yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

「大学への数学」執筆者・吉田信夫の数学探求ブログ(共通テスト系問題の研究報告)

x=0 ⇔ x=1 ⇔ x>0 ー0は1で,正の数は何でも0なのか??ー

重箱の隅の隅の隅ばかり突いていて,頭がおかしい人だと思われそうですが(笑)
定義に従って議論を進めて奇妙な結論になるからといって,感情的にそれを排除するのは良くないだろうと思います.
ということで,そんな例を紹介しています.f:id:phi_math:20201213110330p:plain

全体集合をUとして,Uの要素に関する条件pを考えます.
条件pの真理集合Pとは

  P={x∈U|xはpを満たす}

です.真理集合P,Qが等しくなる条件p,qは同値で

  p⇔q

です.
P⊂Qのとき,pを満たすxは必ずqを満たすから,

  p⇒q

が成り立ちます.

 条件pは,条件qが成り立つための十分条件
 条件qは,条件pが成り立つための必要条件

と言います.
“条件”について述べています.

“Uの要素xについての条件”とは,xにUの要素を代入すると“命題”になるもの.

“命題”とは,真偽の決まる数学的な式や文のこと.

条件に真偽はありませんが,Uのすべての要素xで成り立つような条件もあります.

条件に“すべて”や“ある”を添えると命題になることがあります.

  すべてのx∈Uについて,pが成り立つ

  pが成り立つようなx∈Uがある

正しいか正しくないか,判断できるものになるから,命題になっています.

  p⇔q

は,

  すべてのx∈Uについて,「pならばq」が成り立つ

 かつ

  すべてのx∈Uについて,「qならばp」が成り立つ

という意味です.
それを見るのに,集合という概念を用いるとスッキリするのですね.

  P⊂Q かつ Q⊂P

と言い換えられるからです.つまり,

  P=Q

ということ.

これらの議論は,すべて,事前に設定した全体集合Uの中で行っています.

  「Uの部分集合として」

が前提になっています!

  P={x∈U|xはpを満たす}

を見てください.
「Uの要素の中でpを満たすものをすべて集めた集合」となっています.

3条件:x=0,x=1,x>0について,負の数全体の集合をUとして考えると,真理集合が全部∅になるから,3つの条件は同値になります.

心情的には許しがたいですが(笑)


他には,例えば,

  U={xは実数|x≦0}

とすると,真理集合は順に

  {0},∅,∅

となり,{0}⊃∅ だから,

  x=1 ⇔ x>0 ⇒ x=0

となってしまいます.
飽くまで,

  0以下の実数xに関する条件として

ですよ!!

しかし気持ち悪いですね(笑)
論理的には正しいですが,心情的には受け入れがたくないですか?


※念のための補足※

命題として,0以下の数xについて

  x=1 ⇔ x>0
  x=1 ⇒ x=0
  x>0 ⇒ x=0

が真であると言っているだけで,実際の数の性質について述べているものではありません!

偶数は4の倍数なのか? ー心情と数学ー

先日の記事

同値記号を使って証明を書く - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー


ですが,Facebookで画像とちょっとのコメントだけ公開していました.
インスタと同内容です.

https://www.instagram.com/p/CIcZkaalsx0/


これに多くの友人がコメントをくださいました.
友人というのが躊躇われるくらいのビッグネームの方々ですけれど.

そこで思ったことがあります.

  xは実数とする.x≧3において,x^2-2x-1>0が成り立つことを示せ.

という問題で示すべきことは,

  命題「x≧3 ならば x^2-2x-1>0」が成り立つこと

なのか,

  U={xは実数 | x≧3}における条件:x^2-2x-1>0がすべてのxで成り立つこと

なのか.
私は後者のつもりでしたが,前者と思うと,先日の解答はあまりよくないものとなってしまいます.

明示しなきゃいけませんね.
ということで,こんな問題だったらどうでしょう?

これが共通テストで出たら大変な騒ぎになるでしょう.
分かっていない大人も多い分野ですから・・・
f:id:phi_math:20201212101831p:plain

私は問題として成立していると思っています.

  P={x∈U | xはpを満たす}
  Q={x∈U | xはqを満たす}

という集合について,包含関係を考えるだけですから.

(1)は普通の問題です.
P⊃Qだから,必要条件だが十分条件ではない,となります.

