yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

マニア向け!立方体の方程式

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 |x|≦1かつ|y|≦1かつ|z|≦1

と書けば立方体を表すわけですが,ぜんぜん楽しくないですね.
例えば,

 |x-1|+|x+1|=2 ……①

は,-1≦x≦1を表す(後述)のですから,これを利用してしまえばよいのです.

 {|x-1|+|x+1|-2}^2+{|y-1|+|y+1|-2}^2+{|z-1|+|z+1|-2}^2=0

は立方体です.なぜなら,0以上の3数の和が0なのだから,すべて0となり,

 |x-1|+|x+1|=2 かつ |y-1|+|y+1|=2 かつ |z-1|+|z+1|=2

∴ -1≦x≦1 かつ -1≦y≦1 かつ -1≦z≦1

を表しているからです.


<①の補足>

①は,x<-1においては

 -x+1-x-1=2 つまり x=-1

で不成立.同様にしてx>1でも不成立.-1≦x≦1においては

 -x+1+x+1=2 つまり 2=2

で,すべてのxで成立.それゆえ,①は-1≦x≦1と同じ意味です.

これで満足していては,私ではありません(笑)

 

ガウス記号

 [x]=(x以下の最大の整数)

を用いても表せるのではないか,と考えたのです.いわゆる整数部分です.
実数xについて

 [x]=0 ⇔ 0≦x<1

を利用します.

 

写真1つ目の式.

[|x|]これは,|x|の整数部分だから値は0以上.0以上の3数の和が0なので,

 [|x|]=0 かつ [|y|]=0 かつ [|z|]=0

∴ 0≦|x|<1 かつ 0≦|y|<1 かつ 0≦|z|<1

つまり,

 -1<x<1 かつ -1<y<1 かつ -1<z<1

立方体になりましたね.

ただし・・・

 【皮ナシ】

です.表面の点は入っていません.

 

ガウス記号は整数部分を表しますが,y=[x]という関数はfloor関数と言います.床のfloorです.整数ごとに値を区切り,下の値にしてしまうからです.

一方で,天井関数というものもあります.ceiling関数で,それは上の値にしてしまうものです.mを任意の整数とするとき,実数xについて
 ceilimg(x)=m ⇔ m-1<x≦m

 ⇔ -m≦-x<-m+1

 ⇔ floor(-x)=-m

となります.だから,

 ceilimg(x)=-[-x]

です.

 ceilimg(2.5)=3

 -[-2.5]=-(-3)=3

 

これを使ってみたらどうでしょう?そうして考えたのが写真の2つ目です.

今回は2乗の和が0だから,ぜんぶ0.

実数xについて

 [1-|x|]=0 ⇔ 0≦1-|x|<1

 ⇔ 0<|x|≦1

となります.だから,写真の式は

 0<|x|≦1 かつ 0<|y|≦1 かつ 0<|z|≦1

です.立方体から,3平面x=0とy=0とz=0が除かれています.

これを例えるなら

 【サイの目切り】

です!

 

でも・・・どうせなら完全な立方体と作りたくありませんか?
そうして考えたのが3つ目です.
けっこう面白いですよ.生徒からは絶賛してもらいました(笑)

 

 [2(1-|x|)/3]=0

を解いてみてください!実数xについて

 [2(1-|x|)/3]=0 ⇔ 0≦2(1-|x|)/3<1

 ⇔ 0≦2(1-|x|)<3 ⇔ 0≦1-|x| かつ 1-|x|<3/2

 ⇔ -1/2<|x|≦1

で,これは,0≦|x|≦1と同じ意味です!

左側を負の数にして0以上を作る.

これ,けっこう面白くないですか?

マニア向けですけど(笑)

 

ということで,最後が【完全なる立方体】でした.