ド・モアブルの定理で,特に n=3 のとき,
(cosθ+i sinθ)^3=cos(3θ)+i sin(3θ)
z=r(cosθ+i sinθ) (r>0)とおくと,
z^3=r^3 {cos(3θ)+i sin(3θ)}
だから,
z^3 の偏角は 3θ ‥‥(*)
ですね. と,思いきや・・・
(*)は本当に正しいですか??
偏角の定義を思い出してください!
z=r(cosθ+i sinθ) (r>0)と表されるとき,z の偏角は
arg z=θ+2mπ (m は整数)
であって,arg z=θではありません.
偏角の1つがθです.
偏角をθと置いているのではありません!!
では,z^3 の偏角は
arg (z^3)=3×arg z ‥‥(#)
でしょうか?
実は,(#)も,間違いです!!(と敢えて主張してみる)
なぜか?
z^3=r^3 {cos(3θ)+i sin(3θ)}
と表せるので,z^3 の偏角の1つが3θで,
arg (z^3)=3θ+2kπ (k は整数)
です.
一方,3×arg z はと言うと,
3×arg z=3(θ+2mπ)
=3θ+6mπ (m は整数)
です.
3θ+2mπ,3θ+4mπ
もz^3 の偏角なのに,3×arg z では表せていないのです!
屁理屈のような話をしますと,
arg (z^3)=arg z+arg z+arg z
と書くなら,大丈夫だと思います.
3つのそれぞれが,“+(偶数)π”を含んでいて
arg (z^3)=(θ+2mπ)+(θ+2m'π)+(θ+2m"π) (m,m',m"は整数)
=3θ+2kπ (kは整数)
とできるからです.
同じように見える3つの arg z が別のものという,少し奇妙な状況ですが.
でも,分かりにくい!!
・極形式で考えて,その都度,偏角を考えるときに“+(偶数)π”をくっつける
・角度の範囲をはっきりさせて考える
という風に扱うのが良いですね.
ということで・・・
ド・モアブルの定理は,
「極形式で,このような表示が可能」
という意味ですから,それを偏角の言葉に直すときには注意が必要になるのです.