yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

有理数と無理数の配置イメージ

有理数」と「有理数」の和は,必ず「有理数
有理数」と“無理数”の和は,必ず“無理数

しかし,

無理数”と“無理数”の和は,「有理数」であることも“無理数”であることも.


数直線上にある「有理数」と“無理数”.
いずれも無数に存在するけれど,「有理数」は「順に数えることが可能な無限個」しかなく,“無理数”は“どうやっても順に数えられないくらい濃い無限個”もある.
有理数」を「黒」,“無理数”を“赤”で描くと,数直線は真っ赤になるけれど,実は,無数の黒が点在している.
濃度の比は0:∞.

詳細は,「集合の濃度」というもの.
次の拙著でも扱っているので,もしご存じでなく,興味があれば,どうぞ.


それを強調して,「有理数」が飛び飛びに点在する感じに書いてみました.

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最初に挙げた性質の意味は?

何らかの「有理数」のところから右の数直線を見るとき,そこから「有理数」分だけ離れたところに「有理数」がある.
だから,どの「有理数」から眺めても,同じ景色が見える.

一方で,“無理数”のところから右の数直線を見るとき,そこから「有理数」分だけ離れたところには必ず“無理数”があるが,“無理数”だけ離れたところにあるのは「有理数」か“無理数”か分からない!
(上の図では,この辺が不正確・・・申し訳ないです)
つまり,各“無理数”ごとに,そこから眺めた数直線の景色は異なっている!

何と不思議な,「有理数」と“無理数”の性質!


関連する話として・・・

異なる2つの「有理数」の間には,「有理数」も“無理数”も存在します.
例えば,有理数p,qについて,(p+q)/2は2つの間に入る「有理数」ですし,p+(p+q)/eは間に入る“無理数”です.
(eは自然対数の底2.71……)

では,異なる2つの“無理数”の間には,「有理数」も“無理数”も存在しますか?

区間内すべてが「有理数」であったら,集合の濃度としておかしい.
よって,“無理数”はある!

区間内がすべて“無理数”である可能性は?
集合の濃度的には問題ないけれど・・・
実は,各“無理数”は,何らかの「有理数」の数列の極限です.
例えば,√2は

 1,1,4,1.41,1.414,……

という数列の極限です.

 2,1.5,1.42,1.415,……

という数列の極限でもあります.
√2のどれだけ近くにも「有理数」が存在します.
大きいものも小さいものも.
同じように,どんな“無理数”でも,どれだけ近くにも「有理数」が存在します.
だから,「有理数」もある!

無理数”は面白い!!

※拙著の一覧もぜひご覧ください.
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