
 →“論点の絞り込み”

〔2〕(定性的数学度:★★★☆☆)
(1)cos→sin,面積,sin(180-A)=sinA ☜これがこの問題で最後まで使われる
(2)正方形の面積=辺の長さの2乗,余弦定理を“連想” ☜「余弦は三平方の拡張」
(3)sin(180-A)=sinA,(1)で2つが等しかったことからの“気づき”
 →具体的に数値を求めず,関係性だけを特定(“論点の絞り込み”)
(4)2辺が同じなら夾角の大小が対辺の大小(「余弦定理」のイメージ,“論点の絞り込み”)
 sinが同じなら,対辺の大小が,半径の大小(「正弦定理」のイメージ,“論点の絞り込み”)
 実験結果の“一般化”で,角度の情報から,半径の情報へ(“論点の絞り込み”)


第2問
〔1〕(定性的数学度:★★☆☆☆)
(1)“初見の用語の理解”
(2)【直線は2点,傾き&1点で決まる】→問題文の“情報取得”(傾き)
 求めるものの認知(最大になるときのx)
 【因数分解された2次関数からも最大値は求まる(対称性)】
 ちょっと計算


〔2〕(定性的数学度:★★★★★)
もはや,数学ではないのでは・・・計算問題が0という,衝撃的な問題
グラフの特徴のとらえ方(端の分布,最大・最小→四分位数の順にチェック)
“ヒントの意味を把握”(合計が全体→【上下対称】)


第3問(定性的数学度:★★☆☆☆)
(1)反復試行,条件付き確率
(2)(1)から得られる重要な“気づき”を言語化
(3)(2)を会話(必然性はない)で説明.計算がメンドクサイ.
 →“論点の絞り込み”に会話は使われた
(4)会話により,過度な一般化を認めさせた上で,その“演繹的活用”(真と保証があれば“鵜呑み”に!)
 数値を求めるのではなく,大小を確定させるだけ(“論点の絞り込み”)
 →【Aが一番小さい】が分かれば確定する!


第4問(定性的数学度:★☆☆☆☆)
整数なのに,確率のような設定(15角形の頂点を動く動点,偶奇で動きが変わる)
(1)簡単な不定方程式の特殊解(自然数は1つしかない)
 →後半は不要だが,奇数の逆回転を読み落としていても,式を見たら気づけるよう配慮か?
  単に,(2)へのつながりか?
(2)(1)を8倍した式だが,解は8倍ではない(軽度の“誤答系”か?)
 特殊解を改めて探す手間を省くための誘導とも見える
(3)(*)の“読解”により,5x-3y=8,23,-7などを考える
 →【xだけ±3すると,右辺の値が15ずつ変わる】☜改めては特殊解を求めない!
(4)全パターンを列挙するか,
 5回でP_8でそこから次に到達する点で選択肢にあるのは? →P_13


第5問(定性的数学度:☆☆☆☆☆)
角の二等分線の性質,直径から90°→三平方
図が描きにくい円,「rを用いて表す」と書いておいてくれると助かる.
方べき(使う公式を明示することで,知識・技能の習熟度だけを測れるように工夫しているのか?)
内心の性質,相似
4点が同一円周上
 →【両立することはない!優先的に調べるのは90°が見える方!】
  “高度な言い換え”→【H,B,Qを通る円周上に,DまたはEがあるか?】

拙著のタイトル(ほぼ計算不要の思考力・判断力・表現力トレーニング 数学ⅠA)に沿ったテストになってくれました!
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2021年・灘中学の算数 =2日目=

灘中の算数、二日目。
問題は四谷大塚さんのところにありました.

しかし,難しいですよ.
“さんずい”に“むずかしい”で“灘”ですからね.
難し過ぎて涙を流すくらいだ,という意味かも知れません.
[1]
文字式を使わずに僕は解けません(笑)
領域を書いて、考えるものをkとおいて、共有点(ただし、格子点に限定)が存在する条件を考えましょう(笑)
本当は,できるだけ多くXを入れて考えるのだと思います.
 
[2]
mod 2のパスカルの三角形(東大やん!?)。
右下が全部偶数と見抜き、漸化式っぽく変化を追う。
※現役灘校生(高2)に解説したら,「おぉ!」って言っていました.

