赤いグラフを表す関数は,高校数学の根幹を揺るがすような危険なグラフです.
ちょっと説明してみます.
その前に,右下にある青い方のグラフ.
僕の好きなもので,関数
f ( x )=x sin ( 1/x ) ( x ≠ 0 ) , f ( 0 )=0
のグラフです.
x=0 の周辺で無限に激しく振動するのが,たまらないですね.
さて,x → ∞ のときの y の極限はいくらでしょう?
lim(θ→0) sinθ / θ=1
を使える形で,y → 1 です.
このグラフ,大好きなのです.
0 周辺の無限振動と,遠く離れても 1 を超えることができない.
なんかカワイイです.
x=0 周辺では,増加と減少が激しく変化し,極大・極小になる点が無限に存在し,正確に描くことができないことも魅力ですね.
連続関数なのにグラフを描かせてくれないという高嶺の花(笑)
花の断面にも見えてきますね.
さて,この f ( x ) に 2| x | を加えたのが,赤い方のグラフを表す関数です.
こいつはかわいくない!
x=0 周辺で無限振動し,増加と減少が激しく変化し,極大・極小になる点が無限に存在するのは,赤い y=f ( x ) と同じ.
ですが,x ≠ 0 のときy > 0 になっているので,なんと
x=0で最小値 0
をとります.
しかも連続関数.
しかし,この前後で増減は変化していない.
と言うか,増減は確定していない.
この関数の位置づけは?
高校数学の根幹を揺るがす存在かもしれません.
高校数学における極値をとる点の定義(連続性は前提として)
①増減が変わる点
②局所的な最大値・最小値をとる点
教科書によって定義が違うことを以前に紹介しました.
青い関数で,x=0 において,
①の定義では,極値をとらない
②の定義では,極値をとる
ことに・・・
正しいのは,いったいどっちなんでしょう??
大学の定義に照らすと,「“極値である”が正しい」ということになるのですけどね.
高校生に分かりやすくなるように大学数学を噛み砕いて作られている数学Ⅲ.
通常は困らないように噛み砕いていますが,重箱の隅の隅をつつくと,こういう不完全さが露呈します.
これを声高に批判することもできます.
どう向き合うかは,その人次第です.
この辺りは入試問題で出題してはならない領域と思っておくのが良いでしょうね.
また,高校数学は不完全だ,ということを知るための探求学習のテーマとしては面白いものです.
極値については,もう1段階深い,変わった例もあるので,また紹介します.
それも素敵なグラフになります!