 

(2)はどうしましょう?
Uの部分集合としてP=QとなるようなUを探すだけです.
(私はそう思うのですけど,賛否あるかも知れません・・・)

 ⓪,①,④では,P⊃Q

 ③では,P=Q=Uで,pとqは同値

 ②,⑤では,P=Q=∅で,pとqは同値

よって,適するのは②,③,⑤

同じ意図の問題をこちらでも解説しています.
 👇

必要十分条件,本当の意味が分かっている人は限りなく少ないのかも・・・ - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー


今回,問題文を変えてみました.
全体集合を明示する方が良いかな,ということで.

ですが,心情的に許せない,という方も多いようで・・・
偶数と4の倍数は違うじゃないか,と.
教科書に書かれていることを見ると,条件が同値であるかどうかは,全体集合によって決まる相対的なものだと思うのです.

賛否,どちらもウエルカムです.
ご意見あれば,ブログかインスタ(またはFacebook)へコメントください.

アポロニウスの円に反転が隠れている!?

AP=2BPを満たす点Pの軌跡は円になることが知られており,アポロニウスの円と呼ばれるものの1つです.

これを満たす点として,線分ABを2:1に内分する点,外分する点があって,これらを含む円になるはず.
しかも,これらが直径の両端になるのでした.
(内角・外角の二等分線の性質を使って示すことができます)


方程式の問題,ベクトル方程式の問題,複素方程式の問題,として登場します.


複素方程式|z-α|=2|z-β|から円の複素方程式

  |z-(中心)|=(半径)

の形を作るには,両辺を二乗して,|z|^2=z×(zの共役複素数)が成り立つことを利用することになります.


敢えてそれをせず,別ルートで攻めてみました.

 

f:id:phi_math:20201211005713p:plain

ここで

  w=1/z

と表されるwは,

  w=(zの共役複素数)/|z|^2

となるから,

  (zの反転)=z/|z|^2

の共役複素数になっています.


zとwの対応関係は,反転(単位円を利用して内側と外側を入れ替える変換)とx軸に関する対称変換の合成です.


原点を通らない円を反転して得られる図形は,やはり円なのでした.

この辺は,「大学への数学・12月号」の私の記事を参照してください(宣伝)!

  👇



【結論】
複素数は,変換の観点から見ると面白い!

同値記号を使って証明を書く

以前は同値記号⇔をよく使っていました.
学生の頃は一切使っておらずでしたが,この仕事について初めて使うようになりました.

何も考えずに使っている時期もありましたが,よくなかったなぁ,と反省しています.
当時は,条件と命題の違いも言語化できていなかったのではないか,と思うほどです.

今回は,生徒の答案を見て思ったことをもとに,ちょっと整理しておこうかなと思って書いています.

f:id:phi_math:20201206105635p:plain

証明するのは「命題」.
「命題」は,真偽が確定するような数学的な文章(意味をなしていないものはダメ).


 xは実数とする.x≧3において,x^2-2x-1>0が成り立つことを示せ.


という問題を出されたら,示すのは何でしょう?

「x^2-2x-1>0」ではないですよ!

だって,これは,「条件」ですから.
「条件」は,変数を含んでいて,「全体集合」に含まれるものを変数に代入したら「命題」になるもの.
全体集合があって初めて条件なんですね.

全体集合をU={x | x≧3}として,xに関する「x^2-2x-1>0」という“条件”を考えていることになります.

証明する(“真”であると論証する)のは,

  「x∈Uを満たすすべてのxでx^2-2x-1>0が成り立つ」

という“命題”です.


「x∈Uを満たすすべてのxで」が付いていると,xに何か代入するもの(条件)ではなく,真偽が確定するもの(命題)になるのです.
「あらゆるxを代入して,必ず真になるか?」という問いが真か偽か,答えるからです.

また,同値記号⇔は,「必要十分条件」という言葉からも分かるように,“条件”と“条件”をつなぐものです.そのさい,全体集合Uは固定されていることに注意です!


(証明例)
U={x | x≧3}とする.x∈Uについて
    x^2-2x-1>0 ⇔ (x-1)^2-2>0
  ⇔ x>1+√2 ⇔ x≧3
であるから,“命題”「x≧3において,x^2-2x-1>0が成り立つ」は真である.


だから,x∈Uについて,

・x-1>0だから, (x-1)^2-2>0 ⇔ x>1+√2

・1+√2≦3だから, x>1+√2 ⇔ x≧3

となるのです.


