数学における「and」には,2種類の訳「と」と「かつ」があります.
x=1,2の“,”は「and」ですが,これは
「xとして適するのは1と2である」
なんでしょうか?それとも,
「x=1かつx=2である」
なんでしょうか?
文脈的には前者なのですが,そのように空気を読まないといけない(生徒に読ませないといけない)のでしょうか?
1.数をつなぐand=「と」
「1 and 2」は1と2の併記である.
例えば,
A={1,2}
において,「集合Aの要素は1と2である」となる.
こういうとき,数の間には“,”を打つ.
「Aの要素は「1と2」である(1 and 2)」となる.
これが「x=1,2」における“,”が「and」であるという意味である.
一方,「xがAの要素である」と言うときは,「xは1または2」である(1 or 2?).
同じことを説明するのに「1 and 2」と「1 or
2?」が混在しているように見えるかも知れない.
しかし,「xは1または2」は,正確には「x=1またはx=2」である(「x=1または2」と略すこともあるようだが,私は避けている).
2つ条件「x=1」と「x=2」を「または」でつないでいる.
「x=1またはx=2(or)」と「xとして適するのは1と2である(and)」が同じ意味になるのである.
orとandが同じ?
いやいや.
後者は「数」を「and」でつないでいる.
条件におけるandの訳である「かつ」ではなく,「と」というand本来の訳になる.
数学におけるandは「かつ」だ,とは必ずしも言えないのである.
ということで,条件の話へ.
2.条件をつなぐand=「かつ」
例えば,実数xに関する条件x>0とx≦1をandでつなぐと,
x>0 and x≦1
は
x>0 かつ x≦1
となり,つまり,
0<x≦1
を表す.
「2つの条件を連立して得られる条件」という意味で「and」が用いられ,日本語では“かつ”と書かれる.
なお,
x>0 または x≦1
は
x>0 or x≦1
と表され,条件としては
xは実数
と同じ意味になる.
数では「と」と訳したandが,条件では「かつ」となる.
そして,数での「と」は,条件での「または(or)」に対応しているのである.
3.集合をつなぐand=「と」だが・・・
実数全体の集合Rの部分集合として,
A={xは実数|x>0}
B={xは実数|x≦1}
を考える.
A and Bと書くと,これは何を表すだろう?
これでは確定しないと考えるのが良い!
「AとBの和集合」かも知れないし,「AとBの共通部分」かも知れない.
それぞれ
union of A and B
intersection of A adn B
であり,いずれもA and Bである.
記号では順に,
A∪B A∩B
である.
4.つまり・・・
andでつなぐのが,
・数のときは「と」
☞a and b and c and …で,どんどん個数が増える(要素の付加)
☞条件で言う「または(or)」に相当
・条件のときは「かつ」
☞P and Q and R and …で,どんどん厳しい条件に(条件の強化)
☞P or Q or R or …では,どんどん条件が緩和される(要素が増える!)
・集合のときは「和集合」「共通部分」
☞「と」だけでは意味が確定しない!