自然数は無数に存在します.
1,2,3,4,5,……
自然数は序数(順番を表す数)としても使われて,数列を作るのに使われます.
a_1=1, a_2=3, a_3=5, a_4=7,……
これは正の奇数を並べた数列です.
1,3,5,7,……
は無限個あるのですが,上のように1つの数列として表現できるから,自然数と同じだけの“無限個”があると考えることができます.
自然数の一部が奇数ですが,“部分が全体と同数ある”という奇妙な現象が起こっています.
“無限個”は数ではないので,そういうことが起こります.
より正確に言うと,“無数っぷりが同程度”という意味なので,そんなに奇妙でもないですね.
また,整数全体を
0,1,-1,2,-2,3,-3,……
というルールで,1つの数列として並べていくことができるので,整数全体も自然数全体と“無数っぷりが同程度”と言えますね.
実は,有理数も,自然数と“無数っぷりが同程度”なのです.
例えば,0と1の間の有理数(分母・分子が整数の分数として表せる数)について
1/2,1/3,2/3,1/4,3/4,1/5,2/5,3/5,4/5,1/6,5/6,……
という風に,1つの数列として並べることができますからね.
もう少し複雑な構成をすれば,有理数全体を項にもつ数列を作ることができるのです.
だから,有理数の“無数っぷり”は,自然数の“無数っぷり”と同程度なのです.
自然数と同程度の無数っぷりというのは,順番をつけることができる,つまり,順に数えることができるくらいの無数っぷり,ということで,カウント可能,可付番,可算などと呼ばれます.
無数っぷり,というのも,普通は,「集合の濃度」という言葉になります.
この文脈からすると・・・最初の関数において,
上は,順番を付けることはできるが,数え切れない
下は,順番を付けることすらできず,数えることさえできない
とあったことから分かるように,
無理数全体の集合は,カウント不可能
ということ!
また,0と1の間の数について考えましょう.
有理数は,分数ですが,小数としては,「有限小数」または「循環する無限小数」で表せます.
1/2=0.5=0.499999……
1/7=0.142857 142857 142857 ……
循環小数というとき,数の並びが最初からず~っと周期的に並ばないといけないのではなく,途中から循環していても構いません.
ということで,上の例のように有限小数は循環小数で表せますから,有理数は,循環小数と思ってよいでしょう.
数を並べ続けて,周期的に循環するものだけが有理数.
有理数以外を無理数というので,圧倒的に多い「循環しない小数」が全部,無理数です!
これを厳密に証明する方法は下で紹介する私の本にも書いていますから,ご興味があれば,ご覧ください.
有理数も無理数も無数に存在していて,どちらも,「密」に配置されています.
ある有理数[無理数]からどれだけ近いところにも,無数に多くの有理数[無理数]があります.
でも,「濃度」はぜんぜん違うのです.
イメージしにくいですが,
有理数は「密」に配置されているけれど,「濃度」としては“飛び飛び”な感じで薄い
実数のほとんどすべてが無理数というくらい「濃密」に配置されています.
ということ.
まだ分かりにくいですよね・・・
数直線(実数全体)上で,有理数の場所に,点を配置していくと考えてみましょう.
「点に大きさはない」のだから,有理数をぜんぶを集めても長さがあるくらいにはならない(しょせんは“自然数と同程度の無数っぷり”だから).
「数えれるけど,数え切れない」というのはこの程度の無数っぷりなのです.
残った部分がぜんぶ無理数.
無理数を全部集めたら,実質的に,数直線全体になっているのですね.
これが,「数えようにも数えようがない」くらいの無数っぷりです.
それくらい圧倒的に無理数が多いのです.
ついでにいうと,順番に考えることができないから,実数全体に関する命題を,「数学的帰納法」で証明するのは不可能なのですね.
つまり,
「1個目の実数で成立」
「k個目の実数で成立すれば,k+1個目の実数で成立」
いやいや,「“k個目”とか,考えられませんから!」ってことです.
濃度については,この本でけっこう色々書いたので,もしよければご覧ください.
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