極端な例では,次のような同値変形も可能です.

0≦x≦πにおいて,

 0≦sin x≦1 ⇔ -1≦sin x≦1 ⇔ -20≦sin x≦100


また,

   x∈Uを満たすすべてのxで x^2-2x-1>0 が成り立つ

 ⇔ x∈Uを満たすすべてのxで (x-1)^2-2>0 が成り立つ

 ⇔ x∈Uを満たすすべてのxで x>1+√2 が成り立つ

 ⇔ x∈Uを満たすすべてのxで x≧3 が成り立つ

と書いてはダメですよ!
丁寧に書いたつもりでも,“命題”と“命題”を同値記号⇔でつないじゃってますから!

もちろん,

 「見えない文字があって,その文字に関する条件なんだ!」

と主張することは可能ですが,それなら,その文字と,文字に代入できるものを表す全体集合を明示しましょうね!


この観点だけで書かれた稀有な本(賛否両論ですけど)
   👇

いまさらながら,懐かしの“帯分数”について考えた

イギリスの数学問題集を見ていたら・・・

f:id:phi_math:20201203002053p:plain

帯分数って,日本の小学校限定のものだと勝手に思い込んでいました.
そうじゃないんですね!?
イギリスにもありましたよ.
しかも,中学生くらいがやる問題に.

日本では,中学で負の数が出てきたり,無理数(円周率とか平方根とか)が出てきたりで,帯分数では考えにくくなるのだろうと思います.

これに関連して最近思ったこと.

帯分数は,整数部分と小数部分を分けているのではないか?


 2.4=2+0.4=2+2/5=2 2/5

2.4の整数部分が2で,小数部分が0.4です.
そして,0.4=2/5だから,


 2 2/5

 ↑  ↖小数部分

 整数部分


になっているじゃないか!

整数部分・小数部分と言えば,負の数を考えるときにトラップがあります!

  【小数部分は0~1の数とする】

というルールがあるからです!!

  -2.4の小数部分は 0.4 ではない!

つまり,

  -2.4=-1×2.4=-(2+0.4)=-2-0.4

で,-0.4は小数部分ではない(0~1でないから)!
0.4も小数部分とは言わない!

①2.4という数のマイナス倍で,2.4という塊にマイナスが付いています!

②整数部分,小数部分は

  ー2.4=-3+0.6

と見て,整数部分が-3で,小数部分が0.6なのですね(0~1だから!).


では,

  -5 1/2=??

①マイナス倍であるなら

  -5 1/2=-1×(5+1/2)=-5.5

となる.

②帯分数が,整数部分と小数部分であるなら,

  整数部分=-5,小数部分=1/2

 ∴ -5 1/2=-5+1/2=ー4.5

となる.

どっちが正しいのでしょうか??

算数では負の数を扱わないですが,引き算はやります.

 

  4 1/3-2 2/3=4+1/3ー(2+2/3)=2-1/3=1 2/3

です.
この例にならうと,①が正しいのかな,という結論にせざるを得ないように思いました.

実際はどうなんでしょう?

ご存じの方,いらっしゃったら教えてください.
ブログへのコメント(はてなユーザー)かインスタで.
 👇

https://www.instagram.com/yoshidamath/

※算数での整数を大人の整数論で解説した力作もあります.
 よかったら読んでみてください!
   👇

2次関数の接線について,ちょっとだけ図形的に

f:id:phi_math:20201129111008p:plain

 

2次関数のグラフCのx座標がa,bである2点A,Bをとります.

A,BにおけるCの接線の交点Pは,x座標が(a+b)/2の点であることが知られています(接線の方程式を連立).
ちょうど真ん中で交わります.
図の①:①です.

また,直線ABと放物線Cで囲まれる部分の面積は,(b-a)^3に比例することが知られています.比例定数は,(x^2の係数の絶対値)÷6です.
さらに,Cと上記の2接線で囲まれる部分の面積は,上述の面積のちょうど半分になることも知られています.
図で言うと,いずれも「“幅”の3乗に比例」し,「面積比が2⃣:1⃣」であるということになります.

A,BにおけるCの接線の交点Pを通り,y軸に平行な直線を引きます.
つまり,x=(a+b)/2
この直線がC,直線ABと交わる点をQ,Rとします.
そのとき,

   PQ:QR=?

というのを考えてみましょう.