[3]
待望の算数。延長して相似比。しかし、計算量は、共通テストの確率と同じくらい😢

[4]
(5)を京大くらいで出しても、正答率は低いと思う。僕は正八面体での動点の移動と見た。対称性がないのに気付かない答案続出か?CD が奇数回だと、2面の間の移動で戻って来れない。これ、ムズい!
偶置換、奇置換?群論?大学の数学?
たぶん、算数では、正順と逆順で見るのだろう。
※現役灘校生(高1・2)と一緒に解く時間を作りましたが,「無理!」みたいです(笑)
 灘中受からんね,とお伝えしておきました.
 あの頃は賢かった,とみんな言います.
 正八面体と見れたのは,けっこうファインプレーだったようで,生徒から褒められました.
 算数で褒められると嬉しい(笑)

[5]
積分ですね(笑)ヒントがそうですもん。
この部分だけ積み上げたら四面体で…あとは柱で…、と頑張って、何とか算数で解ききれました😊

※これも灘校生と考えました.
 うまく分割して一瞬で解けている子もいました.
 さすが,元灘中生(いまは灘高生).

2021年・灘中学の算数 =1日目=

やっと灘中一日目の算数を解き終えた。
やはり計算ミスしてしまう😢
方程式で解けるのが多いのが最近多いような気がします。僕にはありがたい(笑)
【3】【5】【6】【7】【8】【9】はそのまま大学入試になりそうです。
【6】は面白いけれど、灘中受験生は勘で当てそう。
【7】は正当率低そう。
【9】【11】は図形での比の性質を理解できているかが問われる良問と思いました。
【12】は87年東大文系の角を削った立体。

この式,何を表しているでしょう?

 

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左辺はすべて同じです.
右辺の数値がちょっと変わると,図形はどう変わる?
かなり大胆に変化します(笑)
これらが何であるか,定性的にとらえてパッと分かれば,プロですね.
グラフ描画ソフトを使って書かせても面白いです!
なぜその図になるかを考えるのも楽しいし,勉強になるかも.

答えはまた後日.

正六角形は1つの式で表せるの?

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こんなことを考えていても役に立たないと思っていましたが,授業中の話の流れで高校1年生に発表することになりました(笑)
やってて良かった.
ということで,ブログでもご紹介.
かなり定性的なアプローチですので,想像力をもって読んでもらえたらと思います.

 

さて,あれで正六角形だと言われても,何が何だか分からないですよね.
作成の流れを紹介します.

まず,もとになる考え方は,正方形の方程式

  |x|+|y|=1

 

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これが正方形になる理由は次のように分割して考えたら分かります.

・x≧0,y≧0においては,x+y=1
・x≧0,y≦0においては,x-y=1
・x≦0,y≧0においては,-x+y=1
・x≦0,y≦0においては,-x-y=1

細かく見たらこうなりますが,そんなに深く考える必要はありません!
だって,絶対値記号内の符号によって適当に分割すると,得られる式は,x,yの1次式です.
つまり,何らかの線分(か直線か半直線)で構成される図形になります.
線分は,端点の2点決まれば確定します.
絶対値記号内のx,yが0になるところで分割されるから,そこが端点になります.

 x=0のとき,y=1 または y=-1
 y=0のとき,x=1 または x=-1

となるように設定しておけば,勝手にこれら4点を線分でつなぐ図形になります.
つまり,正方形になります.

これと同じように考えると,正六角形は,3本の直線

  y=(√3)x,y=-(√3)x,y=0

で分割して考えることになります.

f:id:phi_math:20210108114130p:plain


だから,とりあえず,

  |y-(√3)x|+|y+(√3)x|+|y|=1

を考えてみます.
しかし,端点が

  (±1,0),(1/2,±(√3)/2),(-1/2,±(√3)/2)

とはなりません.
適当な係数を付けることが必要になることが分かるので,

  s|y-(√3)x|+t|y+(√3)x|+u|y|=1

などとおいてみます.
対称性からs=tとなることは何となく分かりますが,気づかなくても,上記の点を代入することで,s,t,uの値を求めることができます(連立方程式の問題ですので求めてみてください).

分数があるのはイヤなので分母を払うと,あの方程式が得られるのですね.

  |x|+|y|=1

を定性的に理解していたら,それの応用として,正六角形も作ることができます.
知識として知っているだけでは,絶対に作れないと思います.

