教科書の漸化式に関する部分に,次のような記述があります.
【漸化式がa_(n+1)=a_n+(nの式)の形のとき,階差数列を利用する方法で,一般項が求められることがある.】
何とも意味深な書き方です.
求められることがある.
では,求められないこともあるのか?
ここだけを読んで考えてもよく分かりません.
関連する部分を調べてみましょう.
一般項の説明は,次のようになっています.
●一般項の定義●
a_n=2n-1のように数列{a_n}の第n項a_nがnの式で表されるとき,これを数列{a_n}の一般項という.一般項が与えらられると,nに1,2,3,……を代入することにより,その数列の各項を求めることができる.一般項を用いて{2n-1}と表すこともある.
➤nの“式”で,n=1,2,3,……を“すべて”代入できるものが,一般項か?
“式”の定義が明確ではない気がするけれど,とりあえずこれが定義だとすると・・・
●{a_n}:-1,1,-1,1,……
a_n=(-1)^n は一般項
a_(2m-1)=-1,a_2m=1 は一般項ではない
●{a_n}:-5,2,4,8,……
a_1=-5,a_n=2^(n-1) (n≧2) は一般項ではない
➤「第n項をnの式で表せ」なら,nの値によって場合分けして答えても良いが,「一般項を求めよ」では分けるのは許されない
よし,一般項を求めよう!
初項だけ本来の値よりも6小さくなっているから,
a_n=2^(n-1)-6*[1/n]
で表せますね!
なお,ガウス記号は,整数部分で,
{[1/n]}:1,0,0,0,0,……
●階差数列と一般項●
{a_n}の階差数列を{b_n}とすると
n≧2のとき a_n=a_1+Σ_(k=1)^(n-1) b_k
この“式”ではn=1を代入できないから,一般項とは言えない!
a_1=0,a_(n+1)=a_n+1/n^2
など.
だから,和が計算出来て,nを用いた式で表せて,しかもn=1でも成り立つときのみ,「一般項が求められる」のでしょう.
そうそう,n=1が例外になるタイプ,もう1つ思いつきますね.
●数列の和と一般項●
数列{a_n}の初項から第n項までの和をS_nとすると
初項は a_1=S_1
n≧2のとき a_n=S_n-S_(n-1)
上記が一般項の定義であるとすると・・・
S_n=n^2である数列{a_n}の一般項を求めよ.➤OK!
S_n=n^2-1である数列{a_n}の一般項を求めよ.➤NG!
S_n=n^2-1である数列{a_n}の第n項を求めよ.➤OK!
となるのかも知れませんね.
つまり,S_n=n^2-1である数列{a_n}は,
a_1=1-1=0
n≧2のとき,
a_n=(n^2-1)-{(n-1)^2-1}=2n-1
で,初項だけ例外的です.
{a_n}:0,3,5,7,9,……
一般項を求るなら・・・
またガウス記号では面白くないので,
a_n=lim(m→∞)(2n+1-(1/n)^m)
とか,
a_n=min{2n-1,3(n-1)}
とかね.
●おまけ●
ふと思ったのですが,
a_1=0,a_(n+1)=a_n+1/n^2
の例,n≧2のとき
a_n=Σ_(k=1)^(n-1)(1/k^2)
で,n=1を代入できず,一般項とは認められないわけですが・・・
a_n=Σ_(k=1)^(n)(1/k^2)-1/n^2
にしてしまえば,n=1でも成立してしまいますね(笑)
これは,一般項と呼べるのでしょうか??
つまり,「Σ_(k=1)^(n)(1/k^2)-1/n^2」はnの“式”なんでしょうか?
Σを用いたものは,nの“式”に含めない可能性も否定できないな,と気づいてしまい,ここまでの議論は,前提が誤っている可能性もある,ということになってしまいました.
謎は深まるばかり・・・
(結論を期待されていた方,ごめんなさい)