yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

場合分けって,色々ないですか?

「場合分け」のこと,実はあんまり分かっていないかも知れません.
2つの場合分け,区別できていますか?

問.
aを実数の定数とする.
2次関数 f(x)=x^2-2ax の 0≦x≦1 における最小値を求めよ.

解.
f(x)=(x-a)^2-a^2 だから
・0≦a≦1 のとき,最小値はf(a)で,-a^2
・a<0 のとき,最小値はf(0)で,0
・1≦a のとき,最小値はf(1)で,-2a+1

これで終わり.


 文字定数 a の値によって最小値の
 答えが変わるときに,
 「分類」して答える

というのが,ここでの場合分け.
答えが何種類あるかを分類して,どういう a のときにどの答えになるか,整理するのです.


次は,場合分けで有名な絶対値.
|x| を

 |x|=±x ☚間違い!

と書いてはダメ.

・x≧0 のときは |x|=x
・x<0 のときは |x|=-x

です.
±xと書くと,各 x について,|x|の値が ±x の2つになっているという意味です.

では,この問題は?


問.
|x|+|x-1|=5を解け.


解.
・x<0 のとき,(-x)+(-x+1)=2
 ∴ x=-2 で,これは x<0 を満たす.
・0≦x<1 のとき,(x)+(-x+1)=2
 ∴ 1=-2 となり,これを満たす x は存在しない.
・2≦x のとき,(x)+(x-1)=2
 ∴ x=3 となり,これは 2≦x を満たす.
これで終わってはダメで,
  x=-2,3
が答え.


“文字定数 a の値によって答えが変わるときに,「分類」して答える”ではないのですよね.

 未知数 x を,x<0,0≦x<1,1≦x の
 それぞれの範囲で探す


ということをやっています.
これを集合で見ると・・・

 

f:id:phi_math:20210304115944p:plain

同じ場合分けという言い方に

 

 文字定数で「分類」して答える

 

 

 範囲を「分割」して考え,和集合を考える

 

というのがあるのです.

問題によっては,ある文字を,途中までは文字定数として考え(分類),途中から未知数・変数として考える(分割)こともあります.

「場合分け」と一言で言っても,色々あることを理解しておきたいですね.