 

f:id:phi_math:20201129110244p:plain

 

2次関数を式で置いて,方程式を作って交点P,Q,Rの座標を求めたら,比は分かります.
けれど,メンドクサイ.

面積だけを使って求めてみませんか?

まず,A,BとQを結ぶ線分を引いてみます.

f:id:phi_math:20201129111731p:plain



すると,放物線と直線で囲まれる面積が現れて,これは,“幅”の3乗に比例します!
A~Bの幅はb-aですが,この2つの領域の幅は,その半分.(b-a)/2です.
だから,面積は,1/8倍になりそうです.
この小さい部分の面積を①と表すことにしたら・・・

f:id:phi_math:20201129111827p:plain


Cと直線ABで囲まれる部分は8倍の⑧で,Cと2接線で囲まれる部分は⑧の半分で④になります.

ということは・・・?

⑧から①を2つ切り取って④にくっつけると,上は三角形,下は凹んだ四角形.
その面積が

f:id:phi_math:20201129112043p:plain


上下とも⑥になります.同じ面積です!

上下の面積は
   QR×(b-a)÷2,PQ×(b-a)÷2
なので,面積が等しいから,PQとQRが等しいことが分かります.

ということで,答えは

   PQ:QR=1:1

でした!

方程式を使わずに,図形の組合せだけで導けました!
こういう風に情報だけで導くのは,定性的なアプローチとして,共通テストでも重視されるはずなので,慣れておきたいですね.
計算だけが数学ではないのです!

そんな問題をたくさん作って載せた問題集がコチラ(結局は宣伝w).
★高評価&素敵なレビューもお願いします!
       👇

 

無限にヒヨコが並ぶ領域を1つの方程式でw

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方程式1つで領域を表すシリーズも,ここまで来てしまいました(笑)

  |x-1|+|x-2|=1

が1≦x≦2を表すことは何度も紹介しました.右辺は,2-1の1です.
これを応用しまくると,

  |y-f(x)|+|y-g(x)|=f(x)-g(x)

に自然に到達しますね(ぼくだけ?).

  f(x)≦y≦g(x)

という領域を表しております.
左辺が0以上の値だから,右辺が0以上になるxのみで定義され,そのような各xに対してyの値の範囲が決まっていくというカラクリです.

  |y-sinx|+|y-cosx|=sinx-cosx

でも良かったのですが,ぼくの中でヒヨコは右を向いている感じがしたので,

  |y+sinx|+|y+cosx|=sinx-cosx

にして,

  -sinx≦y≦-cosx

を採用しました.
少しぽっちゃりしたかわいいヒヨコにするために,ちょっと平行移動したのが,

  |y+sin(x-π/12)|+|y+cosx|=sin(x-π/12)-cosx

でございます.
ちょっと動かそう,と言ってくれたのは生徒です.
小テストをやらせている間に時間を持て余して,暇すぎて思いついたものを,その授業で生徒に話してました.
「テスト中に何しているんですか?」と笑われながら.

ちなみに,三角関数の周期性から,見えないところにも無限にヒヨコが並んでいます.

それを想像すると笑えます.

※私の書籍一覧もご覧ください※
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16葉の菊っぽい図になる極方程式を作ってみた

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極方程式の応用の回の授業.

何だかんだやっているうちに菊の花のようになる極方程式を,生徒と一緒に作ることに(笑)

 

皇室御用達の16葉の菊紋は,後鳥羽上皇が使い始めたとか.

御番鍛冶といって各月担当の刀鍛冶を選出して,一緒に刀を作っていた後鳥羽上皇は,隠岐に流されても刀を作っていたとか.

その刀には,16葉の菊紋が刻まれていて,菊御作と呼ばれています.

 

そんな話をしているうちに,極方程式で菊を作ることに.

後鳥羽上皇をリスペクトです.

 

int(θ/2π)は,ガウス記号で[θ/2π]とも表すもののことで,θ/2πの整数部分.

0≦θ<2πにおいては

   int(θ/2π)=0 ∴ r=1/5

2π≦θ<4πにおいては

   int(θ/2π)=1 ∴ r=1/5+√(|cos8θ|)

です.

√ を付けずに

   r=1/5+int(θ/2π)|cos8θ|

としても菊の花っぽくなるのですけど,「なんか細い」と生徒から言われました.

