yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

円だと分かっているので・・・

問 **********************************
1辺の長さが1の正三角形ABCがある.三角形ABCの外接円の周上に点 P をとる
とき,

  AP^2+BP^2+CP^2

の値を求めよ.

************************************

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頑張って座標を置いて,三角関数の問題にしてみたり,色々と考えられますが,実は,認知の仕方を変えると,一瞬で分かってしまいます.

そこで,こんな問題.

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()の左辺は,z=αのとき,

  |0|^2+|α-β|^2+|α-γ|^2=AB^2+CA^2=1+1=2

だから,()は A を通ることが分かります.
同様に,B,Cを通ることも分かります.

しかも,()は円を表すことが“式の雰囲気”から分かる(後述)ので,
()は正三角形ABCの外接円を表しています.
外接円の複素方程式です.

()を図計量の形で書くと

  AP^2+BP^2+CP^2=2

となります.
これを満たす点Pの軌跡が,正三角形の外接円.
それは,Pは円周上を動き,かつ,円周上のすべての点に位置し得る,ということです.

だから,正三角形の外接円上のすべての点Pは

   AP^2+BP^2+CP^2=2

を満たすことが分かります.


(雰囲気の説明)
数学は式変形でしか結論が出ないわけではありません.
「認知」が大事です.
式を見て,「円」とか「放物線」とか,そういったものが分からないと,何も始まらないのです.

複素数の絶対値の2乗を含む式は,成分(座標)の式としては,

  |x+yi|^2=x^2+y^2

となって,円っぽくなります.
絶対値は「距離」を表すので,そりゃそうです.
()はこんな形を3つ足しているだけなので,P(x+yi)とおいたら,

  3(x^2+y^2)+ax+by+c=0

という形になるはずです.

  円 または 1点 または ∅


です.

  x^2+y^2=1 👈円

  x^2+y^2=0 👈1点

  x^2+y^2=-1 👈∅

()を満たす点が2コ以上あれば,円であることが確定します.
さらに,3点目が分かれば,どんな円であるかが確定します.

情報をしっかりキャッチして,“定性的”に判断することも大事なのです.
(式だけでやるのは定量的”と言えます)

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