yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

同一直線上にある条件が,AP=tABですか???

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【やはり,⇔は嫌いだ!
 
条件と条件を,軽々しく「⇒」や「⇔」でつなぎたくなる人,居ませんか?
お願いです.
使う前に,ぜひ,一歩踏みとどまってください.


写真にはあのように書きましたが,本当は,明記された全体集合を優先して,「Pの条件」として捉えます.
だから,右側を
 
 「AP=tAB」を満たす実数tが存在する
 
に変更するのが正しいです.
「AP=tAB」という式だけでは無意味で,“を満たす実数tが存在する”を書かないと,「Pに関する条件」ではないですから!!!
こういうところで手を抜いてしまうのは,誤った理解を招いたり,「何となくで受け入れよ」と強要することになったりで,細かいことをちゃんとやることによる分かりにくさよりも,マイナスが圧倒的に大きいように,私は思います(あくまで私見なので,ご気分を害されないように・・・).
 
写真で書いたのは・・・
全体集合を
 
  U={(P,t)|Pは平面内の点,tは実数}
 
に変えてしまうとどうなるか,という話です.
 
 Pが中点,t=5
 
を代入すると,
 
 左側は真,右側は偽
 
で,「⇔」は誤り,となります. 
 
そもそも,
 
 Pの条件 ⇔ Pとtの条件
 
という使い方は,良くないですよね・・・
 
写真でやったのは,こういうことです.
例で説明します.
例えば,
 
 xの条件 「x=1」
 
を,
 
 xとtの条件 「x+0・t=1」
 
と見ることはできます.
しかし,これも良くありません.
それならそうと全体集合を明記すべきだからです.
 
写真は,「同値の主張」の前に「Pについて」とあるから,「点Pに関する条件」です.
平面内の点Pを代入するごとに真・偽が決まり,左右の真偽が常に一致するかをチェックすることで,同値かどうかを判定するのです.
右側が,このままでは「Pとtの条件」だから,Pを代入しても真偽が決まりません.
これをPの条件に変えるには,主に2つの方法があって
 
 「AP=tAB」を満たす実数tが存在する
 
 「AP=tAB」がすべての実数tで成り立つ
 
です.
そのどちらであるかを読者に判断させるのは,不誠実です.
 
意味をくみ取ると,もちろん,前者なのでしょうが,“仰々しく”も「同値記号⇔」を使っているわけですから,そこはちゃんと書くべきですよね.
軽々しく「⇔」を使う風潮,本当に何とかならんかな,と思い,こうして書かせてもらっています.

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