yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

n倍角の公式を表す多項式(チェビシェフの多項式)の係数の秘密①

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チェビシェフの多項式は,グラフがピタッとしているから,気持ちいいですね.
TはチェビシェフのTかと思いきや,Chebyshevがチェビシェフなので,違うんですね.
三角多項式ともいうようなので,trigonometric polynomialのTかも知れません.

 poly=多

ですね!ポリゴン,ポリエチレン,ポリノミアル.

チェビシェフの多項式(以下,T_n(x)をT_nと略記します)は,3項間漸化式

  T_0=1,T_1=x

  T_(n+2)=2x T_(n+1)-T_n

で定まるので,色んな性質を帰納法で示せます.

漸化式から,次数が1ずつ増えていくことが分かって,T_nはn次式です.
n≧1において,最高次の係数は,2倍ずつ変化していくから,T_nのx^nの係数は2^(n-1)です.

  T_1=1x

  T_2=2x^2+…

  T_3=4x^3+…

  T_4=8x^4+…

  T_5=16x^5+…

です.これで赤字部分の法則がずっと続くことが分かります!

もう少し詳しく見ていきましょう.

  T_2=2x(x)-1

  T_3=2x(2x^2-1)-x

T_(偶数)はx^(偶数)しか現れないし,T_(奇数)はx^(奇数)しか現れないことが分かります.

  T_4=8x^4-8x^2+1 👈偶数次ばかり

  T_5=16x^5-20x^3+5x 👈奇数次ばかり

だから,T_3,T_5などのT_(奇数)は定数項が現れません!

また,T_2,T_4などのT_(偶数)の定数項は,

  1,-1,1,-1,……

が交互に現れます.
漸化式の最後の部分が,「-T_n」となっているからです.

これが分かっていると,T_(奇数)のxの係数の法則が分かります.

  T_2=…-1
  T_3=…-2x-x=…-3x
  T_4=2x(…-3x)-(…-1)=…+1
  T_5=2x(…+1)-(…-3x)=…+5x

となっていくので,T_1,T_3,T_5,T_7,……のxの係数は

  1,-3,5,-7,9,-11,……

となるようです.

これで,色を付けた部分の法則が正しいことは全部分かりましたね!
他にも色々と分かることがありそうなので,またそれは次の機会に.

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