そこで,まず

   r=1/5+int(θ/2π)|cos8θ|^2

としてみました.

すると,(0周辺があまり増えないために)もっと細くなってしまい,みなで笑いました.

むしろ,早く大きくなるようにすべきということで,√ を変えてみると・・・

まずまずの菊の花になったのでした.

3乗根にするともっと良いのですが,描画ソフトの限界で,線がつぶれて表示されなくなってしまいました.

 

ということで,今回の探求結果は,この極方程式でした.

 

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方程式の可能性は,∞

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先日,図形としての「100」を1つの方程式で表しました.
  👇

100記事目なので,100を表す方程式! - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

 

そこで使った考え方を応用したら,1つの方程式でこんな図が描けるのですね.

  |A-1|+|A-2|=1

は,何を表すでしょう?

A=0,1,1.5,3として左辺を計算すると,順に

  |-1|+|-2|=3

  |0|+|-1|=1

  |0.5|+|-0.5|=1

  |2|+|1|=3

です.1になるものがいくつかありますね.

  1≦A≦2

のとき,

  |A-1|+|A-2|=(1-A)+(A-2)=1

か必ず成り立ちます.

A<1のときは,

  |A-1|+|A-2|=(1-A)+(2-A)=3-2A>1

A>2のときは,

  |A-1|+|A-2|=(A-1)+(A-2)=2A-3>1
  
です.
ということで,
  
  |A-1|+|A-2|=1 ⇔ 1≦A≦2

です.

  A=|x|+|y|

とすると,

  ||x|+|y|-1|+||x|+|y|-2|=1

  ⇔ 1≦|x|+|y|≦2

となり,2つの正方形

  |x|+|y|=1,|x|+|y|=2

で囲まれる部分を表しています.

できるだけ丁寧に説明してみました.
いかがでしたか?

さらに応用して,色んな図形をかいてみます!
お楽しみに.

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100記事目なので,100を表す方程式!

やっと記事数が100になったので,記念に図形としての「100」を式で表してみました(笑)

f:id:phi_math:20201119100434p:plain

 

  ABC=0

 ⇔ A=0 または B=0 または C=0

で,3つの和集合.

それぞれは,

  |x|+|x-1|=1 ⇔ 0≦x≦1

という性質を応用しています.

1つ目は,

  |A|+|B|=0 ⇔ A=0 かつ B=0

で,2つの共通部分.

  -4≦x≦-3 かつ -2√2≦y≦2√2

で長方形を表していて,これが「1」に見えるのです.

2つ目は,2つの楕円

  1≦x^2+y^2/2≦4

の間を表しています.
ちょっと説明しておきます.

1≦k≦2を満たすkについて,

  x^2+y^2/2=k^2

を満たす(x,y)は,

  √(x^2+y^2/2)=k

を満たしています.
だから,

   |√(x^2+y^2/2)-1|+|√(x^2+y^2/2)-2|

  =|k-1|+|k-2|

  =(k-1)+(2-k)

  =1

を満たしています.
この範囲以外のkでは,x^2+y^2/2=k^2を満たす(x,y)が

  |√(x^2+y^2/2)-1|+|√(x^2+y^2/2)-2|=1

を満たすことはありません.
だから,2つの楕円の間を表しています!
つまり「0」に見えるのです.

3つ目は,2つ目のxをx-5に変更しているので,平行移動して得られるものです.
だから,「0」に見えますね.

以上から,あの式で図形としての「100」が表されていることが分かります!
頑張りました(笑)

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面白い図形問題

f:id:phi_math:20201118094151p:plain

三角比を使って解いてはみましたが,これでは全然,面白くない!
ということで,初等編!

2つの直角三角形ABEとBCFが合同なので,求める面積は,三角形ABGの面積と等しいです.
鋭角の1つが15°で斜辺の長さが6の直角三角形です.
これを2つくっつけると・・・

 

f:id:phi_math:20201118094308p:plain


つまり,BGを2倍に延長してHを作ると,三角形ABHは頂角が30°の二等辺三角形で,等辺は6です.
HからABに垂線を引くと,その長さは3(1:2:√3から)です.

f:id:phi_math:20201118094354p:plain


これで面積が分かります.

  △ABH=6×3÷2=9

 ∴ 9÷2=4.5

が四角形CFGEの面積です!


さて,オマケ.

∠HAD=60°であることから,何が分かるでしょう?

