yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

n倍角の公式を表す多項式(チェビシェフの多項式)の係数の秘密③

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ド・モアブルの定理と二項定理で,n倍角の公式を作るのは,けっこう有名かも知れませんが,これから内容を発展させていくなかで触れておきたいな,ということで.

  (cosθ+i sinθ)^2=cos(2θ)+i sin(2θ)

  (cosθ+i sinθ)^2=(cosθ)^2+2i sinθcosθ-(sinθ)^2

において,実部は等しいから

  cos(2θ)=(cosθ)^2-(sinθ)^2

です.(cosθ)^2+(sinθ)^2=1を利用してcosθだけの式にすると

  cos(2θ)=(cosθ)^2-{1-(cosθ)^2}=2(cosθ)^2-1

となることが分かります.だから,

  T_2(x)=2x^2-1

とおくと,

  T_2(cosθ)=cos(2θ)

となるのです.

同じことを6乗でやってみると・・・

まず,ド・モアブルの定理は

  (cosθ+i sinθ)^6=cos(6θ)+i sin(6θ)

で,二項定理は・・・

パスカルの三角形

              1
            1  1
          1  2  1
        1  3  3  1
      1  4  6  4  1
    1  5 10 10  5  1
  1  6 15 20 15  6  1

から係数が分かって,

   (cosθ+i sinθ)^6

  =(cosθ)^6+6i(sinθ)(cosθ)^5-15(sinθ)^2(cosθ)^4

   -20i(sinθ)^3(cosθ)^3+15(sinθ)^4(cosθ)^2

    +6i(sinθ)^5(cosθ)-(sinθ)^6

です.実部を比較し,(cosθ)^2+(sinθ)^2=1を用いると

   cos(6θ)

  =(cosθ)^6-15{1-(cosθ)^2}(cosθ)^4

   +15{1-(cosθ)^2}^2(cosθ)^2-{1-(cosθ)^2}^3

  =32(cosθ)^6-48(cosθ)^4+18(cosθ)^2-1

となるのです.
よって,

  T_6(x)=32x^6-48x^4+18x^2-1

です.

複素数極形式は,三角関数と直結しますね!

今回は,漸化式を使わなくても,このような方法でn倍角の公式を導ける,という話でした.

複素数との別の関係性も,また後日,お見せしますね!

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