yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

4次元って見えますか? -クラインの壺を描く-

クラインの壺ってご存じでしょうか?

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時間を自由に行き来できる「輪っか」を,あなたは持っているとします.
その輪っか(円)を過去に向かって投げてみます.
その円はブーメランのように旋回して,過去から現在に戻ってきます.
投げ出したところで円をキャッチします.
(円は時々で適当に大きさが変化していると考えてください)
ただし,戻ってくるとき,円は,“投げ出し”たときの円の内側から返ってきたことにしましょう.

 

その間に,円が通ったところを全部集めて図にしたものが,「クラインの壺」です!

クラインの壷は、“中”に戻ってきたのを,スタートの円とくっ付けたもの.
(もし円が“外”から戻ってきたとしたら,単なるトーラス(ドーナツの表面の曲面)です)

色が濃いところほど,遠い過去にあると思って見てください.

投げたばかりの円が通ったのが白いところ.
しばらく現在を進んだ後,少し色の濃い部分(ちょっと過去)にいきます.例えば1秒前とか5秒前とか.
そして,一番濃いところ(例えば10秒前)のまでいくと,そこで空間的に旋回して戻りだします.
同時に,時刻も現在方向に戻ってくることにします.
すると,5秒前とか1秒前とか,そういう過去を通って,色が薄くなりながら,円は再び現在(白いところ)に戻ってきています.

内側から戻ってきたとしたら,クラインの壺という表裏の無い変な曲面を構成します.
外側からふつうに戻ってきたら,トーラスをなします(一部は過去を通っている).

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これを別の解釈で捉えることもできます.


伸縮自在のゴム製の円柱があるとします.
その円柱を伸ばして,両端の円を貼り合わせます.
すると,ふつうは,ドーナツの表面(“トーラス”という図形)が得られます.

次に,クラインの壺を考えます.
ふつうでない方法で,円柱の両端の円を貼り合わせてみます.

まず,円柱を“4次元空間”に置きます.

この時点でイメージがわかないわけですが・・・

抽象的には,4つの数値(x,y,z,w)で位置を特定するのが4次元です.

解釈としては,((x,y,z),t)という風に,3次元の位置(x,y,z)と時刻tの4数のセットで時空(空間と時間を合わせたもの)を表すこともできます.各点(x,y,z)には(-∞,∞)の各時間における情報も与えることができる,ということです.

また,4つ目の次元を色にとることもあります.例えば,グレースケールの値.3次元空間内の各点には,(-∞,∞)の色を付けることができて,((x,y,z),色)で4次元を表現することもできます.

この2つの解釈を合わせて考えたのが,上の輪っか投げによる説明です.

 

まず,円柱の【左端】から真ん中くらいまでを「現在の空間」に置いたまま,残り半分を少しずつ過去の空間に送っていきます.
ある過去の瞬間,例えば「10秒前の空間」に残り半分を出現させます.
「10秒前の空間」内で,ゴムを伸ばしていきます.
【右端】が,現在の空間で【左端】がある位置に来るまで伸ばしていきます.
同じ位置でも,時間が違うので,これらは交わっていません!

次に,【右端】を現在に戻していきます.
そうすると,「現在の空間」では【右端】と【左端】が同じところに来るので,そこでくっつけすことができます.

「現在の空間」と「10秒前の空間」に円柱の大部分があります.
では,その間の時刻の空間,例えば「5秒前の空間」には何があるでしょうか?
【右端】を過去に送る過程,現在に戻す過程の2回,この空間を通過するので,円が2つ,あります.

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色の濃さが違うところは,4次元空間における,異なる3次元空間に在ります.

過去と現在(白とグレー)は,場所は同じでも,時刻が違うので,交わってはいないんです.立体交差ならぬ,時間交差.
過去にここに住んでいた人と出会ったら怖いでしょ(笑)
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このようにスキャンする感じで見ていくと4次元がイメージできるのですけど・・・
伝わったでしょうか?