  AH=AD=6

なので,三角形ADHが正三角形であることが分かります!
そして,HはBFの中点です.

f:id:phi_math:20201118094421p:plain


正方形の中に,辺を共有する正三角形を描くと,正方形の残りの2頂点と正三角形の頂点をつなぐと,15°,15°,150°の二等辺三角形ができるのですね!

なかなか面白い図形でした.

 

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場合分けして求めるものに関する条件の扱い

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「最小値≧6となるaの条件」を考えるのだから,aは“未知数”の扱いで,1),2),3)は“最終的”には『範囲の分割』になります.
しかし,最小値を求める段階(xを消去するとき)には,aを“文字定数”として扱い,1),2),3)は“いったん”は『答えの分類』になっています.


※「場合分け」についてはこちらもご覧ください!
   👇

場合分けにも色々とありますね - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー



これを1つにまとめて書くと,解答は分かりにくくなるのではないか,という気がしています.
そのために,複数種類の「場合分け」つまり,「文字定数による答えの分類」と「未知数,変数の範囲の分割」を混同してしまうのではないか,と.

まとめて書くと,こんな感じでしょうか.

**************

1)0≦a≦1においては,最小値はa^2+1で,条件は

   a^2+1≧6 かつ 0≦a≦1

 これを両立するaは存在しない.

2)a<0においては,最小値は2a^2+1で,条件は

   2a^2+1≧6 かつ a<0

 前者はa≦-√(5/2),√(5/2)≦aであるから,両立するaはa≦-√(5/2).

3)a>1においては,最小値は2a^2+1で,条件は

   2a^2-2a+2≧6 かつ a>1

 前者はa≦-1,2≦aであるから,両立するaは2≦a.

1)または2)または3)から,求める条件は

   a≦-√(5/2) または 2≦a

**************

このように書くと分かりやすいのかどうかは,何とも言えませんが,やっていることを明示できているかなとは思います.

「最小値の分類」と「範囲の分割」を1つにまとめるのが一般的な書き方で,それを僕なりに書き換えたのが上の解答ですが・・・

「最小値の分類」と「範囲の分割」を分けて2部構成にするのが良いのではないかな,と思ったりしています.

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色んな図形を1つの方程式で表す快感④

f:id:phi_math:20201116100617p:plain


また変な式を作ってしまいました(笑)
どうやって作ったかをお話します.

 a<0においては,2a^2+1

 0≦a≦1においては,2a^2+1 - a^2

 a>1においては,2a^2+1 - a^2 + (a-1)^2

となっていることに注目しました.

ということで,

 a<0においては,0

 a≧0においては,1

という関数を作ろうと思いました.
ガウス記号を使ってしまおうと最初に思ったので,

 a<0において,0以上1未満

 a≧0において,1以上2未満

になる関数を作ろうと思いました.
そうして考えたのが,

 2/(1+e^(-a))

です.

f:id:phi_math:20201116100728p:plain


これは,人工知能を作るときによく使う“シグモイド関数”の仲間なので,私にとってはメジャーな関数なのです.

さらに,

 a<1においては,0

 a≧1においては,1

となる関数も作れば良いことになります.
これは平行移動でOK!

  2/(1+e^(-a))

の a を a - 1 に変えるだけ!

ということで,

 a<0においては,0

 a≧0においては,a^2

となるのが

 a^2×2/(1+e^(-a))

であり,

 a<1においては,0

 a≧1においては,(a-1)^2

となるのが

 (a-1)^2×2/(1+e^(1-a))

です.

これらを

 2a^2+1

に加えておけば,各範囲で3つの別の式で表される関数を表現できるのですね!

 

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場合分けにも色々とありますね

「~のとき」と分けて解くことを,何でも「場合分け」と呼んでしまいますが,実は色々ありますよね.
その違いを意識していないと,思わぬところでミスをしてしまう可能性があるのではないかと思います.
授業していて,「分かっていないのかな?」と思う節があったので,予定を変えて説明したこともあります.
その辺をちょっと整理してみようと思っています.

f:id:phi_math:20201115083032p:plain

1⃣は,aに色んな値を入れることができるのだから,「無限個の問題を解け」と言われています.

a=-2のときの問題:
 y=x^2+4x+9 (0≦x≦1)の最小値

a=0のときの問題:
 y=x^2+1 (0≦x≦1)の最小値

a=100のときの問題:
 y=x^2-200x+20001 (0≦x≦1)の最小値

……

無限個の答えをすべて書いたら良いのですが,現実的には不可能なので,「いくつかに分類して答えよ」ということになります.
定型的には[赤枠]のように答えますが,これ以外の答え方も可能です.
本来は無限個に場合分けされるわけですから!