こういうのが思い通りになるのが,数学の自由性だろうと思います.
神にでもなったような気分が味わえます(笑)
しっかりイメージをもって真に理解することの重要性が少しでも伝わればな,と思います.

そういうのを普通の問題でやれるようになるためのイメージ重視のアプローチが,私の本で最重要視していることです.
   👇       👇

数B,数III編の完成まで,しばらくお待ちください!

続)和を求めずに,和を求める

2回連続で,禅問答のようなタイトル(笑)
求める和も同じです.
違うのは,漸化式.

a_n=n*3^(n-1) (n=1,2,3,‥‥) のとき,a_nは等差数列×等比数列なので,

 ①等差数列で割ったら,等比数列

 ②等比数列で割ったら,等差数列

です.

①からは,数列{a_n/n}が公比3の等比数列

  a_(n+1)/(n+1)=3×a_n/n

が得られて,{a_n}の漸化式にすると

  a_(n+1)=3(n+1)×a_n/n

です.これはこれとして面白いですが,今回は②で頑張ります. 

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 数列{a_n/3^(n-1)}が公差1の等差数列で

  a_(n+1)/3^n=a_n/3^(n-1)+1

が得られて,{a_n}の漸化式にすると

  a_(n+1)=3a_n+3^n ‥‥(*)

です.

(*)からは,

 

f:id:phi_math:20210101231744p:plain


「消える差を利用して和を求める」を漸化式で実現できるのですね!

同じようなことを別ルートでもやることができて,それが今回のネタ.

まず,(*)の3^nを消去して,別の漸化式を作ることを考えます.
項数が1つ増えて,3項間漸化式にします.

(*)のnをn+1に変えると,

  a_(n+2)=3a_(n+1)+3^(n+1)

3^(n+1)を消すために,(*)の両辺に3をかけます.

  3a_(n+1)=9a_n+3^(n+1)

2つの差をとると,3^(n+1)を消すことができて

  a_(n+2)-3a_(n+1)=3a_(n+1)-9a_n

 ∴ a_(n+2)=6a_(n+1)-9a_n ‥‥(#)

普通の漸化式の問題だったら,(#)から(*)を作ることが多いですが,一方通行だけでは,本当に分かっているとは言えないのかも知れませんね.

さて,(#)を利用して,どうやったら和が分かるか?
もちろん,差を使います.

a_nを「消える差」を使って表します.
だから,a_n以外を差にします.
まず,

  a_(n+2)-a_(n+1)=5a_(n+1)-9a_n

とできて,左辺がいい感じの差になりました.
さらに,

  a_(n+2)-a_(n+1)=5{a_(n+1)-a_n}-4a_n

と変形できるので,右辺にもいい感じの差が現れました.
残っているのはa_nだけです.だから,

  a_n=(5{a_(n+1)-a_n}-{a_(n+2)-a_(n+1)})/4

とできてしまいますね.
この状態で足していくと,どんどん消えてしまって,「末項の前半」と「初項の後半」だけ残ります.

  Σa_n=(5{a_(n+1)-a_1}-{a_(n+2)-a_2})/4

a_1=1,a_2=6なので,当てはめてみると良いのですね!

 和は,消える差を利用したら求まる

 漸化式は,一般項から逆算できる

という観点は,数列で思考・判断・表現力を重視するときに必須のものになると思います.

※補足※
差を作るための変形をしましたが,

  a_(n+2)=6a_(n+1)-9a_n ‥‥(#)

の両辺の和を直接考えることもできます.

  a_3=6a_2-9a_1

  a_4=6a_3-9a_2

  a_5=6a_4-9a_3

    :

  a_(n+2)=6a_(n+1)-9a_n

を全部足してみます.

  S_n=a_1+a_2+a_3+‥‥+a_n

を基準にして考えると,少し調整が必要で

   S_n +a_(n+2)+a_(n+1)-a_2-a_1

   =6{S_n +a_(n+1)-a_1}-9S_n

となります.ここからも

  S_n=(5{a_(n+1)-a_1}-{a_(n+2)-a_2})/4

を導くことができますね.
求めたいものを使って全体を表せないか,と考えると良いでしょう.

  a_(n+1)=3a_n+3^n ‥‥(*)

からも似たような方法で考えられますから,チャレンジしてみてください!


 階差数列を利用した前回のものも,ぜひ.

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和を求めずに,和を求める - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

 

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