yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

三角関数の問題と思っていたら,実は整数問題なのです!

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この計算を見て何を思いますか?

n倍角の分母は 5^n っぽいですね!
これは正しそうですか?

加法定理を使えば,数学的帰納法で示せそうです.
ですが,

  既約分数としての分母が 5^n になるのか?

というのは易しくないように思います.
いかがでしょうか?

実は,下に書いた2つの式が大事なポイントになっています.

並んでいる数を見ると,

  cos(nθ)=(5A+3)/5^n,sin(nθ)=(5B+4)/5^n

となっていそうです(A,Bは整数).
実際,加法定理で,

  cos(n+1)θ=cos(nθ)cosθ-sin(nθ)sinθ

  sin(n+1)θ=sin(nθ)cosθ+cos(nθ)sinθ

となり,

  cos(nθ)=(5A+3)/5^n,sin(nθ)=(5B+4)/5^n

であれば,

  cos(n+1)θ={3×(5A+3)-4×(5B+4)}/5^n

  sin(n+1)θ={3×(5B+4)+4(5A+3)}/5^n

である.それぞれの分子はmod 5で

  3×(5A+3)-4×(5B+4)≡9-16≡3

  3×(5B+4)+4(5A+3)≡24≡4

なので,

  cos(n+1)θ=(5C+3)/5^(n+1)

  sin(n+1)θ=(5D+4)/5^(n+1)

結局,分子を5で割った余り(3,4)は変化しないのです.
だから,分子が5の倍数になることはなく,分母の5^nが約分されることはないのです!

もっと言うと,分子が0になることはない!
つまり,θを自然数倍して得られる角度のサイン,コサインは決して0になりません!
θの自然数倍がπの整数倍にはならないのですね!

要するに,

 弧度法で言うと,θはπの有理数倍ではない

 度数法で言うと,θは有理数ではない

と分かるのですね!

 

3,4,5のピタゴラス数を生む直角三角形の鋭角は,整数°ではない!

 

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