yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

2>1⇔3>2 なんて書いちゃいませんか?

2重線の「⇒」は,「命題」を作る記号.
1重線の「→」は,高校教科書には登場しないですが,前後に「命題」や「条件」と伴って「ならば」を表すものです.

 

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この点をちょっと説明します.

適当な集合Aを全体集合として,「条件」の

 p(x)→q(x) (p(x)ならばq(x))

から,「命題」の

 すべてのxで「p(x)→q(x)」が成り立つ

を作ります.
この命題を,2重線矢印で

 p(x)⇒q(x)

と略記します.
p(x)⇔q(x)は,

 すべてのxで「p(x)→q(x)」が成り立つ

 かつ

 すべてのxで「q(x)→p(x)」が成り立つ

を略記してものです.

ここが明記されていないため,誤解が生じてしまう危険があります.
教科書などでは,単に,

 命題「p(x)ならばq(x)」

 命題「p(x)⇒q(x)」

と書かれていて,これを見て上のように解釈するのは難しいでしょう.
唐突に「命題:p(x)ならばq(x)」と書かれて,

 なぜ「条件」じゃなくて「命題」なの?

と気付けるかどうかがポイント!
その疑問を解決してあげられる大人でありたいと思います.

教科書では,その後に集合を使って,

 命題「p(x)⇒q(x)」が真とは

  P={x∈A|p(x)が真}⊂Q={x∈A|q(x)が真}

と書かれています.
この集合による記述からくみ取るしかないのですね.
う~~ん,難しい!!


さて,「2>1⇔3>2」について.

命題「2>1」は真,命題「3>2」は真だから,

 命題「2>1→3>2」は 真

 命題「3>2→2>1」は 真

です.よって,

 命題「2>1⇄3>2」は 真

です.
「命題」が真です!!
矢印の前後が命題なので,全体としても命題ですね.


「2>1⇔3>2」は2重線の⇔だから「命題」ですが,そもそもの部分で問題点がありませんか?
なぜなら,⇔の前後にあるのは「条件」であるべきだからです.

条件は,変数に値を代入するごとに命題になる(真偽が決まる)ものですが・・・

変数が無い!

実は

 「x+2>x+1⇔x+3>x+2」

だったりするのでしょうか?
変数を明示していないのに「条件」と言えるのでしょうか???

「2>1⇔3>2」という記述は意味をなしていない,と私は思います.
みなさま,どう思われますか?

 

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