yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

x=0 ⇔ x=1 ⇔ x>0 ー0は1で,正の数は何でも0なのか??ー

重箱の隅の隅の隅ばかり突いていて,頭がおかしい人だと思われそうですが(笑)
定義に従って議論を進めて奇妙な結論になるからといって,感情的にそれを排除するのは良くないだろうと思います.
ということで,そんな例を紹介しています.f:id:phi_math:20201213110330p:plain

全体集合をUとして,Uの要素に関する条件pを考えます.
条件pの真理集合Pとは

  P={x∈U|xはpを満たす}

です.真理集合P,Qが等しくなる条件p,qは同値で

  p⇔q

です.
P⊂Qのとき,pを満たすxは必ずqを満たすから,

  p⇒q

が成り立ちます.

 条件pは,条件qが成り立つための十分条件
 条件qは,条件pが成り立つための必要条件

と言います.
“条件”について述べています.

“Uの要素xについての条件”とは,xにUの要素を代入すると“命題”になるもの.

“命題”とは,真偽の決まる数学的な式や文のこと.

条件に真偽はありませんが,Uのすべての要素xで成り立つような条件もあります.

条件に“すべて”や“ある”を添えると命題になることがあります.

  すべてのx∈Uについて,pが成り立つ

  pが成り立つようなx∈Uがある

正しいか正しくないか,判断できるものになるから,命題になっています.

  p⇔q

は,

  すべてのx∈Uについて,「pならばq」が成り立つ

 かつ

  すべてのx∈Uについて,「qならばp」が成り立つ

という意味です.
それを見るのに,集合という概念を用いるとスッキリするのですね.

  P⊂Q かつ Q⊂P

と言い換えられるからです.つまり,

  P=Q

ということ.

これらの議論は,すべて,事前に設定した全体集合Uの中で行っています.

  「Uの部分集合として」

が前提になっています!

  P={x∈U|xはpを満たす}

を見てください.
「Uの要素の中でpを満たすものをすべて集めた集合」となっています.

3条件:x=0,x=1,x>0について,負の数全体の集合をUとして考えると,真理集合が全部∅になるから,3つの条件は同値になります.

心情的には許しがたいですが(笑)


他には,例えば,

  U={xは実数|x≦0}

とすると,真理集合は順に

  {0},∅,∅

となり,{0}⊃∅ だから,

  x=1 ⇔ x>0 ⇒ x=0

となってしまいます.
飽くまで,

  0以下の実数xに関する条件として

ですよ!!

しかし気持ち悪いですね(笑)
論理的には正しいですが,心情的には受け入れがたくないですか?


※念のための補足※

命題として,0以下の数xについて

  x=1 ⇔ x>0
  x=1 ⇒ x=0
  x>0 ⇒ x=0

が真であると言っているだけで,実際の数の性質について述べているものではありません!