yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

n倍角の公式を表す多項式(チェビシェフの多項式)の係数の秘密⑤

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チェビシェフの多項式T_n(x)は,

 x^k (k≧2)の項の係数は,2^(k-1)の倍数になる

のでした!
漸化式を用いて数学的帰納法で証明しましたが,別の方法も考えてみましょう.

ここで,複素数が再登場です!

  T_6(x)=32x^6-48x^4+18x^2-1

を別ルートから考えます.

  z^6+z^(-6)=(z+z^(-1))^6-6(z+z^(-1))^4+9(z+z^(-1))^2-2

と計算できたのですが・・・zに何を代入しましょうか?

  z=cosθ+i sinθ

ではどうでしょう?

  z^(-1)=(zの共役複素数)=cosθ-i sinθ

 ∴ z+z^(-1)=2cosθ

であり,

  z^6=cos(6θ)+i sin(6θ)

  z^(-6)=cos(6θ)-i sin(6θ)

 ∴ z^6+z^(-6)=2cos(6θ)

です.
ということは,

  2cos(6θ)=(2cosθ)^6-6(2cosθ)^4+9(2cosθ)^2-2

となるのですね!

この状態での右辺は,(cosθ)^kの係数は2^kの倍数です!
両辺を2で割ると,T_6において,

 x^k (k≧2)の項の係数は,2^(k-1)の倍数になる

と分かるのです.


ということで,一般的に言っておきます.
対称式の性質として,

  z^n+z^(-n)

は,z+z^(-1),z×z^(-1)の多項式として表せます.
z×z^(-1)=1であるから,z+z^(-1)の多項式として表せるのです!
帰納法で示せます)


だから,z=cosθ+i sinθを代入することで,z+z^(-1)=2cosθより

  2T_n(cosθ)=f(2cosθ) 👈f(x)は係数が整数のn次式

となります.
よって,T_nにおいて,

 x^k (k≧2)の項の係数は,2^(k-1)の倍数になる

と分かるのですね.


これで,かなりスゴイことを示す準備が揃いました!
乞うご期待.

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