yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

「3が偶数ならば,2は奇数?2は偶数? どっちが“真”?」

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偽なのは,

 2が偶数ならば,2は奇数である

の1つだけ!

何ででしょう?

高校数学では扱わない部分ですが,踏み込んでみましょう!

いきなり結論ですが

************

命題p,qについて,「p→q」が“真”になるのは

 p,qがともに“真” または pが“偽”

のときです.

************

ピンときにくいかも知れませんから少し説明.

「p→q」が“偽”になるのが

 pが“真” かつ qが“偽”

のときと分かってもらえたら,この「否定」を考えると良いでしょう.

「p→q」が“真”は

 「pが“真” かつ qが“偽”」でない

は,

 「pが“真”でない」 または 「qが“偽”でない」

と言い換えられ,

 「pが“偽”」 または 「qが“真”」

となります.
まとめると,「p→q」が“真”は

 「pが“偽”」 または 「qが“真”」

で,それは

 p:真,q:真 …真

 p:真,q:偽 …偽

 p:偽,q:真 …真

 p:偽,q:偽 …真

ということ.

 p,qがともに“真” または pが“偽”

と整理できます.


ということで,

 命題「3が偶数ならば,○○○」

に話を戻しましょう.
命題「3が偶数」が“偽”だから,命題「○○○」の真偽によらず,

 命題「3が偶数ならば,○○○」

は,必ず“真”です.だから,

 3が偶数ならば,2は奇数

 3が偶数ならば,2は偶数

のどちらも,命題としては“真”です.
じゃあ,

 2は奇数なの??

そういう意味じゃないですよ!

 「p→q」が真

から「qが真」は導かれません!

 「p→q」が真 かつ pが真

が分かって初めて「qが真」を導くことができます.

「ならば」の命題の真偽から,その前後の命題の真偽は1つには確定しないのですね.

もちろん,

 2が奇数ならば,2は偶数である

という命題も,全体としては“真”ですね.

 2が偶数ならば,2は奇数

だけは,

 2が偶数…真
 2は奇数…偽

だから,全体として「偽」です.

ちょっとややこしかったですかね.
高校数学でおろそかになっているけれど大事な部分なので,よく理解しておいてもらえたら良いと思います.

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