yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

大人の「収束の定義」 イプシロンεを使うヤツ ②

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【大人の「収束の定義」 イプシロンεを使うヤツ】では,「αに収束」の定義を,「“αに収束”でない」から論理を使って構築しました.

写真の中央部です.

これを日本語だけで書くと,一番下のようになります.
イメージ湧きにくいかも知れません・・・
本当は図を使うなどして視覚化して説明すべきなのですが,お許しを.
また後日,この大学の定義を使って,高校数学では示せない,ある数列の収束を証明しようと思っています.


さて,最初の問い.
こちらの解説を以前はほとんど書きませんでしたが,必要性を感じたので,少し書いておこうと思います.

教科書の定義をしっかり読み取ると・・・


lima_nは「数列{a_n}の極限」を表しています.
つまり,

 ・実数αに収束するときは,α
 ・正の無限大に発散するときは,∞
 ・負の無限大に発散するときは,-∞
 ・それ以外のときは,存在しない

です.
収束するときだけ,極限値という言い方をします(∞は数値ではない!).

 数列がαに収束する
 極限値がαである

は許されても,

 極限値がαに収束する

では意味をなしていません.
だから,【②はNG】となってしまいます.
(日常的には,言ってしまうことはあるのですけど,厳密にはNGなのです)

 ②’:lina_nはαである

なら,何も問題ありません.

 「収束する」の主語は,数列
 「αである」ものは,極限

ということですね.

ちなみに,極限は,収束であっても,あくまで「限りなく近づかれる対象」なので,

 ④’:n=∞のときa_n=α

といった書き方はダメです.
「lima_n」は,「限りなく近づかれる対象」を表しているから,

 ③:lima_n=α

と書いても問題ありません.

細かい話ばっかりしていますが,数学を嫌いにならないでくださいね(笑)

こういう風に,言葉の厳密な使い方を追求するという遊び方もあるのが,「数学」です.
楽しみ方が無限に存在するのですね.