一方,2⃣は,1つの関数についての最小値を考える問題ですから,1つの問題を解くだけです.
実数全体を定義域とする関数が,x≧0とx<0で,式の形が異なっています.
だから,いったん,2つの関数

 y=x^2+1 (x≧0) と y=(x+1)^2 (x<0)

を考えて,それぞれの最小値を求めています.

 1) x≧0 では,常に y≧1 が成り立ち,
  x=0 のとき y=1(等号成立)

 2) x<0 では,常に y≧0 が成り立ち,
  x=-1 のとき y=0(等号成立)

実数全体では,

 常に y≧0 が成り立ち,x=-1 のとき y=0(等号成立)

と分かり,最小値は 0 と確定します.
[緑枠]が答えです!

ある1つの関数の最小値ですから,1つに確定します!

 y=x^2+1 (x≧0) と y=(x+1)^2 (x<0)

のグラフを描いて,y座標が一番小さい点(一番低いところ)を探しているだけですから.

f:id:phi_math:20201115083253p:plain

 

*********

無限個の問題を解いている1⃣と,1つの問題を範囲ごとに考えてから統合している2⃣では,大きく違いますね.
1⃣っぽいと思っていたら,途中から2⃣になっている,みたいなこともあって,けっこう難しいです.

私は,解答を書き分けるのが良いのではないかと思っています.

1⃣
aの値によって分類して答える.

1) aが0≦a≦1を満たす定数であるときは,
 x=aで最小値a^2+1をとる.

2) aがa<0を満たす定数であるときは,
 x=0で最小値2a^2+1をとる.

3) aがa>1を満たす定数であるときは,
 x=1で最小値2a^2-2a+2をとる.


2⃣
絶対値を外すと,yが1つの式では表されないから,定義域を2つに分割して考える.

1) x≧0においては,y=x^2+1と表され,
 この範囲での最小値は1 (x=0)である.

2) x<0においては,y=(x+1)^2と表され,
 この範囲での最小値は0 (x=-1)である.

実数全体で考えると,最小値は0である.


1⃣とも2⃣とも違う「場合分け」もありますし,またその辺は別記事で.


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色んな図形を1つの方程式で表す快感③

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悪ノリが止まりません(笑)

  y=x^2 (0<x≦1)

  |y-x^2|+||x|/x-1|+||x-1|+x-1|=0

と表しました.
なかなか素敵と自画自賛しています.

  👇

色んな図形を1つの方程式で表す快感① - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

色んな図形を1つの方程式で表す快感② - yoshidanobuo’s diaryー高校数学の“思考・判断・表現力”を磨こう!ー

 

でも,少し項数が多くて,見栄えが悪いという気がしてきました.

そこで考えたのが・・・

幅が1の範囲と関連しそうなのは,ガウス記号!

  [x]=(x 以下の最大の整数)

です.

  [2]=2,[3.5]=3,[-2.3]=-3

などで,

  [x]=0 ⇔ 0≦x<1

  [x]=1 ⇔ 1≦x<2

  [x]=-3 ⇔ -3≦x<-2

などと整理できます.


  [x]=0 ⇔ 0≦x<1


が使えそうな気がしますが,希望としては0≦x<1ではなく,0<x≦1で0にしたい!
どうしたら良いでしょう?
実は,そんなに難しくないです!

  [1-x]

はどうでしょう?

  [1-x]=0 ⇔ 0≦1-x<1 ⇔ 0<x≦1

ですからね!

ということで,

  |y-x^2|+|[1-x]|=0

により

  y=x^2 (0<x≦1)

を1つの式で表すことができました!

 |A|+|B|=0 ⇔ A=0 かつ B=0

を使っているのでした.

 

今回は,珍しく「⇔」を使って書いてみました.

  ●と○が同値だ

という主張をするときには便利です.

式変形に使うのは良くないですが,同値を主張するときには積極的に使っても問題ないと思います.


同値記号の扱いについては,次の旺文社の本2冊が面白いです(長岡先生の方(論理学・・・)は好き嫌いがわかれるかも).
       👇